275.年甲斐もなくはしゃいでいまって
「「「「おおぉぉぉぉ~~~~~」」」」
青い空。
白い砂浜。
そしてキラキラと輝く水面。
寄せては返す波の音がドドンドドンと聞こえてくる。
まるで前に見た惑星の海をほうふつとさせる光景に思わず感嘆の声が漏れてしまった。
それは他の面々も同じようで皆口を開けてその光景に見惚れている。
ここはテルマ・オルビスタ内にあるプール専用コロニー。
予約者専用となっており、専用の小型船でなければ入ることが出来ない特別な場所。
因みに使用するのに一人5万ヴェイルも取るのだから驚きだ。
最初に聞いたときはばかげていると思ってしまったが、このクオリティを維持することを考えると納得するしかない。
「すごい・・・」
「ケイトさんは初めてなのか?」
「このコロニーにきて長いけど、わざわざ5万も払って入りに来ることなんてないもの」
「まぁそれもそうか。リリットさんは?」
「私も初めてです!すごい、こんなにたくさんの水があるなんて・・・」
まぁ俺達が初めての客なんだから当然と言えば当然だが、そうだよな普通に生活していたらこんなに大量の水を見る事なんてないもんなぁ。
一応運動用のプールとかはあったけれども、こういう遊び用ではなく非常用の水を兼ねての物だから派手な感じは一切ない。
それこそこんな風に波を起こす必要もないだろう。
だがここは完全に遊び一択、どうやら今日は人が少ないのか遊んでいる人もまばらなようだ。
「アリス、俺達の場所は?」
「正面右にある黄色いパラソルが我々の場所です」
「右・・・っと、あれだな」
「それじゃあ着替えて集合ですね」
「だな。着替えは時間かかるだろうからゆっくり来てくれ」
「皆さま今日に向けてとっておきを準備しておりますので、どうぞご期待ください」
いやいや、別に俺に見せるために買ってるんじゃないんだからわざわざそんなこと言わなくてもいいと思うんだが?
俺様に買ってるのはアリスぐらいなもので他の面々は好きな物を選んでいるはず、まじまじと見るわけにもいかないし程よく楽しませてもらえれば十分だ。
そんなわけで一度女性陣と別れて更衣室で着替えを済ませる。
宇宙に出た頃は年相応に腹が出ていたけれども、イブさんに鍛えてもらうようになってから腹回りが少しスッキリしてきた気がする。
とはいえ出ているのは出ているので、少し離れた所で着替えているイケメン細マッチョと比べると残念過ぎる体だ。
まぁ別にいいんだけどさ。
サクッと着替えてパラソルの下へと移動、デッキチェアが人数分と荷物置き用の棚が設置してある。
うーむまさに至れり尽くせり、そりゃ五万ヴェイルも払ってたら当然だけどそれでもこのプライベート感は中々だ。
目の前をビキニ姿の若いお姉ちゃんが通り過ぎていく。
昔ならついつい目で追ってしまっただろうけど、この年になるとあまりの年下よりも同い年ぐらいの女性のほうが安心するんだよなぁ。
もしくは年上でも可、なんて柄にもないことを考えてしまった。
自分の人生なんだからこれからは好きなように生きると決めて宇宙に出てきたけれども、流石に結婚はしばらく遠慮したいところだ。
「お待たせしました」
「お?」
「どうですか?これでマスターもメロメロ・・・って、何ですかその顔は」
デッキチェアに転がりながら人口太陽の日差しを浴びていると、アリスの声が耳に飛び込んできた。
ゆっくりと体を起こした先にいたのはかなり小さな布面積の白ビキニを見につけたヒューマノイド。
こいつ、マジでやりやがった。
「お前なぁ、流石にそれはやりすぎだろ」
「そうですか?前に見てもらった時よりも布面積は増やしたつもりですが」
「増えてるうちに入らねぇよ」
「良いじゃありませんか、私は所詮ヒューマノイド。人間のそれとほぼ同じようには作られていますが生憎とそっちの機能は停止中ですから。その分目で楽しんでいただけるように頑張りました」
「因みに予備は?」
「ございますがもう少し布面積が少なくなります」
「ったく、とりあえずこれを着とけ」
俺達の前を通過した若い女性が露骨に軽蔑した目を俺に向けてくる。
違うって、俺のチョイスじゃないんだって。
そんな誤解をこれ以上生まない為にも自分が今着ていた真っ白いTシャツをアリスの頭からかぶせると、これはこれでなんだかヤバイ感じになってしまった。
丈が長すぎてロンTみたいになってしまい、しかも下の水着が白なのでまるで全裸にTシャツを着ているだけのような感じになっている。
これ、水の中に入ると確実にアウトだよな。
「マスターの性癖を押し付けられた感じになっていますが如何でしょう」
「押し付けてない、偶然だ」
「そうですか?前に見ていたのがこんな奴だったと思いますが」
「気のせいだろ」
「確かタイトルは、着衣で・・・」
「ちょっと黙ってろ!」
慌ててアリスの口を押えていると目の前に人影が現れた。
顔を上げるとそこにいたのはどれも美しい花ばかり。
うん、こういうので良いんだよこういうので。
「お待たせしました」
「どうですか、トウマさん」
「あぁ、みんなよく似合ってる」
「まったく、もっと気の利いた言葉言えないの?ここがいいとか、こういうのが似合ってるとか、もっと言いようがあるでしょ。それを全員一緒くたにしちゃって、こういう所が残念って言われるのよ」
俺の返答に不満げなテネスだが、マジでみんなに合っているんだから仕方ないじゃないか。
前に一度見せてもらっていたのでなんとなく想像はできるけれども、いざ本人が身に着けるとやはりグッとくるものがあるわけで。
イブさんは例の鮮やかな花柄の競泳用水着、ミニマさんは似た色のタンクトップビキニでスポーティーさを合わせているようだ。
ローラさんは紺の紐つきビキニとパレオの組み合わせ。
パレオの端がスリットになっていて切れ目から見える足が中々にセクシーな感じ、まぁ胸元がかなりすごいので思わず目を背けてしまうぐらいだ。
テネスはあの紐・・・ではなく、無難なワンピース。
「水着ってちょっと恥ずかしいですね」
「この年になって着るなんて思わなかったけど、でも案外悪くないかも」
最後にやってきたのは今日のメインであるリリットさんとケイトさん。
リリットさんはテネスと同じようなワンピースながら、腰の部分にフリルがついているなんとも可愛らしい感じだ。
体型を隠したい気持ちはよくわかるが、背が低いせいでものすごく幼く見えるのはあえて何も言わないほうがいだろう。
そしてケイトさんはローラさんと同じようなパレオだけど、こっちは露出も少なくおへそより下はすっぽり隠れてしまっている。
上もタンクトップ系で露出は限りなく少なく、そりゃそうだよな旦那を無くしたばかりで派手な格好なんてできないだろう。
本当は喪に服す方がいいんだろうけど、この人の場合強引にこういう所に連れてこないとよからぬことを考えてしまうので、これでも挑戦した方じゃないだろうか。
なんにせよいきなり目の前に美人がたくさん現れると中々に壮観、周りの男性も美人集団に釘付けのようだ。
「どうやらマスターは皆さんの姿にオーバーヒートしているようですね」
「めんどくさいからそういう事にしておいてくれ」
「これからどうしますか?」
「とりあえず各自好きなように遊んできていいぞ。ここは一時間ごとに強制的に休憩させられるらしいから、そうなったらここに集合ってことで」
「了解しました」
「お姉様行きましょう!」
「あ!走っちゃだめですよ!」
イブさんの手を引いてミニマさんが並みの打ち寄せる大プールの方へ、ケイトさんはリリットさんと一緒に少し離れたジャグジーに向かっていった。
波の出るプールの他にも大小色々とあるらしい。
さて、まずはどれから制覇していこうか。
年甲斐もなくはしゃぐ気持ちを抑えることもせず、パンフレットを開いた。




