406.現れた相手を追跡して
「マスター、正体不明船を確認。ゆっくりとこちらに近づいてきます」
「いよいよ来たか」
「各通信オフライン、ゴーストシップシステム起動。出来れば光学迷彩的なものが欲しかったが・・・まぁ視線に入らなければ大丈夫だろう」
真っ黒な宙域マップの端の方から白い光点がゆっくりと移動してくる。
スキャンされているような警告は無し、ゆっくりと移動しながら高度を調整して真上からそいつを確認することにした。
「メインモニター、出します」
「あれは・・・随分とぼろい船だな」
「ぼろいっていうかもうつぎはぎじゃない」
「まともな修理が出来ない環境なのか?」
見えてきたのはボロボロのバトルシップ。
抵抗を無視するような曲線はなく、とりあえず壊れた部分に適当なパーツを突っ込みましたという感じの仕上がりになっている。
素人でもここまではしないだろう、そんな適当な修理。
そこから導かれるのは・・・つまりそういう事だ。
「まぁ大破したバトルシップを持って行こうっていうんだからその程度なんじゃない?どうする、やっちゃう?」
「いや、様子を見よう。下っ端にこういう作業をさせているだけで、母船はやばいとかだったら困るだろ?」
超広域スキャンをしたときにはそれらしい反応は無し、あったのはこれらの残骸だけなので少なくとも超広域スキャンの外にそれらがあると考えられる。
となるとかなり離れた場所ってことになるが・・・、まぁ行けばわかるか。
「正体不明船、バトルシップに接近。作業を開始します」
「どうやらトラクタービームなんてものは積んでないみたいだな」
「むしろあの見た目で積んでたらびっくりよ」
「宇宙服も安物ね、どこかにひっかけたらそれで終わり。出来ればインプラントデータを参照したいけど・・・こういう時星間ネットワークがないのは不便よねぇ」
「むしろインプラントすらなかったりしてな」
星間ネットワークの管理下にある場合はインプラントがないといきていくこともできないけれども、それがない環境ではインプラントの存在はかすんでしまう。
別になくても困らないわけだし、わざわざ入れる必要もない。
もちろんすべて仮定の話なので、やはり奴がどこに行くかを突き止める必要はあるだろう。
それから三時間、静かに監視は続けられた。
「移動を開始、牽引ロープ異常なし」
「すごいな、本当に一人でやり切ったぞ」
「非常に手慣れていましたからこれまでにも何度かやっているのかもしれませんね」
「しかもここには四つ残ってる、どうするドローンで追跡するか?」
「それがいいでしょうね。残骸がある以上必ず戻ってきますから、まずは出所を探りましょう」
「了解、それじゃあ指示を頼む」
横のヘッドセットを装着して一号機を起動、正面にソルアレスのハッチ内が見えてくる。
「起動を確認、システムオールグリーン、継続稼働時間問題なし」
「正体不明船が牽引している船体の後ろから追跡を開始してください。そこならスキャンにも引っ掛かりません」
「はいよ」
「水中ドローン操縦で鍛えた腕の見せ所だね!」
「腕の見せ所って、しがみついているだけだけどな」
追跡とは言うけれど、一定距離を取りながら追いかけるなんて言う燃料の無駄遣いはしない。
静かに後ろに回り込んで残骸の端をアームでしっかりと固定。
すると、牽引する船が一瞬遅くなるも特に気にする様子もなくそのまま飛行を継続する。
「よくあれでバレないな」
「エンジンの不調とかそんな風に思ったんじゃない?」
「もしくは気付いててもそのまま、と言う可能性もありますね」
「出来ればそれは勘弁してほしい所だ」
いくら自分が乗っていないとはいえせっかく戻って来たばかりの俺の相棒、出来れば無事に戻ってきて欲しい。
その後はゆっくりと進む正体不明船の後ろをついていくだけ、超広域スキャンの結果から考えても最低でも一日は追跡する必要がある・・・と思っていたのだが、事態は思わぬ方に進んでいった。
「ん?前方にデブリ帯?」
「超広域スキャンでは拾えない誤差ですね」
「それにしても随分と密度が濃いな、ここまでくると反応するんじゃないか?」
「一つ一つが小さいと隙間からスキャン波が漏れてしまって反応しないんです」
「ですが・・・これは広すぎません?」
「帯と言うかまるで何かを囲んでいるようにも見えますね」
ドローンのカメラに映っているのは漆黒の宇宙に突如として現れた白い帯。
何かしらの小さなゴミが集まってできていて、何があるのかわからないので基本的に近づくことはない。
もっと巨大なデブリ帯を見ているのでどうしてもそれと比べてしまうのだが、確かに普通とは密度が違うようだ。
普通は白くなっても向こうが透けて見えるものだが、密度が濃すぎて向こうが見えなくなっている。
デブリ帯という位だから基本は横に長い物なのだが、どうやらこれは何かを囲むような球体にも見えてしまうわけで。
惑星などの強力な重力を持つものに引き寄せられるとこういう風になるのはよくある話、と言う事はだ。
この白いヴェールの向こうにそれと同じものがあるという事だろうか。
「デブリ帯突入します」
「凄い密度、こんな所まともな船じゃ通り抜けられないわね」
「これだけボロボロだから気にせず突入できるのか」
「あのつぎはぎもデブリをかき分けるためにつけられているのかもしれませんね」
「なんにせよ、ここを抜けた場所に何かある。通信状況は大丈夫か?」
「問題ありません、デブリ帯で若干のラグは出ますが切れる事は無いかと」
「さぁ、一体何が出てくるのやら」
カメラの横を通り過ぎる無数の小型デブリ。
今はこの船がラッセルしてくれているけれども、何もなしで突入すれば間違いなく不調が出るだろう。
それはつまり脱出するときも同じと言う事だ。
入るのは容易、でも出る時は?
「デブリ帯、抜けます」
「これは・・・」
「小惑星ですかね」
「その割には光ってるけど・・・もしかして基地化してる?」
「十中八九そんな感じだろう。おいおい、マジで未知との遭遇があり得るってか?」
デブリ他の向こうに見えてきたのは巨大な小惑星。
それだけならよくある話だが、至る所から白い光が漏れ出している。
つまりその中に光があって、それを必要とする何かがいるという事。
作業をしていた人は人型だったのでおそらく彼らが活動していると考えられる。
それが辺境に逃げ出しただれかなら問題はないけれども、それ以外だったら・・・よし、それは考えないでおこう。
「なんでこんなデカいのが超広域スキャンで反応しないんだ?」
「恐らくデブリに覆われている事で上手くスキャンできなかったのかと」
「つまりこのやり方だと今までも見逃している可能性がある?」
「否定はできませんね」
「やれやれ、世の中上手くいかないもんだなぁ」
「申し訳ありません」
「いや、効率を求めるのはいい事だ。なんにせよ今一番の問題は目の前に浮かぶあれをどうするのか、このままついていくことも出来るけど・・・とりあえずどうする?」
今のままだと内部に潜入することはできてもバラバラにされるのは眼に見えている。
折角ここまで来たのにそれはもったいない話、なにより俺の相棒がまたいなくなるのは困る。
思わぬ発見に別の意味で頭を悩ませるのだった。




