ジャコバン派
日本財務省大臣。大塚真一は登壇に立った。おおよそ多くのカメラーが真一のことをシャッター交じりに撮る。
「えー、WTIが1バレル50ドルに金利上げしたということで――」
記者の一人が手をあげる。
「日本の影響はどのようにお考えでしょうか?」
「原油が輸入しにくい……すなわち、日本の交通網は弱体化するでしょうね」
記者の面々は固まった。
「どのような手を打つつもりでしょうか」
真一は咳払いをひとつ。それから一言残して踵を返した。
「関係省庁に確認をとってみます」
■□■
「先生!」
真一は声のしたほうへ見る。するとそこにはバッジのつけた青年議員がいた。
つい、笑ってしまう。
「おい、剣持。バッジが左に曲がっているぞ」
「あっ、すみません」
「……飯でも食いに行くか?」
「は、はい。よろしくお願いします」
「会議までまだ時間はあるし。どうだ? 若い者はどういうのを食べるんだ?」
「カプリチョーザですね」
「ふーん。じゃあ行こうか」
運転手に連れられて真一と剣持はカプリチョーザへと向かった。
「――あの……不躾な質問かもしれないんですけど……」
「どうした?」
「日本もAI兵器戦争に参加する可能性はあるのでしょうか?」
「……どうだろうな」
「実は、裏でいろいろと決まっていたり?」
「…………」
「ですよね。俺みたいな若造に伝えられるわけないですもんね」
「――これだけは伝えておいてやる。でかくなれよ。すればきっと視野が広がるはずだ」
そう言ってやったら剣持は満面の笑みを浮かべた。
世界での軍事兵器の主峰は、主にイタリアだと言われている。
最高峰メーカーであるベレッタであったり、ピエトロ重火器メーカーだったりと。
スイスの武器産業が崩壊したいま、誰もが利権を手に入れようとしている。
「剣持……つぎの利権を手に入れるのはどこの国だと思う?」
「……?」
「フランスだよ」
「……なんですって!?」
「自由のための独裁――ロズスペールって知っているか?」
「――フランス革命のジャコバン派は、革命の敵を裁くための簡略化された裁判(革命裁判所)を設置し、反革命の疑いがある人々をギロチンへと送る徹底的な弾圧を開始した。この手法は「恐怖政治」と呼ばれ、革命の危機を乗り越えるために強力なリーダーシップが必要とされた結果、実現しました政策だ。つまり、疑わしきは罰せろということだな」
聞くと話にしていた剣持はついに口を開いた。
「そのフランスの強硬派と武器利権にはどういう関係が?」
大塚はにやりと笑い、髪をなでつけた。
「陰謀論抜きで話せば、ジャコバン派の源流はどこだと思う?」
剣持はかぶりを振った。
「奴らは……民衆のための連合会だよ。『民衆の』『民衆による』『民衆のための』組織」
「それらが、フランス革命に反旗を翻したんですね」
「そういうことだ。少し、陰謀論的な話をひとつまみ」
「……なんだ?」
「フランス革命も、アメリカ南北戦争も。大政奉還も。すべて関わっていると思っていたほうがいい」
剣持は溜息をつく。
「世の中、うまく回っているんだな」
運転席から降りてふたりはドアをくぐった。




