407.改めて宙域を探索して
「一号機はデブリ帯を無事通過、やれやれ何とかなった」
デブリ帯の向こうは小惑星基地でした。
そんな状況を打開するべく思案した結果、一度撤退することにした。
その際に小惑星全体をスキャンしてみたんだが、大きさで言えば以前潰した宙賊基地ぐらいの大きさはありそうだ。
敵戦力は不明、規模感からすると小型のバトルシップは二桁以上停泊できそうなのでイブさんのいない俺達では正直かなりの不利が予想される。
もちろんこっちも元宇宙軍の精鋭が乗る中型バトルシップはあるけれども、母艦と呼べるものはないので乱戦になった後がかなり厳しい。
星間ネットワークが使えないので遠隔での攻撃やハッキングが出来ないというのも攻撃を躊躇している理由の一つになっている。
いつもならサクサク監視カメラをハッキングして中の情報を取り出し、敵戦力の把握や無力化が出来たけれどもここに来てその技も使用できないっていうね。
そういうこともありドローンを撤退させてひとまず調査は終了、マッピングは完了しているので次に来るときに迷う事はないだろう。
「お疲れ様でした」
「やれやれ、思った以上にめんどくさい状況だな」
「まさかあんなものが隠れているとは思いませんでした」
「なによりこれが発見できなかったってのが痛いな」
「それなのですが・・・」
「ナディアさんから通信はいってるよ~、どうする?」
「回してくれ」
話の途中ではあるけれどナディアさんからの通信が入ったのでメインモニターに回してもらう。
ヘッドセットを外して顔を上げると、ナディアさんが心配そうな顔でこちらを見ていた。
「おいおい、総大将がなんて顔してんだよ」
「別に心配なんてしてませんけど?それで、状況はどうなんですか?」
「そうか、リアルタイムでの共有も出来なかったのか。リリス、映像を送ってやってくれ」
「オッケー、ちょっと待って。これで・・・どうだ!」
「受信中です。しかしこういう細かい部分でも星間ネットワークの恩恵があったんですね」
「俺も同じことを考えてた所だ。便利ではあるがそれに依存していたのもまた事実、今後辺境調査を継続するならこういう映像系の受け渡し方法も考えないとなぁ」
大昔は画像一つ送るのにも膨大な時間を必要としたそうだけど、それと同じことが今起きていると言っていいだろう。
流石に半日とかそういうレベルではないが、リアルタイムで共有できないというのは中々に不便だ。
「いっそのこと先に星間ネットワークを敷設してしまえばいいんです、そうすればこういう手間もなくなりますよ」
「でもそれは調査が終わってからっていう話じゃなかったかしら?」
「確かにローラ様の言うように調査完了が大前提ですが、あの小惑星を攻略するとなると我々のインフラを強化する必要があります。彼らが何者かはわかりませんが、元々こちら側だったことを考慮してあの小惑星がギリギリ範囲に含まれない場所までネットワークを入れてしまえば色々と動きやすくなると思われます」
「でもそれをするには調査が必要、今回の一件で超広域スキャンだけではだめだってことがわかったからやり直しになるわね」
「それに関しては申し訳ありません」
「別に怒ってるわけじゃないのよ、ただ世の中そう上手くはいかないって思っただけだから」
そう、ネットワークを敷設するのであれば詳細な地図を作る必要がある。
だがデブリ帯の影響で超広域スキャンが上手く機能しないという現実がある以上自分達で確認していない部分は全てやり直し、そういう理由もあって今回は攻撃を見合わせる事にしたわけだ。
とりあえず再び回収に来る前にそのエリアから脱出、改めてナディアさん達を交えてブリーフィングを行う事にした。
「人力で確認したのがここ、そんでもってここからが超広域スキャンのみのエリアだ。改めてスキャンを行った結果似たようなデブリ帯が複数確認されている。ただの帯なのかそれともさっきみたいに囲われているのは不明だが、なんにせよ再調査は必須という事だな」
「仮にこれ全部に小惑星があった場合は?」
「宇宙軍に連絡を入れて援軍を出してもらう。仮にすべての小惑星から想定される戦力が一斉に襲ってきた場合フロンティアだけでは防ぐことは不可能だ。もちろんこれは最悪の状況を想定したらの話だが、なんにせよ見に行けば話は早い」
「規模的に小惑星が入りそうなのはこの二つ、こちらの片方をナディア様にもう片方を我々で調査いたします。その結果小惑星があれば早期撤退、戦闘になった場合も出来るだけ撤退を意識して下さい。無理に殲滅する必要はありません、適度に迎撃をして被害を最小限に抑えましょう。我々の戦力はこれだけ、補修できる程度であれば問題はありませんが、撃墜されようものなら継続戦闘に影響しますのでご理解ください」
「みんな聞いたわね、戦闘は極力避けるわよ」
「・・・これ、意味伝わってるよな?」
「恐らくは」
うーん、ナディアさんの反応はちょっと違う気もするけれど、結局は臨機応変に対応するしかできないので任せるよりほかにない。
そんなわけで自力で調査していたエリアまで後退し、改めて人力での調査を開始。
途中、怪しげなデブリ帯があった場合は戦闘用ドローンを派遣して状況を確認するというやり方を徹底することで出来るだけ被害が出ないように努めた。
その結果、大きな問題はなく確実に地図は埋まっていく。
調査を再開して丸一日、ついに問題のデブリ帯付近まで到達した。
「さて、いよいよお待ちかねのデブリ帯か」
「上方は我々が、下方をナディア様が調査する形になります。現在デブリ帯付近まで移動中、調査は同時に行いますのでマスターも準備をお願いします」
「同時に?」
「仮に両方に小惑星があった場合調査に気づかれる可能性があります。そうなると連絡を受けた方が攻撃される可能性も高くなりますから、やるならば同時です」
「まぁその可能性は低いと思ってるけど、念には念を入れないとね。こっちはソルアレスとローラさんがいるから問題なく逃げれるけど、向こうはそうじゃないしさ」
「こっちは大丈夫、何があっても絶対に逃げ切って見せるから安心してて」
確かにソルアレスの性能であれば大抵の相手なら十分に対処可能、仮に両方に似たような小惑星があった場合はそのまま逃げ切った後そのまま救援に行くことも出来るのでやはりネックなのはナディアさんの方か。
なんにせよ調査しないと先には進めないんだからさっさとやることやってしまおう。
小惑星があれば逃げる、無かったら笑う、ただそれだけだ。
「よし、ナディアさんに連絡。五分後に同時進行だ」
「了解しました」
「さぁ、派手に行くわよ!」
やる気満々のメンバーに囲まれながら五分後に上下のデブリ帯に向けて進行を開始、見る見るうちに白い帯が眼前に近づいてくる。
「デブリ帯を確認、精密スキャン・・・はやっぱり無理ですね」
「そのまま突入して大丈夫か?」
「この程度のデブリでならシールドで対処できるから大丈夫」
「それじゃあ行くわよ」
速度を落としながらゆっくりとデブリ帯へ進行しながら周囲のスキャンを継続すると段々とデブリ帯の状態がわかって来た。
細かいデブリの中にどうやらスキャンを無効化するような物質が混ざっているらしい。
これが作為的なものか偶然なのかはさておき、スキャンに反応しなかった理由がこれで判明した。
「デブリ帯抜けます」
「こっちは・・・セーフか」
デブリ帯の向こうは漆黒の宇宙、周りを見回しても特にそれらしい痕跡はなかった。
やれやれ安心したと胸をなでおろしたその時だ。
「ナディア様から緊急通信!」
「こちらナディア小惑星を発見!・・・って、嘘!何で待ち構えてるのよ!全員警戒、攻撃来るわよ!」
「おい、どうした!」
「通信、途絶えました」
「くそ、急いで戻るぞ!」
こっちはセーフでも向こうはアウト、最悪の事態は回避されたもののまだまだ予断を許さない状況のようだ。




