253.隠し部屋を探索して
通路に突然現れた隠し通路。
さっき中に入ったローラさんとテネス以外の面々は驚きを隠せないようで、あのアリスですら目を見開いている。
「時間がない、さっさと行こう」
残り時間はに十分ぐらいしかない、通路の中は薄暗いものの奥の方に明かりが見えるのは先程一緒。
長い長い通路をドローンのライトを頼りに小走りで駆け抜けると、角を曲がったところで例の部屋を発見した。
「わ!ヒューマノイドがいます!」
「これこそ世紀の大発見ちゃうん?」
「残念ながら報告できないやつだけどな。ここにあるポッドは全部で7つ、中身入りはそのうち四つか」
「データスキャン開始します、マスターは奥の部屋をご確認ください」
「了解。みんな、手を貸してくれ」
先程と同じような部屋の作り、最初の部屋にはポッドが並びその中には同じ顔をしたヒューマノイドが四体静かに眠っていた。
またあのよくわからない文字が表示されているけれども、俺達じゃどうしようもないのでそっちはアリスとテネスに任せつつそれよりももう一つ奥の部屋を調査することにした。
中には生活感あふれるカップや着替えなども放置されている、ブラジャーがあることから女性が使っていたんだろう。
「昔の人も似たようなのをつけていたんですねぇ」
「それに関してはノーコメントだ。えーっと、何か報告書的な奴・・・っと、あったあった!」
「あの、よくわからないんですが一度来たことがあるんですか?」
「二人が修理をしている間にちょっとな。詳しいことは後で話すから、資料的な物を探してくれ」
「こういう小物は持って行かへんの?」
「持って帰ったところで二束三文だし、誰が使ったかわからないカップを飾ってもなぁ。もっと見栄えがする物ならともかく私物は流石に可哀そうだろ」
それよりも気になるのはなんでこんなもんが放置されているんだっていう話だ。
カップはそのまま、服だって綺麗にたたまれているとかならともかく、明らかに何かイレギュラーが起きて慌てて飛びたしたみたいな感じになっている。
じゃないと下着をそこらに放置する事なんて・・・いや、これに関しては何も言うまい。
「アリス、進捗は?」
「データダウンロードまで後二分、ウイルスらしき痕跡はありません」
「了解。引き続き注意してくれ、テネスの方はどうだ?」
「うーん、やっぱりこの子たちが何で寝てるのかはわからないわね。恐らくポッドを開ければ動き出すんだろうけど、出てきた所でって感じ。あの子には悪いけど、まともなプログラムも入ってなかったし、簡易的な補佐とかそういうのをしていた程度なんじゃない?肉体もごく普通、工事用とかみたいにどこか強化されている感じもなさそうね」
「つまり人間みたいってことか」
「そうとも言えるかも」
彼女達がヒューマノイドであることは間違いない。
だが、なぜここに眠っているのか、何故特別な仕様ではなく普通なのか。
それはデータを解析するまでなんとも言えないだろう。
「十五分経過しました」
「よし、後五分で戻ろう。その他めぼしい物は・・・ないな」
「恐らくは。ミニマちゃんそっちは?」
「こっちもあらへん・・・って、あれ?」
「どうした?」
「ここ、なんでこんな風に飛び出てるんやろ」
机を引っこ抜いて中を確認していたミニマさんが、ふと奥にある突起を発見。
引っこ抜かなきゃわからないような場所にある時点で明らか不自然なんだが、届かない彼女の代わりにイブさんが腕を入れてそれを押すと、机の上に箱が飛び出してきた。
「なんだ?」
「中は・・・データチップですね」
「ふむ、わざわざそんな所に隠しているデータチップ、きになるな」
「もしかすると彼氏とのラブレターかもしれませんよ?」
「ローラさんならあんな場所に隠すのか?」
「んー、状況には寄りますけど。でも中々会えないとかだったら大切に保管するかもしれません」
ふむ女性がそういうのなら可能性はゼロじゃない、男だったら間違いなくお金かよくわからない物を入れているだろうけど、この部屋の主が隠しておきたい何かが入っている・・・のだろう。
「時間もあるし、詳しく調べるのは後にするか」
「スキャン完了、いつでも出れます」
「よし、さっさとずらかるぞ!」
気分はホロムービーに出てくる盗賊、めぼしい物を手に入れた俺達はそれを各自で分担して隠し薄暗い部屋を後にする。
彼女達は今後もこの部屋でずっと起動するのを待ち続けるのだろう。
もちろん報告してもいいんだが、起こされた後オークションにかけられてどこか知らないところに連れていかれるぐらいなら、ここで静かに眠ったままの方がいいに違いない。
「この子ら、まるでお姉様みたいな顔してるな」
「そうですか?」
「ほら、この笑ってる感じそっくり。可愛いなぁ」
「ふふ、ありがとうございます」
ミニマさんに可愛いと褒められまんざらでもないイブさん。
イブさん大好きのミニマさんですら同じように感じるんだ、俺達の感覚は間違っていなかった。
これが偶然なのか、それとも意図されたものなのかはわからないけれど、それは回収したデータを調べるしかない。
「忘れ物は無いな?」
「大丈夫です!」
「それじゃあ閉めるわよ。えーっと、『いってきます』」
最後はテネスがキーワードを言うと、静かに扉が閉まっていく。
今の所誰かが来た様子はない。
もし偶然に偶然が重なって開くことがあるまで、彼女達はここで眠り続けるだろう。
「どうでしたか、堪能できましたか?」
「おかげさまでいい物を見せてもらった」
それからすぐに元の場所に戻ると、晴れ晴れとした顔をした隊長が出迎えてくれた。
この表情を見る限りどうやらトラブルは解決したらしい。
「途中で案内を止めてしまい申し訳ありませんでした」
「何とかなったのか?」
「おかげさまで、これでいつでも上に戻れます」
「了解。それじゃあ俺達も準備をするから三十分後にノクティルカの前に集合してくれ、確か搬出する荷物もあるんだろ?」
「えぇ、それは我々が運びますのでご安心を。では三十分後に」
あそこで回収したものをしまう為にも早くこの場から離れたい。
というわけで急ぎソルアレスへ帰還、ひとまず回収したブツをカーゴ内の空きコンテナに押し込み急ぎ出発の準備をする。
気づけば大量のコンテナがノクティルカの前に置かれていた。
話には聞いていたけれど、かなりの量だなこれは。
その後大型ドローンを投入しながら皆で手分けをしてコンテナを収納、短い旅ではあるが調査隊の面々にも乗り込んでもらいハッチを閉める。
よし、後はコロニーまで送り届ければこれで仕事は終了だ。
「こちらソルアレス、そっちはどんな感じだ?」
「こちらノクティルカ。正直出たとこ勝負だけど・・・まぁ何とかなるでしょ」
「ソルアレスはともかくノクティルカのボディだと水面を離れるのもかなり大変だと思うが、時間はかかってもいいから確実な方法で飛んでくれ。テネス、お前に任せたからな!」
「わかってるわよ。私たちの事はいいからさっさとうえで待ってなさい!」
宇宙空間と違い惑星には重力があるので、荷物を満載にしたノクティルカが浮上するにはかなりの推進力がいる。
加えて大気圏を突破するのにもそれなりの技量を必要とするだけに、着陸よりも離陸の方が大変なんだよなぁ。
吼えるようなエンジン音を響かせながらゆっくりとノクティルカが海の上を走り始める。
空に戻るまでが惑星降下、まぁローラさんがいれば大丈夫だろう。
「アリス、出してくれ」
「了解、ソルアレス発進します」
俺達は一足先に上で待っているとしよう。
かくして、初めての遺跡探索は思わぬ収穫とともに幕を下ろしたのだった。




