251.回収してきたデータを解読して
「なるほど、状況は理解しました」
あの後、ものすごい顔で迫ってきたアリスをなだめつつ一度ソルアレスへと帰還。
ミニマさんとイブさんは未だ向こうで修理作業中のようだが、設計図があるおかげで何とかなりそうな感じだそうだ。
それでも一・二時間でどうにかなるようなものではないので、しばらくは待機することになるだろう。
で、戻ってきて速攻説教されているというわけだが・・・まぁ何とか状況を理解してくれたようだ。
「誤解が解けて何よりだ」
「ですが、次回からせめて一声かけてからにしてもらえますか?それぐらいの時間はあったでしょう」
「仕方ないじゃない、アンタの声が聞こえてきて慌ててたんだから。まさか通信できないとは思わなかったし・・・次から気を付けるわよ」
「よろしい」
「それで、さっき渡したデータはどうだ?何かわかりそうか?」
「複雑な計算式に基づいており、かつそれが既存の物と一致しない為難航しています。先ほどの話から推測するに恐らくヒューマノイドの保存状況とポッド履歴の履歴を確認しているのだと思いますが、詳細はなんとも。マスターが持ち帰った管理記録を見る限り、この遺跡でヒューマノイドが作成されていたのは間違いなさそうですね」
通信が回復すると同時にテネスがダウンロードしたデータはアリスに共有され、二人がかりで解析を試みるも難航。
とりあえず今は持ち帰った報告書だけが頼りだ。
「どうする、アリスも現地に行くか?」
「行った所で同じものを見るだけですから大丈夫です。映像はテネスから回してもらっていますので」
「録画してたのか?」
「当たり前じゃない、ローラさんが言うように世紀の大発見になるかもしれないし、後々になって揉めた時の証拠になるでしょ?」
「・・・なるほど」
確かに後々になって壊しただのなんだの言われるのは困るからな、その辺の自衛は必要だろう。
俺が言わなくてもしっかり自衛しているあたり、流石テネスだな。
「なんにせよ目的は果たしたわけです。後は先程の管理記録を確認しながらデータと照らし合わせて解析をしていくだけです。後気になるのは・・・やはりイブさんの件でしょうか」
「アリスはどう思う?」
「ヒューマノイドそのものははるか昔、それこそ人類が宇宙に出た頃から存在しています。しかしながら今のように自立して行動するようになったのがいつなのか詳細な記録は残されていません。その頃はちょうど大開拓時代と重なりますので、飛躍的にすべての技術が向上した時期になります。いつ誰がどのように開発したかわからない以上、今回の様に遺跡から発掘された技術がそのまま流用されていると考えても不思議はないでしょう。オリジナルと言う記載がありますから、元になった何かは存在するはず。それがイブ様のような見た目をしていた、もしくはそのものを模したと考えるのが妥当ではないでしょうか」
そもそもイブさんは何者なのか、その答えは未だ出ていない。
明らかに普通とは違う身体能力、操舵技術、戦闘技術を有し、しかもその姿はつい最近まで目撃されていない。
普通に生活していたら絶対に痕跡は存在する、それこそ母親を見つけた時のように。
それが無いという事は今の今までどこかで隔離されていたという事になるのだが、その記憶も彼女は持ち合わせていなかった。
気にあるのは前に見つけた漂流船、あの中で見つけた船の中にイブさんと同じ見た目の人が映っていたわけだが、それが何を意味するのか。
ここにきて新たなピースとして出てきたのがヒューマノイド。
言われるまでそうは思わなかったけれど、ポッドの中で眠るのを見て確信に変わった。
「イブさんがヒューマノイド・・・ってのはあり得ないよな?」
「それはあり得ません。生体スキャンを行った結果普通の成人女性であることは確認が出来ています。DNA情報も正常、ただしそこから親となる存在を見つける事は出来ませんでした」
「なんならインプラントすら入ってなかったわけだ。マジで何者なんだろうなぁ」
因みにこの件はイブさんも知っているわけだが、本人は特に気にしている様子はない。
自分は自分、むしろ今が楽しいので過去なんてどうでもいいというスタンスの様だ。
別にそれが悪いわけではないし、それを追求しなければならない理由はない。
「イブさんはイブさんですよ、トウマさん」
「もちろんそれは分かってるさ、何者であれ仲間であることに変わりはない」
「マスターならそう仰ると思っていました」
「というかイブさんがいなかったら成り立たないわよね、私達って」
「そういう事、アレだけの宙賊を相手にここまで生きてこられたのもイブさんの実力とローラさんの操舵技術があってこそだ」
「私達はそこに含まれないのですか?」
「お前らはいて当然だろ?」
誰がなんて言おうとイブさんはイブさんだ、たとえどんな存在であれ俺達の大切な仲間であることに変わりはない。
そんなわけで解析を続けながらソルアレスで待機していると、修理をしていたミニマさんから連絡が入った。
「こちらソルアレス、どうかしましたか?」
「んー、修理は終わったんやけど思うように動かへんのよね。おそらく内部的なプログラムにエラーが起きてるんやと思うんやけど、ちょっと見てもらわれへんやろか」
「なるほどわかりました、すぐにいきます」
「トラブルか?」
「恐らくは。テネス、解析は並行して行いながら向こうを先に片付けましょう。マスターはどうされますか?」
「残ってても暇だから一緒に行こう」
「私も行きます!」
ここでの目的は達してしまったのでもうすることは無い、それならば面白い方に行くのが正しい選択だろう。
ぞろぞろと連れ立って遺跡の奥まで行くと、先ほどの景色から一変なんともメタリックな空間に代わってきた。
上も下も銀色、くすんでいるので反射はしないけれども歩くと甲高い音が鳴る。
これもまた遺跡の一部、ここが採掘の最前線なのか。
「お待たせしました」
「よく来てくれた。機械的な部分は問題ないはずなんだが、どうも動かなくてね。我々じゃプログラムが壊れているか確認することはできないんだ」
「なるほど・・・わかりました、一度スキャンしなおしてみましょう。テネスは内部を、私は外部を確認します」
「任せて!」
この二人ならすぐに不良を見つけてくれるはず、中々過酷な現場だったんだろうイブさんもミニマさんもオイル汚れで服も体も真っ黒になってしまっている。
「大変な修理だったんだな」
「設計図のおかげで何とかなったわ。隊長さんえらい喜んでやったで」
「そりゃなにより。イブさんもサポートご苦労さん」
「私は重い物を運んだりしただけですから」
「何言うとんの、お姉様がおらんかったらあの時私ぺったんこやで?」
「何かあったのか?」
「配線が中で切れとったから奥に入ってくっつけてたんやけど、その時上の部品が折れて落って来たんや。さすがの私も潰れる思たけど、お姉様が間一髪持ち上げてくれてなぁ」
なかなか大変な修理になってしまったようだが、とりあえず無事で何よりだ。
しばらくしてスキャンを終えたアリスとテネスが二人で結果を照合、一つの結論にたどり着いた。
「恐らく内部で誤作動が起きてしまったようですね。その際に遺跡が防御反応を起こし機械が永続的に動いているのかと」
「防御反応?」
「外敵からの攻撃を受けた時に遺跡が自らを守るための動きです。主な役目は外敵をハッキングして行動不能にする事ですが、それ以上ともなると防御機構が稼働します」
「それは困ったな、せっかくここまでうまく騙せていたのに。ここにきて防御機構が作動すると色々とめんどくさいことになる」
「どうにかならないのか?」
「今疑似プログラムを走らせていますが完全に止めるには当時の関係者でもいなければ難しいでしょう」
「いや、いるわけないだろ」
遺跡なんて何百年前から存在しているんだぞ?当時の人物がいるはずない・・・よな?
思わずアリスと顔を見あわせる。
いくら似ているとはいえさすがにそれは無理だろう、そう思っていてももしかしてと思ってしまうのが人間と言う生き物なわけで。
「イブ様、ちょっとこちらへ」
「なんですか?」
「ここに座ってください。そう、そのまま顔を固定して・・・はい、オッケーです」
アリスに言われるがままイブさんが操縦席まで移動、そこに座ると生体スキャンが発動する。
おそらくハッキングしている遺跡の防御反応とやらを止めるためなんだけど・・・って、なんだか音が小さくなってきたぞ。
「おい、機械が止まったぞ!」
「嘘だろ!」
「すごいな姉ちゃん!何やったんだ!?」
「いえ、私はただ言われるがまま座っただけで・・・」
うーん、まさか成功するとは思わなかった。
動揺するイブさんの横でアリスがドヤ顔をしている。
なんにせよこれで無事に帰ることは出来そうだが、また一つ確信に近づいてしまったような気がするなぁ。




