289.コロニー運営に要望を突きつけて
「やれやれ、アリスのせいでひどい目に合った」
マグマを鑑賞するべく惑星に降りるエレベーターに乗っていた俺達だったが、途中でまさかのトラブルに見舞われてしまった。
トラブルと言っても電気系統の故障で一時的に停止するという程度ではあったが、そのトラブルの影響で温度計の表示も壊れてしまい外部温度の表示がどんどん上昇するという状態に。
心なしか内部も暑くなってきたことでミニマさんがパニックになってしまい、それはもう大変なことになっていた。
幸いにもすぐにトラブルは復旧、というかアリスが電気系統にハッキングをかけて強引に復旧させたことで再び動き出したものの、状況が状況という事ですぐにエレベーターはコロニーへと引き返すことに。
残念ながらツアーは中止となってしまったわけだが・・・どうしてもアリスが仕込んだんじゃないかと勘繰ってしまうわけで。
「ですから決して私のせいではありませんと何度も申し上げております」
「とはいえ過去に何度か止まってるのを黙っていただろ?」
「それは、まぁ」
「見てみろ、ミニマさんなんて怯えて小動物みたいになってるじゃないか。次からはそういう前情報はしっかり伝えるように、わかったか?」
「以後気を付けます」
一応殊勝な顔はしているけれども、絶対そう思ってないだろうなと言うのはなんとなくわかる。
コイツはそういうヒューマノイドだすべて丸く収まればよし、そんな風に思ってるんだろう。
幸いにもイブさんがしっかりとフォローしてくれたことで一応は落ち着きを取り戻している。
なんにせよ無事にコロニーへと戻った俺達はコロニー運営の用意した控室で待機中、ツアーが中止になった補填等の諸々の説明をする予定なんだとか。
まずは責任者が詫びに来いよなと思いながらも、とりあえずまつとしよう。
「失礼致します」
とか思っていたら扉が開き、スーツ姿の男性が部屋に入って来た。
年は俺と同じぐらいだろう随分と疲れた顔をしている。
「この度はご迷惑をおかけし誠に申し訳ございませんでした。本件の今後についてご説明させていただきます、どうぞおかけください」
「随分と遅かったな」
「本当はすぐにご説明に上がればよかったのですが、何分状況が状況な物ですからしっかりとした説明をするべく情報を収集しておりました」
「まぁいい、とりあえず話を進めてくれ」
今文句を言ったところで頭を下げるしかなさそうなので、とりあえず終わるまで待つとしよう。
ぺこぺこと頭を下げるその人の話をとりあえず最後まで聞いていたわけだが・・・まぁ、なんていうかこのコロニーを象徴するような内容だったなぁ。
「・・・と言う所が、今回の補償内容となっております。ご質問はございますでしょうか」
「あー、それなんだが・・・」
「質問は二点ございます。一つは今回の件についてコロニー運営はどうお考えなのでしょうか。二つ目に、今回の停止不具合については以前にも発生していたはずですが公表されていませんね。事態を隠蔽しつつ新規の顧客を得ようというのは聊か問題があると思いますが、その点についてはどうお考えですか?」
「え!?あ、それは・・・」
「まずは一つずつお願いします。そちら様はどうお考えなのでしょうか」
こんなに頼りない担当を持ってきたことを後悔させちゃると言わんばかりのマシンガントーク、なんだか可哀そうになってきてしまい文句を言う気がすっかりどこかにいってしまった。
この感じだとアリスが全部やってくれそうだし、しばらくは様子を見よう。
「この件につきましては非常に重く受け止めております。場合によっては大惨事になっていた可能性もあるわけですので、ツアーの即時中止と皆様への補償を検討中です」
「具体的にはどのような補償を?」
「ひとまず地表付近まではご覧いただけたわけですし、ツアー代金の三割程をお返ししようかと・・・」
「話になりませんね。あの場で即時復旧したからよかったものの、そうでなければ人の命も失われていたわけです。しかもその可能性を隠蔽していた、にも拘らず三割しか返金しないというのは非常に問題です。わかりました、この件に関してはしかるべき場所へと通報させていただきます」
「まま、待ってください!あくまでも検討段階ですのでこれが決定と言うわけではありません!この件は改めて報告させていただきたく、ひとまずご報告させていただいた次第です。どうか、どうか穏便に・・・」
「穏便に?人の命が危険にさらされたというのに随分と悠長なことを言っていますね。すぐに説明にも来ず、来たところで曖昧な返答。これがコロニー運営の仕事なのでしょうか」
「そ、そういわれましても私には何とも・・・」
アリスに詰められ顔面蒼白と言う感じの男、状況が状況でなければ同情してやるところだが今回は被害者なので容赦するつもりはない。
とはいえこの人を詰めた所で何の進展もなさそうなので、さっさと次のフェーズへ移行しよう。
「とりあえずそっちが満足のいく補償をしないのならば俺達は出るところに出る用意がある、これ以上の話が聞けないのならさっさとうえに話を通してきてくれ」
「か、畏まりました!」
「ってことだからさっさと帰ろう。アリス、一応こっちの要望と隠蔽していた事実をまとめて先方に送っておいてくれ。要望はそうだな・・・搾れるだけ搾り取っていいぞ」
「復帰早々の大役確かに仰せつかりました」
まったく、とんだ復帰祝いになってしまったが俺達らしいと言えば俺達らしいか。
ひと先ずその日は宿に戻って一息つき、迎えた翌日。
運営が改めて説明をしたいとのことで外に出ると、見覚えのある黒塗りのエアカーが店の前に停まっていた。
「で、やっぱりアンタか」
「それはこっちのセリフだ」
エアカーから出てきたのは例の初老の男、地上げ屋が何をしに来たのかと思いながらも一応運営関係者なわけだし、面識があるからという理由か何かで大役を任されたんだろう。
本人からすれば苦行以外の何ものでもない、その点については同情してしまうなぁ。
「先に言うが別に俺達が何かしたわけじゃないからな。今回も俺達は被害者だ」
「も、というのはどうかと思うが・・・ひとまず一緒に来てくれ」
「と言いながら人気のない所に連れていくんじゃないだろうな」
「軍関係者にそんなバカな事できるわけがないだろう。まったく、調べればとんでもない人物の様だなお前は」
「別に偉いわけでもなんでもない、調べ間違いじゃないか」
「好きに言ってろ」
何を調べたのかはわからないけれど、とりあえず行かないと話にならないのでエアカーに乗り込み移動を開始。
今回の同行者はアリスとイブさん、それとローラさんの三人。
しかしなんでローラさんが?
「アリスさんから一緒に来てほしいとのことでしたので」
「そうなのか?」
「今回の要望には仕事の部分も含めて色々とありますのでお呼びしました」
「まぁいいけどさぁ」
何かあった時にイブさんがいればとりあえず大丈夫だろうけど、ローラさんも一緒となるとイブさん一人で二人を守らなければならないだけになんとも複雑な気分だ。
流石に変なことはしてこないだろうけど、相手はあの運営だからなぁ。
なんてことを考えているうちにエアカーはコロニー運営の入る大きなビルへと到着。
敵地のど真ん中にやってきたわけだが・・・
果たしてアリスの本気の要請にどんな回答を用意しているのだろうか。




