405.地図の無い宇宙を旅して
「Xプラス5-10異常なし」
「Yマイナス20-25異常なし」
「Zプラス50以上あり、デブリ帯です」
「各自反対側への飛行を開始、異常があれば報告しなさい」
「「「イエスマム!」」」
ノリは完全に宇宙軍、ナディアさんの指示で未開拓の宇宙を四方八方に飛び回る中型バトルシップの行方を静かに見守る。
先程迄真っ黒だったメインモニターだが、連続して飛び交う情報を拾い上げながら少しずつ形が出来上がっていく。
縦横高さ、そのプラスマイナスを含める事で360度すべてのエリアを確認することが出来るのだが、調べる範囲があまりにも広大過ぎて思うように地図が作られて行かない。
うーむ、宙域地図って俺達が思ている以上に時間と労力がかかっているもんなんだなぁ。
「どんな調子だ」
「特に異常はありません、超広域スキャンの結果とほぼほぼ一致していますから何度かこれを行って差異が無ければ今後は超広域スキャンだけでも問題なく確認できるかと」
「その方が効率的か」
「障害物があるとそこだけ反応が途切れますのでそれを確認してから調査に行けばいいでしょう。問題があるとすれば小型のデブリに反応できないことですね。先ほどの様なデブリ帯の発見は難しくなります」
「今回の目的はあくまでも簡易調査、そこまでしっかり調べる必要はないだろう。それに、安全地帯がわかっていればそこを通るだけでいい話だし、わざわざ高さを変えて移動する必要もない」
「ではそのようにナディア様へ連絡を入れておきます」
超広域スキャンを併用できるようになれば探索速度は一気に上がる、小惑星や惑星なんかは視認できるのだがそれ以外はこうやって地味に調べていくしかないのがなんとも不思議な感じだ。
これだけ科学が進歩しても出来る事には限界がある。
だからこそ冒険っぽくて楽しいんだけどな。
「地味だなって思ってない?」
「そんなことないぞ。この地図が無かったらこの先にどれだけすごい場所があっても安心して航行できない、安全を手に入れるってのは時間も金もかかるもんだ」
「・・・」
「なんだよ」
「いえ、ちゃんとご理解されているんだなと感心しているんです」
「それぐらいわかってるっての。ここは辺境だぞ、当たり前の物が当たり前にあるとは思ってないっての」
むしろその当たり前を作るのが俺達の役目、見た目は地味でもやっていることはかなり重要だ。
とはいえそれが二日三日と続けば暇になるもの。
もちろんナディアさん達も似たようなもので、最初の頃の覇気は感じられない。
まぁ、超広域スキャンで異常があった場合のみ活動するようになると必然的にそうなるか。
「マスター、次はX222Y68Z157ポイントお願いします」
「了解っと」
しまいには異常が発見されても俺のドローンで調査すればいいじゃないかと言う話になってしまい、結果働いているのは俺だけになってしまった。
それはまぁいいんだけど、無駄に何か起きないかなと思ってしまうのが人間と言うもの。
「異常な・・・ん?」
「どうしました?」
「X222Y68Z157ポイントに異常あり、あれは・・・バトルシップの残骸か?」
「ナディアさん聞きましたね?」
「急いで調査に向かうわ、全員気合を入れ直しなさい、仕事よ!」
さっきまであんなに暇そうにしていたのにスイッチが入ると人が変わるのが軍人というもの、すぐ横で待機していた中型バトルシップが一斉に漆黒の宇宙へと飛び出していく。
「さて、俺達も行くか」
「もちろん移動はしますがマスターは別の場所の調査もお願いします」
「ん?まだあるのか?」
「正確に言えばあと五カ所ほど、おそらく残りも同じ感じでしょう」
「地図もないような場所にバトルシップ、それも複数となれば・・・まぁ結果は見えてるか」
「簡易地図を見るとこんな感じですね。フロンティアコロニーから直線距離で三日、大型船に色々と積み込めばギリギリ補給をしようと思えばできる環境ではあります」
つまり宙賊がこの辺りに隠れていて、先ほどの残骸は仲間割れかはたまた俺達のような開拓者を狙った結果か。
なんにせよこの宙域には何かいる、それを判断するいい材料になるだろう。
ドローンを複数操りながらアリスの指示するポイントを調査、それらの結果をナディアさんに報告しつつ手分けして確認をしていくと何とも言えない推測が浮かんでくる。
「これ、宙賊だな」
「そうですね」
大破したバトルシップをドローンのカメラで確認すると、装甲に見慣れた落書きが施されている。
大事な船にこんなことをするのは宙賊以外の何者でもない。
こいつらが何故ここにいるのかはさておき、問題になるのはその絵が描かれた装甲部分。
いくつもの小さな穴の他に中から外に飛び出すような爆発痕が残されている。
今の一般的な戦闘では決して起こりえない痕跡だ。
「しかも今時レーザーじゃなくて実弾で撃ち抜かれてるとか、どんな相手と戦ってたんだよ」
「過去から来た何かとか」
「もしくはこの先にそういう技術力の何かがいるかもよ」
「未知の存在と言う奴ですかね」
「今のご時世で未知との遭遇は勘弁してほしいなぁ」
ローラさんも交えてソルアレスのメインモニターに映し出された残骸を観察、アリスが突拍子もない事を言い出すがあながち間違ってはいないかもしれない。
実際そういった存在を求めて大昔の人間は宇宙へと飛び出したらしいけれど、残念ながら見つかったのは遺跡だけ。
痕跡はある、ただし本物はいない。
それが今日までに分かっている事であり、出来れば今後もそうであってほしいと願っている事。
だってそうだろう、俺達が宇宙に出るよりもはるか昔から宇宙を飛び回っていたような文明だぞ?
どう考えても技術力で負けてるし、そんなのが出てきたら人類なんてあっという間に制圧されてしまう。
もちろん宇宙軍が抵抗するだろうけど、それがどこまで行けるかは・・・なんとも言えない。
「なんにせよ宙賊船を破壊するだけの何かはいる。もちろん仲間内で何かしたっていう事も考えられるけど・・・」
「それはないわね」
「そう言い切るってことは何かわかったのか?」
「バトルシップに略奪された痕跡があったわ。相手は意図して宙賊船を撃破、中身を奪ったみたいね」
「それはいい話だ」
「どういうこと?」
「少なくとも宙賊程度の相手から物資を略奪しなければ生きていけない存在って事だろ?それなら俺達でもどうにかなる」
もし仮に未知との遭遇的な奴だとして、優れた科学力を持っているのであればわざわざ物資を奪うなんてことはしないだろう。
という事はそれをせざるを得ない存在だという事、物理弾の時点でその気はあったけどどうやら何とかなりそうだ。
「なんだかよくわからないけど、船そのものも持って行こうとしているんでしょうね。ビーコンが付いていたわ」
「ってことはその電波を辿れば?」
「発信機能だけだと追跡は難しいですが、ビーコンを確認すればどこで手に入れたかは推測が出来ます」
「よし、それじゃあその線から行くとするか」
「私達はどうすればいい?」
「とりあえず各残骸から離れて待機してくれ。ゴーストシップシステム入ってないだろ?」
「そういえばそうだったわね。今度お父様に請求しとかないと」
宇宙軍の機密技術を父親にねだるとか聞いた事ないんだが、まぁ宙賊ですら持っていたんだから出来なくはないんだろうけど・・・。
はてさて、何が現れるのやら。




