404.辺境調査に参加して
「それでは出発します」
中型のバトルシップが四隻と補給艦一隻、その後ろにソルアレスの計六隻からなる辺境調査船団。
それらがゆっくりとフロンティアを出発し、宙域地図の無い漆黒の宇宙へと旅立っていく。
「気を付けて行ってくださいね」
「変な小惑星に突っ込んだらあかんで」
「テネスがいるから大丈夫だと思うけどそっちも気を付けろよ」
調査隊に参加せずノクティルカに残るのはイブさんとミニマさんそれとテネスとテネブリス。
本来辺境調査と言えばノクティルカが必要不可欠だが、生憎と別の仕事があるので今回は留守番と言う事になっている。
仕事内容的に護衛が必要なのだが生憎と俺達もこっちにつく為、急遽テネスとテネブリスを派遣することにした。
宙賊程度ならテネス一人でも十分何とかなるし、いざという時はテネブリスを出して迎撃してもらう事になっている。
「私がいるから大丈夫よ、そっちこそ余計な物持って帰ってこないでよね」
「なんだよ余計なものって」
「よくあるじゃない、未確認生命体を持ち帰って全滅するホロムービーとか」
「これから未開拓地域に行く奴に言う事じゃないよな、それ」
「でも、見つけたら大金持ちになれますよ?」
「そもそも見つける前提で話を進めないでくれ。今回はあくまでも広域調査、余計なものは持ち帰らない・・・つもりだ」
「期待しないでおくわね、それじゃあ行ってらっしゃい」
通信が切れ、代わりにメインモニターにリリスと先行する調査船団が映し出される。
一糸乱れぬ隊列は調査団と言うかもっと別のものに見えてしまうのは俺だけじゃないだろう。
ナディアさんを隊長として発足された調査隊だが、そのほとんどは彼女が引き抜いて来た元宇宙軍所属の軍人、こうなるともはや調査隊ではなく独立宇宙軍か何かだと思うんだが・・・。
まぁ何があるかわからない環境だけに、過酷な状況でも冷静に対処できる人の方が都合がいいと言えば都合がいいんだけどさ。
「マスター、調査団から連絡が入っています」
「ん?もう?」
「メインモニター出します」
出発してまだ四時間程、ついさっき出発したばかりだというのにわざわざ映像を繋いでくるっていう事はトラブルか何かだろうか。
画面が切り替わり現れたのはナディアさん・・・ではなく見知った顔だった。
「マクシミリアン中尉!?」
「軍は退役しましたのでただのマクシミリアンで大丈夫ですよ。もしくはミリアンとお呼びいただければ」
そこにいたのはナディア大佐の下で働いていたマクシミリアン中尉、独立宇宙軍では彼女の右腕として働いていた彼とまた仕事が出来るのは非常にありがたい話だ。
甘いマスクに高身長のイケメン、それでいて仕事も出来てと言う事なしだがついた人が付いた人なので、ある意味苦労人でもある。
本人がそれを望んでやっているのかはたまた仕事を振られ続けているのかはわからないけれど、文句を言わず彼女の下で働けるのはマジですごいと思う。
「なんとなく引き抜かれてるだろうなと思ってたけど、こんな所で会うとはなぁ。いいのか?向こうよりもこき使われるぞ?」
「ちょっと、それはどういうことですか?」
「本当のことだろ」
「別に私はこき使った覚えはありませんけど?」
「って、言ってるが?」
「あはは・・・」
「そこは否定するところですよ!」
宇宙軍では結構硬い感じだったのに、良いキャラしてるじゃないか。
他にも何度か顔を合わせたことのある人の姿も見えるだけに、やっぱりこれは独立宇宙軍・・・いや、独立辺境調査軍というべきだろう。
「まぁ長旅なんだからそうカリカリするなって」
「別にカリカリなんてしてませんけど?」
「そういう事にしておいてやる。それで、連絡してきたのは挨拶だけじゃないんだろ?」
「そうでした。今回の調査ですが宙域マップの作成の他、今後の資源確保を目的として小惑星群などを発見したいと考えています。それに合わせて超広範囲スキャンを使用するつもりですが、一つ問題がありまして」
「問題?」
「我々だけでは広域情報を処理できない為、宙域マップの作製をそちらのお二人にお願いしたいんです。スキャン結果をもとに我々は飛び回って情報集めてそれを提出させていただきます、ご面倒だとは思いますがお願いできませんでしょうか」
なるほど、宇宙軍の機材があればその辺も自分達で何とか出来たんだろうけど、元は宙賊から回収したバトルシップなのでその辺の機材が積まれていないのだろう。
今回はあくまでも簡易調査なのでそこまでガッツリ作る必要はないとはいえ、二度手間を考えると今のうちに作っておいた方がいいのかもしれない。
「と、いうことだが二人ともどうする?」
「もちろん構いませんが、作成費用は別途アンナ様に請求いたしますね」
「え、お金を取るの?」
「仕事には対価が必要ですから当然です」
「これが貴方達のプラスになるかもしれないのに?」
「仮定で話は出来ません。確証があるのであれば値引きも検討しますが、そもそも我々を使うと高いですよ」
アンティークヒューマノイドを安売りするつもりはないとアリスは言いたいんだろうけど、俺も金をとるのには驚きだ。
一応調査団の一員ではあるわけだし、その辺は役割分担してもいいと思うんだがなぁ。
「それでも結構です。今回の調査はアンネリーゼ様直々の依頼ですからそれらの代金を請求する権利があります。ただし、作るからにはそれに見合う物をお願いしますね」
「言うじゃないか」
「なにぶん上司が厳しいもので」
「まぁいいだろう。やるからにはしっかりやらせてもらうし、調査に出ろと言われれば喜んで手を貸そう。最近ドローンを操縦できるようになったんだ、少しは使わせてくれるとありがたい」
「その時は是非お願いします。それではこれより未開拓地域へ進行します、各自警戒を怠らずレーダーと目視で警戒を続けてください」
そこで通信は終了しいつもの画面に切り替わる。
宙域マップが表示されているものの七割が真っ黒でどんどんと既存のエリアが見えなくなっていく。
「すごいな、まるで故障しているみたいだ」
「ここから先は星間ネットワークも入らないエリアですから当然です」
「ん?つまりフロンティアと連絡も取れないってことか?」
「それに関しては通信用のハブを定期的に落としていますので、そこを経由すれば大丈夫です」
「確か・・・前にリリスが使ってたやつか」
「そうそう、簡易型の星間ネットワークみたいなものだよ」
「調査が終わって特に問題なければ本物の星間ネットワークを敷設、そこに宙域情報をアップロードすれば宙域マップが拡大すると。結構面倒なんだな」
ゲームとかなら未踏破エリアに侵入するだけでどこに何があるかすぐにわかるけれど、現実はそういうわけにいかない。
XとY軸だけでなくZ軸も考慮して周囲を探索、そこまでして始めて宙域マップが埋まっていくのだ。
超広域スキャンがあるとはいえ、そこに何があるかはわからないまま。
まるで闇を切り裂くようにそこに突入していくというのは、いろんな意味でスリルと興奮を感じる。
これこそが冒険、これこそが探索。
なんだろう、そう考えるだけでワクワクしてきた。
「マスター、心拍数が上がっていますがどうしました?」
「いや、何でもない」
「もしかして怖いとか?」
「いや、そんなわけないだろ。子供かよ。」
「怖ければ私の横が開いていますよ」
「だから違うって」
なにやらアリスたちが誤解しているみたいだけど、この気持ちは男にしかわからないんだろうなぁ。
まだ見ぬ未開の地を突き進む太陽の翼。
果たしてその先には一体何が待ち受けているのだろうか。




