402.改めて惑星を満喫して
「ほら、そっち行ったわよ」
「なんのこれしき!」
「マスター、ナイスです!」
「まだまだ負けません!」
青い海、白い砂浜、そして水着姿の女性達がビーチボールを追いかけながらはしゃいでいる。
もちろん俺もその中に交じっているわけだが・・・うん、目のやり場に困るな。
前にプールで見たのと同じ水着ではあるけれど外で見るのと中で見るのとはまた雰囲気も違うし、なにより日差しが各部位を強調するのかついついそこに目が行ってしまう。
ローラさんもイブさんも世間一般で言えばスタイルのいい方、その二人が暴れまわるだけで・・・なんていうか凄い光景になる。
それとは対照的にアリスとナディアさんは大人しい感じ、見ている分で言えばこっちの方が安心するなぁ。
ミニマさん?スルーで。
「なんだか非常に不快な視線を感じるんだけど?」
「気のせいだろ」
「そりゃあの二人に比べたらつつましいけど、一応あるにはあるんだけど?」
そう言いながら自分の胸を持ち上げるナディアさん、流石元軍人だけあって引き締まった体に黒色のビキニ姿はセクシーさよりも健康的な印象がある。
父親に結婚をそそのかされてからは吹っ切れたようにそういう態度を取ってくる始末。
もちろん前からそんな雰囲気はあったけれど、ローラさんから何か聞いているのかドンドンと露骨になっている気がする。
俺としても突然やってきたモテ期にどう対処していいのかわからない始末、なんだかんだ言ってもうオッサンなんだが・・・大丈夫だろうか。
「マスター、これに負けたらおやつ抜きなんですから真剣にやってください」
「おやつって、お前食べれないだろ?」
「気分です気分」
「それに相手はイブさんだぞ、勝てるわけないだろうが」
「やる前から負ける気でいてどうするんですか、ねぇナディア様」
「そうね、例え負け戦でも戦わなければならないときはあるのよ。胸の大きさでは負けてても気持ちではまだまだ負けないわ」
「はぁ、もう好きにしてくれ」
そんなこんなではしゃいでいる俺達の横ではテネスとダニエルさん達が何やら難しい顔で打ち合わせをしている。
俺達が遊んでいる傍ら惑星の事前調査は進行中、水中ドローンを投入しての海中調査の他にも地質調査なども並行して行われている。
遊ぶのはこのぐらいにしてそろそろ真面目に仕事をするか。
「お疲れ様、どんな感じだ?」
「今のところは順調・・・って言いたいんだけど、この惑星は思った以上に大変かもね」
「というと?」
「思った以上に水量が多いんです。こういった惑星の場合は約七割が海であることがほとんどなのですがここは九割ですし、しかもかなり深く潜らないと地盤まで到達しないので地質調査が難しくて」
ダニエルさんが申し訳なさそう顔で状況を説明してくれたのだが、なるほど、だからみんな難しい顔をしていたのか。
そもそもの話惑星上で地表が見えているのはここだけ、それ以外が海なんだから当然と言えば当然だが・・・それでいて深いとなると厄介だな。
「つまり追加費用が掛かると」
「そこまでは言いませんが、テラフォーミングするにはまずはこの水をどう減らすかが重要になります。地殻を持ち上げる事で地表面積を増やすことはできますが、元あった水の総量が減るわけではありませんから」
「海水故に再利用するにも色々と取り除くものが多くなる。まぁ逆を言えば取り出せるものも多いわけだから、成分によっては売れるかもな」
「水を減らしつつ成分を抽出、天然塩として売り出すってか?」
「もちろんそれ用のプラントを作れば出来るけど・・・ざっと見積もって二億ぐらいかしら」
二億をつぎ込んで天然の塩を作り、それを売るとしていったいどのぐらいの年月で投資を回収できるのだろうか。
別にそこにこだわっているわけじゃないんだけど、水分を減らすことで嵐の回数や威力をコントロールできるそうなので、その辺は考えていく必要があるだろうなぁ。
「パス」
「でしょうね」
「生き物の方はどうだ?ここから見る限りまともな生命体は確認できていないが、存在するのか?」
「ドローンで調査しましたが、残念ながらそれらしい姿は確認できませんでした。おそらく塩分濃度の問題で大きい生態系は存在できないのではないかと。天然の魚のようなものを発生させるのであれば塩分除去も検討する必要がありますが、なにぶんこの量ですから・・・」
「生き物を期待するのは難しそうだな」
出来なくはない、だがそれにも莫大な費用がかかる。
こんないい惑星が放置されるにはそれ相応の理由があるんだなぁ。
ジンさんが水中ドローンで撮影した映像を見せてもらったけれどそれらしい影はどこにもない。
最初に行った惑星のように現地で釣りとかできたら面白かったんだが、残念ながらそれは叶わないらしい。
「だが悪い話だけじゃないぞ。深海の地表を確認しただけだが、レアメタルに近しい物質が確認できた」
「レアメタルだって!」
「あくまでも映像で確認しただけであって、実際に試削してみてからにはなりますが可能性は高いかと」
何度も調査をしてきた彼らの口からその言葉が出るという事は本当に可能性は高いのだろう。
最初はどうなる事かと思ったが、まさかそっち系の可能性があるとはちょっと想像していなかった。
「つまり掘れば掘るほど儲かると?」
「そこまでは言い切りませんが、ある程度の費用は回収できるかもしれません。後はどのぐらいの埋蔵量があるのか、それ次第でテラフォーミングの内容が大きく変わっています」
「ようは人が住めるようにする程度にするのか、それともガッツリ採掘して稼ぐようにするのかって事。後者の場合この青い海とはおさらばすることになるでしょうね」
「そのかわり収入はがっぽりだ。その金を使って別の惑星を買うもよし、一応同時進行で両方することも出来るが・・・中途半端にすると余計な金がかかるしあまりお勧めは出来ないけどな」
居住性を取るのかそれとも収入を取るのか、これはまた難しい問題が浮上してきた。
個人的には居住性を最優先したいところだが、懐が寂しいままでいるくらいならドリスさんの言うように収入に全振りして別の惑星を買うという手もある。
「なんにせよ詳細は調査してみないと何とも言えない。今回の調査をもとに必要な資材を選定して改めて詳細な調査を行う事になるでしょう。因みに現時点ではどちらで行きますか?」
「難しい話だが居住性だな。こんなに綺麗な海を汚すのはもったいない」
「そう言ってくださると思っていました、それではそちらの方向で調査を進行いたしますのでどうぞ向こうで惑星を堪能してきてください」
「いいのか?」
「それが仕事だから気にしないでくれ」
「ただ、一つだけお願いするなら・・・向こうで作ってる料理を食べさせてもらえるとありがたいです」
「それはもちろんだ、是非食べて行ってくれ」
砂浜の奥では持ち込んだ食材を使った簡易BBQが準備されている。
ソルアレスの合成機で作られた肉や野菜を持ち込んだだけだが、それを串にさすだけで不思議と美味しそうにみえるんだよなぁ。
あれを料理と言っていいのかはなんとも言えないけれど、折角外で食べるのならばみんなでワイワイ食べるのもいいだろう。
「マスター、次の勝負を始めますよ!」
「ったく、あんなにはしゃぐヒューマノイドなんて聞いた事がないぞ」
「そりゃ普通はいないんだから聞いた事ないでしょ。でもあれがアイツなのよ」
「知ってる」
「ほら、こっちはやっとくからさっさと行きなさい」
「お前はいいのか?」
「さすがの私でもあそこ迄はしゃぐのは無理、後は任せるわ」
テネスが白旗を上げるほどのアリスのはしゃぎっぷり、何が彼女をそこまでさせるのかはわからないけれど楽しそうだからまぁいいか。
かくして事前調査は進み、俺達は久々の惑星を満喫したのだった。




