260.真っ赤な惑星を正面に見て
「おぉぉぉ~~~~」
デブリ群を進むこと丸一日、ノクティルカがデブリ帯を二つに引き裂きながら進んでくれたおかげで特に苦労することなくそこを抜けることに成功。
そしてその先に待っていたのは想像よりも真っ赤な巨大惑星だった。
遺跡惑星は茶色一色であまりよく見えなかったけれど、こっちは赤。
深紅っていうかどちらかと言うとオレンジに近いかもしれないが・・・アレ全部が溶岩なんだろうか。
火山惑星とは聞いていたけど、あれはもう溶岩惑星の間違いじゃないか?
「子供みたいな反応するわね」
「そりゃあんなのを見せられたらなぁ。話に聞いていたよりもデカいし、なにより色がすごい」
「赤・・・オレンジ?確かに普通は見ない色よね」
「あの中に降りるツアーがあるんだよな」
「流石に溶岩の中ってわけじゃないみたいだけど。もしかしていきたくなった?」
「まぁ、少しは」
話に聞いていた時は溶岩の中に入るなんて!と思っていたのだが、実際に本物の惑星を見ると行きたくなってしまうのが男の性という物だろう。
そんな惑星に目を奪われながらも、その近くを通過するコロニーを発見。
大小さまざまなコロニーがくっついだ複合リゾートコロニー、それが今から向かうテルマ・オルビスタだ。
「思ったよりもデカいし、数も多いな」
「大小あるけど全部で12あるらしいわよ」
「多いな」
「まぁ一般人が入れないコロニーもあるけど、半分ぐらい行ければいいんじゃない?」
「それでも高い所は高いんだろ?」
「上を見たらきりは無いけど、程々の所で一泊10万ヴェイルってところかしら」
一泊10万、昔の俺が聞いたら卒倒するような価格のはずなのだが今の俺からするとまぁそんなもんかって感じになっている。
人間金を持つと感覚が変わるというがまさにそんな感じだ。
もちろん金があるからとひけらかすようなことはしない、俺の夢を考えれば金はいくらあっても足りないのでコロニーについた後もなんだかんだ金儲けをしてしまうような気もしている。
この辺が貧乏性なんだろうなぁ。
「まぁそれぐらいか」
「そんな中あいつが手配したのはなんと一泊1万ヴェイル、格安でしょ?」
「安いのはいいが設備とかその辺は大丈夫なのか?」
「私もそれを思って調べたんだけど、案外まともなのよね。設備なんて高級宿と変わらないぐらいだし、源泉パイプラインが近いからいい感じに湯量があるみたい」
どう考えても普通じゃないよな、それ。
メインモニターに映し出されたのは見た目のそれなりに綺麗な辺境風の宿。
口コミは古いけれどどれも高評価、つい最近まで休館していたみたいだが復活したんだろうか。
「そんな場所がなんでそんな値段なんだ?」
「なんでも人がいないから場所は貸すけど食事とかは自分でやって欲しいんだって」
「ふむ、まぁそれぐらいなら別に。外に食べに行くにも楽しいらしいし、下手に気を使わなくても良さそうだ」
「上げ膳据え膳が基本のこのコロニーじゃちょっと異色だけど、でも私達にぴったりよね」
「だな、その値段ならしばらく滞在しても懐的には問題ない。って言うか少し仕事するだけでずっと滞在できるレベルなんだが・・・やっぱり何かあるんじゃないのか?」
ただより高いものはない、それと同じく安いことには理由がある。
目の前で真っ赤に燃える巨大惑星を横目に、なんとも不安を感じながら目的のコロニーを見つめるのだった。
その後は特に問題もなくコロニーへ向かって飛行、途中でハイパーレーンへと向かう航路と合流したが超高級船からオンボロまで多種多様な船が同じ場所を飛んでいるというなんとも面白い光景が広がっていた。
「あの船、どこからどう見ても金持ちの奴だよな?」
「えっと・・・そうね、スペシャリテ社の最新機体みたいよ。本体だけで5200万、それにオプションを付けたら億はいくんじゃないかしら」
「その後ろを飛んでるのは・・・どこからどう見ても普通のショップシップだな」
「耐用年数越えの骨董品、買取価格は100万いけばいい方じゃない?」
「それが仲良く並んでいる時点であれなんだが、なんで宙賊が襲ってこないんだ?」
「ハイパーレーンを出てすぐってのもあるけど、そこら中に警備が飛んでるのよ。それに加えて金持ちの私兵に私達みたいな傭兵も混ざってるってなると、わざわざ死にに行くようなものじゃない?」
「ということはそっち系での仕事は期待出来そうにないな」
「アンタねぇ、ここに休みに来たんじゃないの?」
「それはまぁそうなんだが・・・」
「残念だけどそっちは期待しないほうがいいわよ。まぁ輸送の方の仕事はいくらでもあると思うけど、休むってなったら手伝わないからね」
テネスの言うようにここには休みに来ているんだから仕事の事なんて気にしなくていいはずなのに、貧乏性のなせる業かついついそっちを考えてしまうんだよなぁ。
残念ながらテネスの力は借りれそうにないけれど、案外ローラさんとかイブさんは暇を持て余して手伝ってくれるような気もする。
そうすればコロニー間の荷受けぐらいはできるだろうから小銭ぐらい稼げるだろう。
一泊一万とはいえ長期になればそれなりに金はかかるし、食費だってバカにならない。
って、こんなこと考えているのがそもそもの間違いなんだよなぁ。
そんなことを考えながら船の列に並びゆっくりとコロニーの近くまで移動、駐機する場所が多いのか特に混雑することもなく俺達の順番が回ってきた。
「こちらテルマ・オルビスタコントロール、船名を求む」
「こちらソルアレス、それと前にいる大きいのがノクティルカだ」
「随分と大きいな。悪いがそのサイズとなると一般用じゃなく業者用のハンガーしか案内出来ないんだが、どこを予約しているんだ?」
「6番コロニー・・・だったかな」
「それならちょうど空きがある、8番ハンガーに入ってくれ」
「6番?」
「一番奥の深緑色の奴だ。係を行かせるから到着後も少し待ってもらえると助かる」
「了解」
「ゆっくりしていってくれ」
案内されたのは12あるうちの一番奥に位置する小さめのコロニーだった。
深緑色なのはコロニーのモチーフと言うか、森林のようなものをイメージしているのかもしれない。
因みに1番コロニーは金持ち向けの一番大きくて超ド派手な感じ、他にも温泉ではなくプールがメインのコロニーや、ショッピングモール、食事がメインの場所などがありそれぞれのコロニーを小型シャトルで行き来しながら楽しめるようになっているんだとか。
俺達が止まる六番は庶民でも金持ちでもないミドルクラス、あまり派手な感じを好まない客向けの奥ゆかしい所・・・と、テネスが教えてくれた。
「ふむ、近くで見れば見るほど色々あるなぁ」
「プールなんかは楽しそうよね、あとカジノとか」
「カジノはもう堪能したからなぁ」
「でも日銭を稼ぐならそこでもいいんじゃない?」
「俺は真っ当な金を稼ぎたいんだよ」
「とかいってあそこでは山ほど稼いだじゃない」
「あれはまぁ成り行きだろ。とりあえず色々見て回って、暇で仕方なくなったら行くとかでいいんじゃないか?」
案外すぐ行くことになったりしてね。
まぁそんな気もしないではないが、なんにせよまずはチェックインすることが先決だ。
初めての温泉コロニー、どんなお宿が待っているんだろうか。




