269.ショッピングモールに移動して
「ということで、本日は待ちに待った買い物の日です。皆様ご準備はよろしいですね?」
「「「は~い!」」」
「これは戦いです。まずは必須アイテムをゲット、それから各自が欲しいと思われるものを購入していただきます。その際、これだ!という物を一つ見つけてください。どんなものでも構いません、一番センスがいいと判断された人の買い物分については全てマスターが支払ってくださいます。値段の上限はありませんが、選ばれなかった場合は自腹ですのでご注意を」
「「「キャーーー!」」」
アリスの説明に黄色い歓声が離れのリビングに内に木霊する。
今日はショッピングモールのあるコロニーへ買い物に行く日、プールに入るために使う水着を調達しに行くだけだったのだが、何故かよくわからないルールが追加されている。
センスがいいだって?
一体何を基準に判断するんだ?
「・・・おい」
「何か?」
「最後のルールは聞いていないんだが?」
「そうですね、今決めましたから」
「いや、決めましたからってお前なぁ」
「ただ買い物に行くだけで面白いと?」
「買い物に面白さが必要なのか?」
「もちろんです」
俺の質問に一切の迷いなく返答するアリス、そう堂々と言われてしまうと本当に必要なのかもしれないと思ってしまうんだが・・・必要なんだろうか。
「あの、皆さんそんなに無理して買わなくても大丈夫ですよ?」
「別に無理はしてませんよ?」
「そうですよ。欲しい物を買うだけですし、そこに少し面白い要素が加わっただけですから」
「・・・少し面白い?」
「まず水着の購入資金は5万ヴェイルまで、それに加えて私物用に5万ヴェイルの合計10万ヴェイルをマスターの資金から支給いたします。それ以上は各自自腹での購入になりますのでご注意ください。何度も言いますが、センスのいいものに関してはマスターがお支払いしてくださいますが選ばれなかったら自腹です。皆様のアグレッシブな買い物に期待いたします」
いや、百歩譲ってその企画を受け入れるとして、なんで水着や私物代まで俺が支払うんだ?
アリス・イブさん・ローラさん・テネス・ミニマさん、そしてリリットさん。
これだけで60万ヴェイルも支出するうえに企画分も払わないといけないんだろ?
いやまぁそれで皆が気持ちよく買い物できるならそれでいいけどさぁ・・・。
「キャプテンも大変ね」
「同情するなら半分持ってくれてもいいんだぞ」
「自分のヒューマノイドにたかるのはどうかと思うわよ」
「とか言いながら昨日のあれも喜んでたんだって?」
「そんなわけないでしょ!そりゃ、普通の方は使わせてもらうけど、もう一つの方は絶対に着ないからね!」
「いや、だからあれ選んだの俺じゃないから」
フォローに来てくれたテネスに昨日渡した湯浴み着について聞いたのだが、予想以上の反撃を受けてしまった。
叩かれた右肩が無茶苦茶痛い、まったくうちのヒューマノイドはそろいもそろって主人に対する配慮というかフォローがないんだがどうなっているんだろうか。
そんなこともありながら、リリットさんが手配してくれた小型船に乗って一路ショッピングモールへ、コロニー一つをまるまるモールにしたとだけあって中はかなりの広さで、朝の早い時間に関わらず多くの客でにぎわっていた。
「すごい人だな」
「大きな買い物をするならここが一番ですから。買えないものは人と薬ぐらいなもの、必要であれば宇宙船も購入できるそうですよ。表向きは」
「表向きねぇ」
「裏でも色々と取引されていますが、幸い人は扱っていないようです」
「それは喜んでいい所なのか?」
「少なくとも誘拐は起きない、と思ってよろしいかと」
「経験者は言う事が違うねぇ」
「それはマスターも同じでは?」
おっと、そういえばそうだった。
そんな冗談を言いながら買い物がスタート、食事もあるのでひとまず二時間後に入り口に集合という事で一度解散となった。
リリットさんは昨日に引き続き女性陣チームに同行、俺はと言うとアリスの代わりに今日はテネスが同行してくれるようだ。
「別に俺と一緒じゃなくてもいいんだぞ?」
「なによ、私が一緒だと困ることでもあるの?」
「そういうわけじゃないが、めんどくさくないか?」
「今に始まったことじゃないでしょ?それにアンタ一人で買い物に行かせて迷子になられも困るじゃない」
俺もいい年した大人なんだし別に一人でも買い物できるんだが、まぁアリスに何か言われているんだろう。
そんなわけでテネスを連れてショッピングモールの中を徘徊、国中のありとあらゆるものが揃っているとまではいわないけれども、よくまぁこれだけの品を集められたものだなと感心するぐらいに物であふれ返っている。
もちろんモールなので綺麗にはされているものの、店の中までは管理されていないのか稀に導線が心配になるぐらいに荷物だらけの店もあるようだ。
「お、こんなところにもジャンク屋がある」
「ここに来てもジャンク屋?アンタも好きねぇ」
「店も小さいしそこまで期待はできないが、この宝探し感がいいんだよ」
「私にはわからない感覚だわ。人間ってのはもっとこう新しい物に目がないと思っていたけど、違うのね」
「90%の人はそうかもしれないが生憎と俺は残りの10%みたいでね」
「確かに普通と違うのは理解してるわ、じゃないとアイツや私みたいなのを近くに置こうとは思わないわよね」
「そうか?俺からすればこんな何もできないオッサンについてきてもらってむしろ申し訳ない位だ。まぁ自分も買いたいものがあるだろうし離れる時はいつでも言ってくれ」
「・・・何のために私がついてきたと思ってるのよ」
最後の方はぼそぼそした感じで何を言っているかわからなかったが、特に不満ではなさそうなので遠慮なく自分の買い物を満喫させてもらおう。
とはいえそこまで大きくないジャンク屋で時間を潰せるわけもなく、これといった収穫もなく店を出た後は目的の水着をテネスに選んでもらうなどしながら、その他諸々の買い物を終えて入口まで戻った。
「ん?悪い、俺が一番最後か」
「ずいぶんたくさん買ったんですね」
「テネスが色々と勧めてくれたんでな。昨日もそうだったが、俺はそういうのに弱いらしい」
両手いっぱいに買い物袋を抱えている俺とは対照的に、女性陣の手には一つか二つ程度しか袋がない。
うーむ、昨日同様買わされてしまったという奴だろうか。
いや、でもどれも欲しい物ばかりだったしテネスの選定に間違いはない・・・はずだ。
「だってリリットさん、今なら稼ぎたい放題ですよ」
「えぇぇ!そんな、お小遣いまでもらってるのに申し訳ないです!」
「それでいいのよ、じゃないとろくなことにお金使わないんだから」
「人聞きの悪いこと言わないで貰えるか?ちゃんとした目的の為に金を貯めてるっての」
「何を買うんですか?」
「惑星」
「えーー!」
冗談と思ったんだろう、リリットさんが少しオーバーなリアクションで驚いてくれる。
まぁこんな年したオッサンがそんなこと言えば普通はそういう反応になるよなぁ。
「冗談に聞こえるかもしれませんが、マスターは本気なんです」
「え?」
「そうなんです」
「実は・・・」
「せやねん」
「えぇぇぇぇ!?」
最初とは違うガチの驚き。
最初こそ冗談半分で聞いていた彼女も、女性陣全員が同じように反応するのを見て嘘じゃないことを察したようだ。
こう見えて惑星を買おうとするだけの金はあるんだぞ、なんて言うつもりはないけれどひとはみかけによらないってことは理解してもらえたようだ。
ひとまず前半戦は終了、これからアリスおすすめの店で昼食を取りいよいよ後半戦が幕を開ける。
あまり買い物をしていなかった彼女達の本当の戦いはここからが本番らしい。
やれやれいったい何が起きるのやら。




