306.戦闘アリーナの熱気に興奮して
先日より新作を投稿しております。
ハイファンスローライフ、転生なしチートなしの作品です。
【ようこそダンジョン商店へ~辺境から始める最弱ダンジョンライフ~ 】
こちらもどうぞよろしくお願いします
「おーっとぉ!ここで相手の強化アームパーツを破壊!すさまじい握力だぁ!これで強化していないとか本当か!?」
「情報によれば義体化は一切行われてない、事前の簡易検査でも陰性・・・ってことは自力ですね」
「強い、可愛い、なによりセクシー!最初こそ押される場面もありましたが、ここで一気に逆転だ!」
「そのまま流れるようなチョークスリーパー!羨ましすぎる!そしてここでタップ!予選第三戦は苦戦しながらもヴェイロン一味、イブ選手の勝利です!」
戦闘アリーナ予選大会。
宙賊がやっているのでもっとこうアングラ的な反則攻撃が当たりのような戦いを想像していたんだが、実際は実況が場を盛り上げる中々エキサイティングな空間になっていた。
まぁ観客は残念ながらお行儀良くない連中ばかりなので野次や煽りは当たり前、今回はもっと破れ!脱がせ!とのセクハラコールが会場中から巻き起こっていた。
だが、これもむしろ仕込みの一部。
本人たっての希望なのでこれに関しては俺のせいではない。
「きゃーー!おねえさまぁぁぁぁぁ!」
「最初はあんなに文句言ってたのに、随分と盛り上がってるじゃないか」
「お姉様の雄姿が間近で見られるんやで?これで興奮せぇへん訳ないやんか」
「それはまぁそうなんだが、あの衣装も問題ないのか?」
「むしろもっと破れてほしいぐらいや」
「・・・さよか」
自分の推しが戦っていることに大興奮のミニマさん、最初こそ衣装がセクシーすぎるだのなんだの言っていたくせに今となればもっと派手にやって欲しいというオッサン発言まで出る始末。
残念ながら大事な部分までは破れない仕様にしているのだが、肌が見えるだけでも中々にボルテージがあがるようで、この一つ前の予選から人気が急上昇。
さっきの試合もぶっちゃけ開始後秒で倒せた相手なのだが、しっかり十分まで引き延ばして衣装を何か所か破かせてからの勝利だった。
これもすべてアリスの作戦通り、なかなかのマネジメント能力だ。
「すごい・・・」
「なんだこういう試合を見るのは初めてか?」
「データでは見たことあるけど、生は見せてもらえなかったから」
「こういうのもなかなかいいもんだろ」
「うん!」
場の空気感に大興奮なのはミニマさんだけではないようで、ティリスも目を輝かせて戦いに見惚れていたようだ。
流石にホテルに一人きりと言うわけにもいかないので、女装した状態でティリスとして会場に同行してもらっている。
こっちに来てから服を追加したこともあり見た目は完全に女の子、ヴェイロン一味は俺を除きすべて女なので周りから何とも言えない目を向けられてしまうが、まぁ致し方あるまい。
「アリスさん、次の試合はいつですか?」
「次は一時間後、それに勝てばいよいよ準決勝ですね」
「このままのペースで行けば明日の本選には出られそうな感じだが・・・先方から打診は?」
「まだないわ。予選以外の参加者はもう決まってるみたいだし、やっぱり本選に出てからじゃない?」
「まぁ、それもそうだよな」
勝ってもいない相手に八百長を打診するほど切羽詰まっているわけではなさそうだが、アリスが借金取りの方に偽情報を流して返済の前倒しを画策させているんだとか。
そうなれば向こうも今以上に必死に動いてくるはず、慌てれば慌てるほどドツボに嵌るのはよくある話だ。
「買収の段取りはもう決まっているんですよね?」
「あぁ、その辺はアリスが上手くやってる。今は権利関係を調べて外堀を埋めている所だ」
「それさえ終われば母さんに会える・・・」
「そういう事だからもう少しだけ辛抱しろよ。それが終わればいよいよ俺達の反撃開始、どこから切り崩していくのか資料は貰ったよな?」
「見た」
「ここで成り上がるにはこのコロニーが何で成り立っているかを把握する必要がある。言い換えれば、それさえ掌握してしまえば他の連中なんて恐るるに足らず。暴力よりも権力、権力よりも財力がものを言うって所を見せつけてやればいい。今はアリスとテネスに丸投げしているがお前にも働いてもらうからしっかりやれよ」
「わかった!」
娼舘の買収はあくまでも序章に過ぎない、まずは娼舘を持って宙賊一味としての地位を確立させそこから順番に勢力を拡大させていく。
暴力に頼るのが一番手っ取り早いんだが、ネロの父親が殺されたように暴力は暴力で覆されてしまうので、今回はそれ以外の角度から攻めていくつもりだ。
その為に必要なのはズバリ財力、今回の戦闘アリーナを利用して軍資金を今回しっかりと稼がせてもらおうじゃないか。
「試合終了!息詰まる接戦の末、セクシーレオタードことヴェイロン一味のイブ選手が本選への出場権を獲得しました!明日はいよいよ本選開始、皆様の熱い掛け金をお待ちしてます!」
そんなこんなでイブさんが無事に予選を突破、なんとも面白い二つ名を貰ってしまったが本人は特に気にしていないようだ。
会場を出てその足で控室前へ移動、着替えを終えて中から出てくるイブさんを待っていると見知らぬ小太りの男が近づいて来た。
それに気づきティリスがローラさんの後ろにさっと隠れる、どうやら横にいたテネスでは背が小さすぎたらしい。
「これはこれはヴェイロン一味の皆さんじゃありませんか、予選通過おめでとうございます」
「・・・アンタは?」
「私はこの街で商売をしていますドンブルと申します。聞けばうちのリディアを気に入っていただけたとか、誠にありがとうございます」
「あぁ、あの店のオーナーか。あれはいい女だったからな、当然だ」
「しかも二週間も独占されるなんて羽振りがいいようで、うらやましい限りです。先ほどの選手も貴方が?」
「いや、あれは内のクルーだ」
「それは失礼しました。実は私も選手を一人出していましてね、もしかすると当たるかもしれません、その時は是非お願いします」
それだけ言うと、アリス達を順番に一瞥してから男は去っていった。
うーむ、まさか直接来るとは思っていなかったが・・・むしろ好都合だ。
「アリス」
「インプラントデータのスキャンを完了、本人で間違いないようです」
「わざわざ挨拶に来るとは、よっぽどあの戦いに興奮したのか?」
「もしくはイブさんの事を気に入ってしまって、購入できるのならと思って来たのかもしれませんね」
「なるほどここだとそういうパターンもあるのか」
「なんにせよインプラントデータと顔写真を確保できたのは大きいですね、これをネタにゆすりをかけてみようと思います」
「具体的には?」
「お金もないのに他の女を買おうとしている、もしくは買収しようとしているといえば向こうもあわてることでしょう。もし八百長が明るみに出れば賞金を取りっぱぐれてしまうわけですから、そうならないうちに回収しようと動くはずです。とはいえ、優勝するまでまとまったお金は入らないわけですからのらりくらりと躱すか、もしくは掛け金を増やして利息だけでも払うか。なんにせよお金に困れば困るほどこっちの提案に喰いつきやすくなりますから・・・、もはや娼舘は手に入ったも同然ですね」
前々から思っていたが、悪だくみするときほど生き生きとした顔をするよなぁこの骨董品は。
「お待たせいたしました・・・って、どうかしましたか?」
「いや、なんでもない。ひとまず予選通過おめでとう、本選での活躍を祈願してパーっと騒ぎに行こうじゃないか」
「いいんですか?」
「前祝みたいなものだ。そうだよな、アリス」
「その通りです、イブ様がいれば優勝は間違いなし。良い店を予約していますので早速移動いたしましょう、もちろんマスターのおごりですからたっぷり食べてくださいね」
なんだか聞き捨てならない言葉が聞こえた気もするが、まぁいいだろう。
これは大量の賭け金を手に入れるための前祝い、今日のこのギリギリの戦いが果たしてどれだけの金を生み出すのか、明日が待ち遠しい限りだ。




