400.再び惑星へと向かって
気づけば400話まで来てしまいました。
ここまで来られたのもひとえに皆様のおかげ。
誠にありがとうございます。
惑星を購入してもまだまだ旅は続きます。
引き続き、よろしくお願いいたします。
惑星購入から一カ月が経過した。
ここに来るまでに色々、本当に色々あったけれども・・・結論だけ言えば何の進展もない。
毎日あれだけ書類を書いて契約をしているのに惑星開発は全くと言っていいほど変化はなかった。
変化しているものがあるとすれば俺の口座残高ぐらいだろう。
ピュアウォーターのボトルをひっくり返したかのようにドンドンと流れ出ていく俺の残高、最初は億単位であったはずなのに早くも一桁減ってしまっている。
まぁ、大きな支払いは終わったけれどもまだまだ細かいのが残っているし、何より日々生活するだけで金は出ていく。
マジで破産するんじゃないか、これ。
一応各所からお金は入ってくるけれども出ていくお金に比べれば雀の涙、これはちょっとまずいんじゃないだろうか。
「はぁ」
「随分と大きなため息ですね」
「そりゃそうだろう、これを見てため息をつかないやつがいるか?」
「所詮電子数字の羅列ではありませんか」
「お前達からしたらそうかもしれないが、俺からすれば命と同じだっての」
キャプテンシートに座り、タブレットに映し出された口座を見て盛大なため息をついている所にアリスがやってきた。
彼女達からすれば電子上の数字でしかないかもしれないが、俺達からすれば命を懸けて稼いできた血と汗と涙の結晶。
それが見る見るうちに減っていくんだからそりゃ不安にもなるだろう。
「では増やします?」
「ふや・・・さない」
「一瞬悩みましたね」
「そりゃそうだろう、とはいえそんなことをして増やした金で開発した惑星に住んでも・・・問題ないよなぁ」
「まったく、何バカなこと言ってるのよ」
真剣に考えていたというのにそんな俺を馬鹿呼ばわりして会話に混ざってきたのはナディアさん。
前の軍服と違ってラフな感じではあるけれどやはりカチッとした服がお好きなようだ。
恐らく家柄の癖みたいなのがあるんだろう、
「馬鹿とは失礼な、こっちは真剣だっての」
「真剣に不正する奴がどこにいるのよ」
「ここにいますね」
「仕方ないだろ、僅か一カ月もしないうちに残高が億を切ったんだぞ?このペースで行けば半年もしないうちに残高はゼロ、そのまま破産コースだ」
「まだ半年あるじゃない。その間に稼げばいいだけの話だし、うちだって援助してるでしょ?」
「オルディス家が援助してるのはフロンティアコロニーであって俺達じゃないだろ」
「仕方ないじゃない、あの島以外何もないんだから」
ナディアさんがこっちで生活するにあたり、オルディス家がかなりの資金をフロンティアに投入したという話は聞いた事がある。
もちろん前回の詫びも含まれているようだけど、企業であるとか宇宙軍の基地であるとか一個人が出すにはまりにも大きい金額が使われたそうだ。
可愛い娘の為ならばと言う親心なんだろうけど、少々やり過ぎじゃないだろうか。
「そうなんだよなぁ。色々と調査は入ることになってるけど、まだ何の進展もなし。はぁ、暮らせるようになるのはいつになるのやら」
「テラフォーミングをするにしてもまずは事前調査が始まらないことにはなんとも」
「その事前調査とやらはいつ始まるんだ?」
「明日です」
「はい?」
「ですから、明日調査船が来て事前調査を開始すると連絡がありました。宇宙からの測定の他、一度地上に降りて直接調べたいという要望が出ていますがどうされますか?」
いやいやいや、なんでそんな急なんだよ。
っていうかそんな大事な話をなんでもっと早く言わないんだ?
「どうされますかって断る理由がないだろ。っていうか、そう言う大事なことはもっと早く教えてほしいんだが?」
「先日マスターに連絡が入っていたはずですが」
「先日?」
「正確には6日と12時間11分18秒前です」
「・・・見てない」
「だと思いましたのでこちらで返信をしています。因みに調査費用は800万ヴェイルとなっていますので、振り込んでおきますね」
「いや、たっか!」
そんなに振り込んだらまた残高が一気に目減りするじゃないか。
事前調査でそれってことは本格的な調査になったらいったいどれだけ支払う事になるんだ?
もちろん自分の夢の為にやらなきゃならないのは理解しているんだけど・・・流石にこれはきつすぎる。
「テラフォーミングなんてそんなものでしょ」
「そんなもんかはしらないが、俺にとっては大金なんだよ」
「別に安いとは言ってないわよ、相場通りって言ってるだけ。そんなに値段が気になるならそれに見合った調査か見てきたらいいじゃない。どうせあれでしょ、立ち合いも要求されてるんでしょ?」
「そうですね、具体的な開発についての打ち合わせもしたいとのことですので専門家も含めていたほうがいいでしょう」
ふむ、そう言う事なら是非とも見に行かなければ。
惑星を買ったのに見に行ったのは最初だけ、折角の機会だしやる気を出すためにももう一度見に行くとしよう。
「となるとミニマさんは必須、そんでもってしっかり調査しているかを調べるのにアリスとテネスにも来てもらう必要があると。もちろん船はソルアレス、ってことになるとローラさんにも来てもらう必要があるし力仕事となればイブさんも必要、何だ全員じゃないか」
「ちょっと、私は?」
「だから全員だって言っただろ」
「そ、ならいいけど」
「因みにナディア様は惑星に降りたご経験が?」
「調査がほとんどだけど、プライベートでも何度かあるわ」
流石お貴族様、惑星に一回ではなく何度かと言うあたりが素晴らしい。
調査とは言っているけれど、本当にそうなのかはわからないしな。
「なら感動は薄いかもしれないが、是非とも楽しんでくれ。アリス、全員に連絡を頼む」
「もう連絡済みです、各自準備を整えて六時間後に集合。八時間後に出発します」
「因みにその連絡が行ったのは?」
「昨日ですね」
「だからなんで俺に・・・いや、もういい」
見逃した俺が悪いんだから仕方がない、むしろそれをみんなに知らせてくれたアリスを褒めるべきなんだろう。
それはわかっているだが、もっとこうフォローと言うかなんというか・・・いや、今更か。
「ちょっと、主人が凹んでるわよ」
「いつもの事です」
「貴方もそれでいいの?」
「今に始まった事じゃないからな」
「それで成り立ってるならいいんだけど・・・変なの」
そもそもこいつらに普通のヒューマノイドと同じ反応を求めるのは間違っている。
アンティークヒューマノイドはヒューマノイド憲章の影響を受けない特別製、彼女達に主人を敬うとかそういう配慮は一切ない。
あるのは自分達が楽しむ事だけ、まったく困ったやつらだ。
「直ぐに慣れますよ。それでは出発に向けて準備をお願いします、もちろん水着もお忘れなく」
「事前調査なんだよな?」
「もちろんです」
「なんで水着なんだ?」
「海ですから濡れますよね?なら水着になっていれば何の問題もないのでは?長丁場に備えてデッキチェアも用意いたしましたし、日差しから体を守る大きな傘も用意しております。砂浜に立てればいい日よけになる事でしょう。後は水と軽食なども手配済み、完璧です」
「もう好きにしてくれ」
どう考えてもこれは調査じゃなくバカンス、事前調査にきた面々もさぞ驚くことだろう。
かくして二度目の惑星訪問が決定、久々の惑星は一体どうなっているのだろうか。




