401.事前調査の挨拶をして
「お、見えてきた見えてきた」
漆黒の宇宙に浮かぶ真っ青な惑星。
地球型と呼ばれるその惑星こそ俺が念願かなって購入し、絶賛貯金を吸い尽くされている元凶だ。
いや、いいんだよ?
元々テラフォーミングするには金がかかるのは理解していたし、場合によっては最初の資金だけでは足りない可能性があることも承知していた。
が、いざそれが始まると・・・いや、これ以上は何も言うまい。
「初めましてキャプテントウマ、私はオルビタル・フロンティア・インダストリー惑星調査隊の代表ダニエルです。この度は惑星購入おめでとうございます」
惑星降下を前に事前ブリーフィングが行われることとなり、調査隊の方々がソルアレスへとやってきた。
代表として挨拶をしてくれたのは顎鬚が特徴的なダンディな男性、おそらく年上だと思うけど・・・これが男の色気ってやつか。
「トウマだ。これだけの規模となるとかなりの大人数を想定していたんだが・・・少ないんだな」
「実務のほとんどはドローンやアンドロイドで行いますので、操縦士と測量士それと雑用係の私がいれば十分回るんです」
「代表が雑用係なのか?」
「その方が色々と都合がいいこともありますから」
「まぁ気持ちはわかる」
代表になったからって別に偉いわけじゃない、他の仲間が仕事しやすいようにサポートすることができるから、結果として代表と呼ばれるのだとか。
この人もそういうのがわかっているタイプの人間、間違いなくこの人の下だと仕事がしやすいだろうなぁ。
「ドローン操縦士のジンです、よろしくお願いします」
「同じく測量士のドリスだ。よろしく頼む」
「初めまして皆様、私はキャプテントウマ付きヒューマノイドのアリスと申します。この度は惑星の事前調査をお受けいただき誠にありがとうございます。いくつか確認したいことがあるのですがお時間よろしいでしょうか」
「もちろんです。こちらもいくつか質問がありますのですり合わせをいたしましょう。いやぁ、今日は良い話し合いが出来そうだ」
どうやらダニエルさんはアリスと馬が合うらしく、二人でニコニコしながらが話しを始めてしまった。
俺も聞きたいことがあったんだが・・・まぁいいか。
「あ~あ、あぁなるとうちの人は長いぞ。仕事の話になると止まらないんだ」
「問題ない、うちのも似たようなもんだ」
「どうやらそうらしい、お互いに大変だな」
話し合いを始めてしまった二人を眺めていると測量士のドリスさんが近づいて来た。
年は似たような感じだが・・・ガタイが全然違う。
ガチムチといえばいいのだろうか、上半身が俺の1.5倍ぐらいある。
一体どれだけ鍛えたらこうなるんだ?
「まぁ難しい話はそういうのが得意なのにやってもらえばいいさ。今回は余計なのも大勢ついてくるが気にしないでくれ」
「その辺はいつもの事だから問題ない、特に今回みたいな綺麗な惑星はそういう気持ちになるのも仕方ない」
「こういう惑星の調査は多いのか?」
「多ければいいんだがなぁ、残念ながらそうじゃない」
「そりゃ残念だ」
向こうでアリス達が難しい話をしている間にドリスさんとジンさんから測量やドローン操縦の話を聞かせてもらうことに、どうやら使っている機器は俺が戦闘用ドローンを操縦しているのと同じらしく、折角ならと動画を交えながらドローンの使い方を教えてもらえることになった。
「お~、こうやって動かすのか」
「ドローンは真後ろから見るのではなく少し俯瞰してみると周囲の空間を把握しやすくなりますよ」
「少し上ねぇ・・・うーん、むずかしい」
「その辺は慣れですよ。よかったら惑星で実際に操縦してみますか?」
「いいのか?」
「あの二人の話を聞いているとかなり大掛かりな測量になりそうでして、むしろお手伝いいただけると大変助かります」
そういう事なら喜んでと二つ返事で了承する。
ジンさんはドリスさんと違って筋肉はそれほどないけれども、背が高くしかもイケメン。
長い指でドローンを操縦する様は男の俺でも見惚れてしまうほどだ。
「何見てるの?」
「いや、綺麗な指だと思ってな。みろよこの指、ごつごつして汚いだろ?」
「あらそう?そのぐらいの方が男らしいと思うけど」
ナディアさん的に俺の指は合格らしい。
てっきり女性はあぁいう細い感じが好きなのかと思ったのだが、彼女の好みではなかったようだ。
「男らしいねぇ・・・。じゃあドリスさんはどうだ?あのガタイで俺と同い年だぞ」
「私、鍛えすぎてる人は駄目なの」
「言い換えれば適度に鍛えてるのはありと」
「そうね、多少お肉がついているぐらいでも問題ないわ」
「つまりトウマさんぐらいがいいっていう事ですよ」
ナディアさんと話していると横からローラさんが会話に交じってくる。
自分の腹を見返すと・・・年相応のなんとも言えないふくらみが見える。
イブさんに鍛えてもらっているので多少はマシかもしれないけれど、ドリスさんのように腹筋が割れるぐらいまで鍛えれば少しは見た目もよくなるだろうか。
「この腹がねぇ・・・」
「流石にそれは増えすぎだから少しは運動しなさい」
「へいへい」
「私はそのぐらいでもいいですけど」
「駄目よローラさん、こういうのは甘やかすとすぐ増えるんだから」
「ふふ、幸せ太りでいいじゃないですか」
ローラさん的にはあり、でもナディアさん的にはアウト。
個人的には・・・やはりアウトなのでもう少し何とかしよう。
なんせ惑星に降りたら水着になるんだ、流石にいつまでもそのままってわけにはいかないだろう。
そんなこんなで打ち合わせは二時間以上も行われ、予定よりもだいぶ遅れて惑星へと降下を開始した。
鮮やかな青い海に浮かぶ白い砂浜、前回とさほど変化はないようだがアリス曰く二度ほど嵐にあって水没してしまったらしい。
「ついたー!」
「ミニマさん、はしゃぐとこけますよ」
「大丈夫や・・・あ!」
ハッチが開いて真っ先に砂浜へと飛び出すミニマさん、大丈夫と言いながら後ろを振り返ったのだが、足がもつれてそのまま倒れてしまった。
かなり派手にこけたが・・・まぁ、砂だから大丈夫だろう。
「言わんこっちゃない、大丈夫か?」
「口に砂が入っただけやから大丈夫」
「気を付けないとイブさんに呆れられるぞ」
「お姉様はそんなことで呆れる人やないから大丈夫や」
「さよか」
「マスター、荷物が多いのでドローンを出してもらっていいですか?先ほどの講習で上がった腕前を是非見せてください」
「そういうプレッシャーのかけ方はどうかと思うぞ」
荷物を運ぶぐらいなら問題ないはずなのだが、向こうにはプロがいるのでその人の前でってのは少々恥ずかしい。
そんな俺の気持ちを知るはずもなく・・・いや、知っていてもスルーして仕事をさせるのがうちのヒューマノイドだけどな。
各自が荷物を持ちつつ砂浜の一番高い部分に荷物や調査資材を運んでいくのだが、思った以上に荷物が多くすべて置くのは難しそうだ。
「仕方ありません、デッキチェアなどは砂浜に移動してしまいましょう。イブさん、お手伝いをお願いします」
「了解しました」
「じゃあ私はこの傘を運ぶわね」
「クーラーボックスは任せとき!」
「・・・騒がせて悪いな」
「いや、下手に気を使われるよりもよっぽどましだ。それに目の保養にもなる」
「そうか?」
「あぁ、もちろん手は出さないから安心してくれ。俺は女性に興味がないんだ」
「・・・」
「因みにあんたは好みじゃないから安心していいぞ」
そう言ってニヤリと笑うドリスさん、若干引き気味の俺を笑いながら機材の準備を始めてしまった。
まったく、そんな事言われて安心できるわけないだろうが。
かくして惑星の事前調査は巨大な爆弾を落とされた所から始まったのだった。




