304.彼女への助力を約束して
本日より新作を投稿しております。
ハイファンスローライフ、転生なしチートなしの作品です。
【ようこそダンジョン商店へ~辺境から始める最弱ダンジョンライフ~ 】
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「改めまして、私達はヴェイロン一味。貴方の息子であるネロさんを匿っています」
「ネロを!?一体どういうことなの!?」
いや、アリスさんいきなりそんな流れで行くと驚くに決まっているじゃないか。
相手はネロ少年の母親なんだから、もっとこう手心というかだな・・・。
「あー、いきなりこんなこと言われても驚くと思うが安心してくれ、まずは無事だ。アンタが仕込んだスキャン防止の箱に入った宙賊は残念ながら傭兵の襲撃に遭ってしまったようだが、俺達がその箱を回収して無事に救出している。コロニーで何があったのかについても理解しているし、カイロスからもくれぐれもよろしく頼むと言付かっている。今まで不安だったと思うがもう安心してもいいぞ」
「まったく、言い方ってもんがあるでしょうが言い方ってもんが。因みにこの部屋に仕込まれている盗聴器やカメラは私達がハッキングして制圧しているから気にしなくても大丈夫よ。今頃とんでもない映像が流れていると思うけど、気にしないで」
「いや、気にするだろ」
「良いじゃない別に、減るもんじゃないんだから」
いや、減るとか減らないとかそういう話じゃなくてだなぁ。
「・・・貴方がネロを?」
「俺はトウマ=ヴェイロン。カイロスのまぁ知り合いみたいなもんだ」
「確かにヴェイロンは彼の古い名前だけど、信じていいのね?」
「このコインに誓ってもいい。ともかく俺達は彼を救ったうえで事情を聴き、更にカイロスからくれぐれもよくしてやってくれと言われている。この意味は分かるか?」
「・・・あの子を宙賊にするつもりなのね」
「残念ながらそういう事だ。余所者の俺達がここを牛耳っても意味がない、トップに座るのはそれにふさわしい人物だけ、ってのがカイロスの要望だ。そして俺達はその為の手伝いをする約束になっている。その約束を守るためにもまずは正確な情報をくれ、何が起きて今どういう状況に置かれているのか。それを知ったうえで今後について話し合いたい」
一応情報は仕入れているけれど、具体的に何がトリガーになったのかとか彼女が今どういう理由でここにいるのか等知っておくべきことは沢山ある。
さっきも言ったように俺達が勝手にコロニーを支配することはできない、他の宙賊を納得させる方法でなければ結果としてまた反乱を起こされて命を失う事になるだろう。
カイロスはそうならないようによろしく頼むと言ってきたわけだ、まったくガンスミスに会いに来ただけだってのにこまったもんだなぁ。
その後、ゆっくりと話し始めたネロの母親から事の顛末を含めて裏事情などを教えてもらった。
彼女がここに来てからの話は聞くに堪えなかったが・・・まぁ、命があるだけましだろう。
「以上が事の次第です」
「お疲れ様でした」
最後まで話し終わったところで、アリスがそっと水を差し出すと零れるのも気にせず一気に飲み干してしまった。
溢れた水が喉元を通り過ぎ、バスローブから見える谷間に消えていく。
一体どれだけの苦汁を舐めさせられたのだろうか。
それをこの人は息子の為と必死に受け止めてきた、だがそれも今日までの話だ。
「話は理解した。テネス、そっちはどうだ?」
「今の話に矛盾はないわ。奴らの通信履歴にも一致、ほんとクソみたいな連中ね。これだから宙賊は嫌いなのよ」
「それはみんな同じだっての。でもここでは皆宙賊、なんならネロだって宙賊だ」
「言い換えるわ、クソみたいなやつが嫌いなの」
「あまり変わってないがまぁいいか。アリス、今後についてだが・・・ぶっちゃけいくらあればここを買える?」
何をするにせよリディアさんを奴らの手から解放することが先決だ。
ここを買ってしまえばネロは母親と再会できるし、この人も不要な客を取る必要が無くなる。
最悪俺のお気に入りってことにしてしまえば他の客を取らなくても怪しまれる心配はないだろう。
アリスがどういう動画を流しているかは不明だが・・・まぁ、そう言う言い訳に使える内容なんだろう。
知らんけど。
それに今ならネロはいなくなったことになっているし、奴らも自分達が一番だと思い込んでいる。
グラントの件はあるけれども、少なくともカイロスさんを心酔している彼がいきなり裏切ってくることは無いだろう。
問題はどうやってここを買うか、その理由付けをどうするかだ。
「え、ここを買うの?」
「アンタだけ買ったところで何の意味もない。俺達はここの買収を足掛かりに勢力を拡大し、力ではなく権力でコロニーを支配する。そうすれば少なくとも今回のようなことが近々で起きることは無いだろう」
「結局起きないわけじゃないのね」
「そりゃそうだ。カイロスさんも言ってただろ?ここは力こそ全て、仕えるにふさわしくないっていうのなら今回みたいに下から食われるだけだ。そうなりたくないなら抑え込めるだけの力を持てってわけだな。それが暴力なのか権力なのかは正直どっちでもいい」
せめてネロが大きくなるまでは維持できれば十分、流石のカイロスもそこまでは面倒見てくれないだろうし自分の力で何とかしろってことだ。
「・・・お待たせしました。どうやらこの娼舘を管理しているのはどこのファミリーにも属していない商人のようですね。そのせいで誰も圧力をかけられなかった、ここに逃げ込んだのはその為ですねリディア様」
「それがせめてもの生きる道でしたから。もちろん彼らが客として私を買ってはいきましたけど、商品である限り殺すことはできません」
「良い考えだったと思います。そのおかげでこうして私達が買うことが出来るわけですから」
「で、具体的にいくらだ?」
「調べた所その商人には2000万ヴェイル程の借金があるようですね。そして今回の戦闘アリーナ決勝で八百長をして一気に返済するつもりのようです。対戦相手は・・・なるほどなるほど、そう来ましたか」
アリスがなんとも悪い顔をしているが、十中八九対戦相手はイブさんだろう。
まさかこうなることを見越してこいつが初めから仕込んだとかじゃないよな?
「イブさんは何回戦目で当たるんだ?」
「普通に行けば準決勝ですね」
「ってことは相手は決勝に行く前提だから負けるとわかっているイブさんの倍率はかなり高いはず。そこで大儲けしたいところだが・・・間違いなく向こうから八百長のお誘いが来るだろうな」
「その可能性は高いかと」
「ならいっそのことこっちから高額の賭けを吹っ掛けてみたら?うちが負けたら3000万、そのかわりこっちが買ったら娼舘をよこせとかさ」
確かにそれは面白いアイデアだが、決勝での八百長が決まっている以上乗ってくることは無いだろう。
とりあえず金だけ出して負けてくれって言われるのが関の山だ。
「そんな具体的なことをしたら周りに目を付けられるだろ?俺達は何も知らずに大会にエントリーして、八百長を仕掛けられたのを華麗にスルー。もしくは受けたフリをして裏切り、向こうが大損している所に娼舘の購入を持ち掛ける・・・ってのはどうだ?」
「悪くはありませんが弱いですね」
「じゃあどうする?」
「今のままでは正攻法ではありませんのでどこかで足が付きます。やるからには一切足がつかない正攻法で買ってこそ、というわけでこんな方法はどうでしょうか」
そう言ってアリスが提示したやり方は、なんとも宙賊らしいえげつないやり方だった。




