300.コロニーに潜入して
「こちらソルアレスとノクティルカ、ヴァイス・コンコースコントロール応答願います」
「こちらヴァイス・コンコースコントロール、なんだ、どこの若造が何しにきやがった」
コロニー到着後、いつものようにアリスが出した要請に返って来たのは何ともドスの聞いた男の声だった。
いつも女性なのである意味新鮮だが、まぁ宙賊コロニーらしい出迎えだな。
「若造で悪かったな。俺はトウマ=ヴェイロン、しばらく滞在するから場所を開けてくれ」
「ったく、そんなデカい船置くところねぇよ。おとなしくと外で寝てな・・・って待てよ、ヴェイロンとかいったか?」
「あぁ」
「お前、カイロスの身内か?」
「まぁそんな所だ」
凄いな、この名前だけで明らかに反応が違う。
さっきまで声のみのやり取りだったのに急に向こうから映像が送られてきたので、アリスに合図をしてメインモニターに表示した。
映し出されたのはどう見ても堅気に見えない管制官、一応制服は着ているようだけど明らかにそっちの人間だ。
「へぇ、どんな野郎かと思ったら随分と綺麗どころをそろえてるじゃねぇか。トウマとか言ったか、さっきの名前の重さがわかってるならお前も持ってるんだろ?」
「あぁ」
「じゃあ見せてみろ、それがわからないとは言わせねぇからな」
明らかに殺意のこもった目で俺を睨みつけてくる管制官、どうやらここではカイロスの名前を遊び半分で使ってはいけないルールがあるらしい。
仕方なくポケットからコインを取り出し、メインモニターに向かって突き出してやる。
「見えるか?」
「・・・まちがいねぇ、あの人のコインだ」
「そりゃそうだ、本人からもらったんだから」
「その名前にそのコイン、あの人とどんな関係があるんだ?」
「まぁ色々とな。で、これを見てまだ外で寝ろっていうのか?」
「そんなわけないだろ。だがそのサイズの船となると普通のハンガーは使えねぇ、古い所で悪いが裏の搬入用ハンガーを使ってくれ、そこなら二隻並べても問題ない」
「あまり派手なのは好きじゃないんだ、礼を言う」
「へっ、そんな金にならねぇもんはいらねぇよ。だが気を付けろ、今このコロニーは燃料がぶちまけられた状態だ、いくらあの人の関係者でも油断すると一発でお陀仏だからな」
そう忠告して一方的に通信が切れた。
代わりにヴァイス・コンコースの裏にあるハンガーへのルートが送られてくる。
「とりあえずこの名前がそれなりに使えるってのはよくわかった」
「さすがカイロス様と言う所でしょうか」
「でもそれをもってしてもあまり歓迎はしてもらえなさそうね」
「そりゃそうだ、向こうからすれば元上司の関係者が来るようなもんだからなぁ。今回の一件を咎めに来たのかと邪推する可能性が非常に高い。もちろんいずれはそうするつもりではあるが、いきなりドンパチするわけにもいかないからとりあえず様子見だな」
「できますか?」
「まぁ向こうの出方次第ではあるけどな。なんにせよ俺達は宙賊ヴェイロン一味だ、宙賊は舐められたら最後だから向こうの出方次第では派手に行くぞ」
「なによ、ノリノリじゃない」
出来ればそういうのは避けたいんだが、ノリノリにしておかないとメンタルがついてこないのでキャラづくりは重要だ。
「むしろそのぐらいでないと困ります。と言うわけでもうすぐコロニーへ上陸、相手は宙賊ばかりですから皆さん気を抜かないようにお願い致します。特にルナ様、準備は抜かりないようにお願いしますね」
「本当にこんな格好で行かないといけないのか?」
「先に断っておくが俺の趣味じゃないからな。本来であれば自分は宇宙に流されて戻ってこないはず、もし戻ってきたのがバレたら間違いなく殺されるんだから、母親の為にも我慢してくれ」
全員の視線を一身に浴びてなんとも言えない顔をするネロ少年・・・いや、ここではティリスだったか。
どこで彼女用の服を調達したのかは知らないが、可愛らしい水色のワンピースを身に纏っている。
元々顔立ちは中性だし、声変わりしていないのでハスキーな女の子と言う感じにも聞こえる。
どこからどう見ても女の子、本人は不服そうだがこれも敵の目を欺くためだ。
「よくお似合いですよ」
「そうそう、まるで本物の女の子みたい。これなら十分騙せるわよ」
「ったく、どこでこんなのを用意したんだよ」
「こんなこともあろうかと準備しておくのが一流ヒューマノイドという物です」
「そんなの初耳なんだが?」
「今そう決めました」
なんだかよくわからないがとりあえず潜入準備は整った、ローラさん達の乗るノクティルカにも合図を出してぐるっとコロニーを回って裏の搬入用ハンガーへと移動する。
表からだと色々と人目につくのでむしろこちらの方が好都合・・・のはずだったんだが、どうやら大歓迎してくれるようでハンガーには無数の宙賊が集まっていた。
「これはまた大歓迎だな」
「それだけカイロス様の影響力が強いという事でしょう」
「どうするの?」
「どうするもこうするも俺達はヴェイロン一味、あの人の名前に恥じないように行くだけだ」
「本当に大丈夫なんだよね?」
「大丈夫だって、訳もなくいきなり襲ってくることは無いだろうしなによりカイロスを敵には回しいはずだ。あの人がどこにいるかはわからないだろうし、もうすぐ来るっていう体で行けばどうにかなる・・・はずだ」
「締まらないわねぇ」
仕方ないだろ、おれだってこんなことになっているとは思わなかったんだから。
とはいえいつまでも引きこもっていては舐められるだけ、成り上がりたいのならこんなところでビビっている場合じゃない。
ハッチを開けて外に出ると全員の鋭い目線が俺に突き刺さる。
向こうも俺の存在を把握しかねているはず、最初からいかにプレッシャーをかけられるかが重要だ。
俺が降りてしばらくしてからノクティルカからイブさんを先頭に三人が、それから少し遅れてアリスとテネスに挟まれるようにティリスが姿を現すと、さっきまで俺を睨みつけていた宙賊たちがイブさん達の方を見て口笛を吹いた。
全身を舐めまわすような奴らの目線を感じているはずなのに、ミニマさんを含めた全員が臆することなく俺のそばに控えている。
ここまで色々あっただけにこれぐらいじゃビビることはないらしい。
「おいおいわざと辺鄙な所に来たはずなのに随分と歓迎してくれるじゃないか、事前連絡はしてなかったと思うんだが?」
「カイロスのアニキの身内となれば歓迎しないわけにはいかなくてね。お前がリーダーか」
「おいおい、人に名前を聞く前は自分から名乗れって母ちゃんに教えてもらわなかったのか?」
「なに!?」
「黙ってろ!」
昔見たホロムービーに出てきたセリフ、一度は言ってみたかったんだが中々いいじゃないか。
部下らしき男が俺の言葉に怒りをあらわにするも、別の男がそれを諫める。
そして後ろの女性陣に目を向けることなく俺と上から下までじっくりと見てからゆっくりと口を開いた。
「グラントだ」
「トウマ=ヴェイロンだ」
「兄貴の古い名前を使わせてもらえるなんざ随分と気に入られているようだが、あの人にそんな弟分がいるっていう話は聞いたことない。どういうことか俺達にわかるようしっかりと説明してくれるんだよな?」
そう言うや否や、周りの男たちが一斉に銃を抜き俺達へとむけたのだった。




