295.変わったものを発見して
「ソルアレス前方より合計五機!」
「二機はもらってあげる、後は任せたわよテネスちゃん!」
「なんだったら全部貰ってもいいんだけど?」
「お姉さんにもちょっとは回してくれると嬉しいなぁ」
正面から襲い来る宙賊機を相手に冗談を言うローラさんとテネス、まぁ撃墜するのはイブさんでも撃墜しやすいように動くのがローラさんの凄い所だ。
テネスはテネブリスを使って三機を迎撃するようだけど、本人曰く物足りないらしい。
「追加で後方より四隻接近、こちらは私が対処します。アインとツヴァイで迎撃、ドライは周囲を警戒、マスター回収漏れが増えていますから急いでください」
「・・・ういっす」
「ノクティルカまで持っていく必要はありません、一か所に物資を集めておいてくれればあとで何とかします」
前後から襲いくる無数の宙賊達、突然やってきた獲物に周辺で待機していた宙賊達はこぞって集まってきたが、結果はご覧の通りだ。
殆どが使い道のない機体ばかりだけど、稀にレアメタルなんかを積み込んでいたりするのでそれを回収するのが俺の役目。
そこらじゅうでレーザーが飛び交う中、一人黙々と大型ドローンを操って壊れた機体から物資を回収する。
まれに人間だったものが出てくるけれど、最近は見慣れてしまったのでそこまでメンタルに来ることは無くなった。
奴らは宙賊、容赦する必要はない。
そんなことを言えばカイロスさんに怒られるかもしれないが、あの人の事だから『まともに戦えないやつはいらない』とか言って自ら撃ち落としそうなんだよなぁ。
なんにせよ、獲物がたくさんいるのはありがたい話。
奴らも仲間が何機もやられているのにまだまだ俺たちと遊ぶつもりらしい、いや、もしかすると仇討ちの為に躍起になっているだけかもしれないが・・・まぁ全部撃ち落とせばそれで終わり。
なんにせよ向こうから来てくれるのならば迎えてやるのがマナーというもの、血に飢えた獣・・・じゃなかったうちのクルー達は嬉々として獲物へと噛みついていった。
「なんだこいつら!」
「来るな、こっちに来るな!」
「このドローン!レーダーに映らな・・・」
「くそ!二番機がやられた!あいつらぶっ殺してやる!」
ソルアレスのコックピットに響き渡る阿鼻叫喚と怒号、それを聞きながらも特に表情ひとつ変えない我らがクルー。
宇宙に出た頃は色々と考えていた俺も、今では雑音にしか感じなくなっていた。
宙賊という選択肢を選んだ時点で狩るか狩られるかの世界で生きている、それが嫌なら宙賊になんてならなければいいだけの話だ。
一機また一機と撃墜されていく中、そろそろ俺たちのヤバさに気がついた連中が逃げ出すはずだが、うちのアリスがそれを許すはずがない。
「広域ジャマー展開、ロックのかかっていないシステムへ阻害プログラムを流し込みます」
「広域ジャマー?阻害プログラム?」
「そのまんまの意味よ。広範囲にジャミングをかけつつ阻害のプログラムを一斉に流し込むの。これによって奴らは通信もできないし、一時的にシステムが誤認して操縦することもできなくなるわ。効果は短いけど私たちなら問題ないでしょ?」
「・・・エグいもん作るなぁ」
「この前のウイルスを改造してこんな馬鹿げたプログラム作るなんて、頭おかしいんじゃないかしら」
違法AIがアンティークヒューマノイドに送る最大の褒め言葉、この前のウイルス騒動の後遺跡から手に入れた新たな玩具を使ってアリスは更なる高みへと覚醒したようだ。
今の彼女ならマジで星間ネットワークをクラッシュさせることができる、ウイルスに感染して成長するとかどんなバグだよ。
「動け、動けよ!」
「なんだこれ、コントロールが効かない!」
「こっちにくるな!うわぁぁぁぁ!」
「うーん、阿鼻叫喚」
「効果時間は短いはずですが、まさかここまで効果があるとは」
「まぁ撃ち落とすのも自滅するのも同じ事、ちゃんと物資は回収してやるから大人しく死んでくれ」
行動を阻害するはずが操縦が出来なくなり味方に突っ込んでいく機体がいくも出てきた。
どうもお互いに吸い寄せ合うように突っ込んでいくんだが・・・まぁいいか。
「戦闘終了、お疲れ様でした」
「さぁここからがアンタの出番よ、バシバシ回収しちゃってよね」
「へいへい。まったく、キャプテン遣いが荒い奴らだ」
一時間ほどで戦闘は終了、メインモニターの端に表示された撃墜数は30を超え、討伐報酬は現在計算中。
まさかこれほどの宙賊が隠れているとは思わなかったが、バカンス目当ての金持ちを狙うとかそんなつもりだったんだろうなぁ。
戦闘が終わればとは俺の仕事、アリス達にも手伝ってもらいながら大型ドローンを駆使して宙賊たちの物資を回収していく。
そのうちの何機かは撃墜せずに鹵獲して売り払うつもりらしく、目的地まで曳航していくつもりらしい。
これから向かうのは宙賊たちのパラダイス、そこではこういう機体が案外人気なんだとか。
「トウマさん、ちょっといいですか?」
「ん?」
「ハンガー奥に箱があるんですけど、なかなか開かなくて」
「了解、工具をもってそっちに行くからちょっと待っててくれ」
ドローンを操縦しながらノクティルカに物資を搬入していると、鹵獲した船の中を調査していたイブさんから通信が入った。
どうやら何かを発見したらしい。
「金属製の箱ですか・・・スキャンした時には何の反応もなかったはずなんですが」
「その時は分からなくても実際あるんだから仕方がない、ちょっと行ってくる」
「罠の可能性もあるから気を付けなさいよ」
「りょ~かい」
流石に自分の船の中に罠は仕掛けないだろうと思いながらも、アリスのスキャンに引っかからなかったのは少々気になるところだ。
とりあえず箱を破壊できそうな工具をいくつか見繕って揚陸チューブを通り抜け鹵獲した船へと移動する。
相変わらずの汚い船内、宙賊の遺体はイブさんが放出してくれたようでそれらしいものは見つからなかった。
おおかた酸素を抜いて窒息死させたんだろう。
「イブさん」
「トウマさん、こっちです」
「とりあえず工具は持ってきたが・・・なんだこれ」
「わかりません。簡易スキャンをしても全く反応が無いんです」
「壊れているとか?」
「他の物では作動しているのでそれはないと思います」
ローラさんの前に置かれていたのはスキャンに反応しない銀色の箱。
かなりメタリックな感じだが、普段見かけない素材でできているようだ。
とりあえず持ち込んだ工具を箱の端に当ててテコの原理で動かしてみるも失敗、だが端の方にひっかかりそうな場所があったのでそこに工具をひっかけて強引に隙間を開ける。
「よし、外れた!」
隙間を強引に引っ張ると、バキ!と言う音がして鍵のようなものが壊れたのを感じた。
お互いに頷きあってから両端をしっかりと持ってゆっくりと箱のふたを動かすと、中から想像していなかったものが姿を現した。
おかしい、こんなものが出てくるはずではなかったんだが、どうしてこんなことになったんだ?
「どうですか、何かわかりましたか?」
「わかったというかなんというか・・・」
「なんですかその反応は」
「とりあえず見に来てくれ、その方が早い」
俺達だけではどうにもならない案件、とりあえず心配そうに連絡をしてきたアリスを呼び出すことにしたのだった。




