265.コロニーでの楽しみ方を話し合って
「と、いうことでしばらくここで過ごすことになったリリットさんだ」
「リリットです、どうぞよろしくお願いします」
俺の紹介に改めて頭を下げるリリットさん。
うーむ、まるで子供の自己紹介みたいな感覚になるが、こう見えて成人しているらしい。
ここまで旅して色々な人に出会ってはいるけれど、義体化していない姿でここまでのギャップがある人は初めてだ。
「よろしくリリットさん」
「よろしくやで!」
「色々大変だったと思いますが、トウマさんがいれば大丈夫ですから安心してくださいね」
アリスとの話の後、持ち帰った商品で盛り上がっていた女性陣にコロニーについて説明、その流れで彼女についての話をしてひとまずここで匿う事を了承してもらった。
俺達はただ温泉を楽しみに来ただけ、だが残念ながらそういうわけにはいかない事実に最初こそ戸惑いを隠せないイブさん達だったが、アリスの説明を聞くにつれて表情がどんどんと明るくなっていく。
ようは単純に言えば楽しむだけ楽しんで、奴らに必要以上儲けさせなければいいだけ。
食事もそうだし買い物もそう、食べたければ食べたらいいし欲しければ買えばいい。
そこに不必要な物が入ってくるから問題なのであってそうでない必需品は普通に買って何の問題もない。
もちろんそれだと世話役のリリットさんが運営に文句を言われるだろうけど、それらの返事はアリスとテネスが代理で行うし、直接文句を言わせないために『俺達をつきっきりで世話する』という形でここに滞在してもらう。
更に、この先どこに出かけるにもリリットさんには同行してもらうわけだが、これは世話役としての立場を使って優先的に予約を取ってもらったり移動するための船を手配してもらうためだ。
このコロニーでは何をするにしても世話役を通さなければならず、それをしないと優先的にサービスを受けられない仕様になっている。
結果として彼女達に言われるがままあれこれ買ってしまう事になるのだが、そのからくりを知ってさえすれば特に慌てる必要もない。
「俺がっていうかアリスとかテネスがいれば大丈夫だ」
「そこは自分がっていう所じゃない?」
「俺は出来もしないことをできるとは言わない主義でね。ってことで、しばらくはリリットさんと一緒に行動するわけだが・・・まぁやることは何も変わらない。温泉に浸かり、買い物をして、偶にプールで遊ぶ。運営が何を言ってこようと俺達はしたいことをして欲しい物を買う、ただそれだけだ。とはいえ今日はもう遅いし、のんびり温泉にでも入ろうと思うんだが明日はどうする?」
色々ありすぎて疲れたので今日はとりあえず温泉に入ってゆっくりするとして、明日以降は完全ノープランだ。
何でもできるのはいいことだけど、選択肢が多すぎるのも困りもの。
折角のリゾート惑星、タダ風呂に入り続けるというのはもったいないからなぁ。
「まずは色々と見て回るのはどうですか?買い物をするにしてもどんなものがあるかわかりませんし、プールに入るにしても水着がないのでまずはそれを買う必要がありますよね。そういえばリリットさんが美味しいお店を知っているという話でしたし、それを見ても楽しそうです」
「確かに水着は必要か。俺とイブさんは前に惑星に行った時のがあるとはいえ、ローラさんもミニマさんも持ってないよな」
「ウチはもってないなぁ」
「私も、全部置いてきたので」
「となるとプールの前に買い物は必須か」
「そうなりますね」
確かアリスも変な水着を持っていたと思うが、あの時は俺達しかいなかったので問題なかったとはいえ流石に複数の人がいる場所であれはまずいだろう。
というかその為だけにわざわざソルアレスに戻って引き出しを漁るのはめんどくさい、そうなると全員が買いなおし決定だな。
そんな感じである程度の段取りが決定、全員一緒に行動する必要もないのである程度の日程だけきめて、それ以外は各自フリーと言う感じになった。
今回の目的はあくまでも休息、女性陣は買い物に行くだけでもストレス解消になるだろうけど俺にとっては苦痛でしかないのでその日は別行動でゆっくりさせてもらおう。
そうなればリリットさんは女性陣チーム、テネスがついていけば問題ないはずだ。
「ということで、明日はとりあえず不足分の買い出しだな。どんな店があるか確認して、本格的な買い物はまた別日という事で」
「本当にそれでよろしいのですか?」
「ん?」
「皆さんの水着を選びたい放題ですよ?」
「・・・あのなぁ、俺みたいなのが一緒に行ったら他の客の迷惑になるだろうが。っていうか俺なんかに選んでもらいたくないだろ」
「それは・・・まぁ」
「ウチはお姉様に選んでほしいからパスで」
「まぁそれが普通の反応よね」
「そうですか?私は別に構いませんよ?」
イブさんとミニマさんはまともな回答、ローラさんはどうやらお疲れのようなので早く休んでもらった方がいいのかもしれない。
俺が選ぶというよりも選んでもらったのを見るから楽しいのであって・・・って、何を言わせるんだ。
「ということでそれ系は各々で好きに選んでくれ。もちろんリリットさんもな」
「え、私もですか!?」
「世話役が同行しないわけにはいかないだろ。一緒に行動しないとまた何か言われるだろうし、もし無いなら俺達が金を出すから安心していいぞ」
「流石にそこまで見てもらうわけには・・・」
「じゃあ買う金はあるのか?」
「ない、です」
「なら遠慮は無用だ。彼女達もリリットさんが一緒の方が楽しいだろうから、付き合ってやってくれ」
こういう場所だから相場よりも高い値段で売られているんだろうけど、それでも何十万ってことはないだろう。
それぐらいは必要経費、女性陣も俺みたいなオッサンがプールに付いて回るよりも女性同士でワイワイした方が楽しいはずだ。
「といいながら、マスターは水着姿の女性を堪能するわけですね」
「そういう語弊のある言い方は辞めてもらえるか?」
「違うのですか?」
「あくまでもプールを楽しむのであって水着姿を楽しむわけじゃない。お前も前みたいに変な水着はやめてくれよ」
「あれは由緒正しい水着ですが?」
「何がどう由緒正しいかはわからないが、とりあえず却下で」
そんなわけでコロニーでの過ごし方について大筋が決定。
基本的にアリスはウイルス除去に注力する形にはなるが、まったく遊ばないのも勿体ないので全員で楽しむ系のイベントには参加することになっている。
俺も基本はのんびりさせてもらうが、ショッピングモールなんかは結構楽しみなのでそっちは喜んで参加させてもらう予定をしている。
後は温泉だな。
場所によっては混浴もあるようだけど、基本的には男女別々なので好きなタイミングで温泉に行って色々と満喫させてもらうつもりだ。
一言で温泉と言ってもその種類は軽く二桁を超える。
とりあえずここでの目標はそれを全て制覇する事、その為には事前情報をしっかりキャッチする必要があるのでしばらくはパンフレットとにらめっこすることになるだろう。
テルマ・オルビスタコロニー。
世界有数のリゾートコロニーでの休暇が、ようやく始まろうとしていた。




