226.回収した物資を売りさばいて
「以上が依頼されました宙賊占拠コロニー討伐依頼の結果報告となります」
宙賊討伐後、オルビタル・フロンティア・インダストリーに向かった俺達はそのまま社長室へ通され、忙しそうに手を動かすハムネット社長へ報告を行った。
30分ほど待てばしっかり話が出来るとは言われたけれど、こっちも時間に追われていたので無理を言ってそこで報告を完了。
話を聞き終えた社長がぴたりと手を止め、こちらの方を向く。
「まさか一週間以内にかたづくとは思わなかったが、これであそこを航行する船も安心だろう」
「約束通り宙賊の討伐報酬とコロニー内の物資は全部こっちで回収させてもらった」
「そういう約束だからね。聞けばかなりため込んでいたらしいじゃないか、まったくお金が無くて払えないなんてよく言えたものだよ」
「まぁ悪党なんてそんなものだろ。これであの男の関係者は全員死亡もしくは捕縛されたわけだが、あとになってこれもよろしくと言われてもやらないからな」
「あれから我々も徹底した社内調査を行い、怪しげな社員は全て処分している。おかげで随分と風通しがよくなったよ」
つまりはそれだけよろしくないことをしていた社員がいたという事なのだが、それを恥じることなくいうあたり流石というかなんというか。
まぁ一番の恥を見られているわけだから今更ってのもあるかもしれないけどな。
「それを喜んでいいのかは何とも言えないがともかくこれで依頼は終了。約束の報酬はアリス経由で振り込んでおいてくれ。テネス、時間は?」
「後五分ってところかしら」
「随分と忙しいみたいだね」
「おかげさんで。そうだ、遺跡から見つかったっていう例のブツに関してはまた別日に訪問させてもらうが、構わないか?」
「そうしてもらえると助かるよ。こっちも色々と忙しくてね」
「じゃあそういう事で。アリス、テネス、行くぞ」
大企業の社長に向かってなんて態度だ!と怒られるかもしれないが、こっちも色々と忙しいのでそんなことをしている時間も惜しい。
別に知らない関係でもないし、そんなことで怒り出す人でもないのは分かっているので世辞を言うほうが時間の無駄という物だ。
社長室を出ると外で待っていたキャサリンさんが俺達を案内して見送ってくれた。
「さて、次は?」
「ローラ様にお願いしておりました鹵獲したバトルシップのオークション結果を見に行きましょう。落札価格は二機で1200万ヴェイル、想定よりも少し安いですが中古品としてはまずまずといったところでしょうか」
「あれが1200万?嘘だろ」
「物は悪くありませんでしたから当然かと」
「うーん、ノヴァドッグだったらこの半分にしかならないんだがなぁ」
「あそこはバトルシップがごろごろしていますからね。新品はともかく状態のいい中古品は中々出回りませんから」
それなら向こうで買ってここで売ればもうかるんじゃないかとか思ってしまったが、それをするための手間と危険を考えると割に合わないんだろう。
まぁ高く売れるのはいいことだ。
これで残りの一機を引き渡した分も含めて1700万ヴェイル、ハムネット社長の依頼料が1000万なので会わせて2700万になるのか。
あとは回収した物資やパーツがどれぐらいの値段で売れるかだな。
「他のパーツは?」
「それはこれから出品されます。今回は特に使えそうなものをミニマ様の方で仕分けしてくださっていますので、纏め売りですがそれなりの値段はつくでしょう。日用品などの物資は買い手がついておりますのでハンガーで引き渡しをお願いしています」
「ん?誰がやってるんだ?」
「おっちゃんに頼んでるから大丈夫やで」
と、そこにミニマさんが登場。
手も服もオイルでドロドロな所を見るとついさっきまで仕分けをしてくれていたんだろう。
雑多な物ばかりだと値段が付かないからと自主的に仕分けをしてくれたようで、そのおかげでいい感じの値段が付きそうだ。
「おっちゃんが?」
「どうせゴロゴロしてるだけなんやからたまには働いたらええねん。折角買ったハンガーなんやし有効に使わんとな」
「だがかなりの量だろ?」
「ハムネット社長に物資輸送用のドローンをお借りしていますのでそれを使えば大丈夫です」
「なるほど、今回の件でハンガーの存在を知ってもらって、仕事を貰おうってわけか」
「せっかく大きなハンガーがあるのですから使わない手はありませんよね」
俺達がいなくなった後の事も考えてなんだろうけど、いくら輸送用ドローンがあるとはいえあの量はなかなか大変じゃないだろうか。
まぁ、いざとなれば取引相手も手伝ってくれるだろうから何とかなるか。
気づけばオークション会場に到着、多くの人が出入りする入り口に立っていた黒服の一人がこちらに気づき、走ってくるのは見えた。
「いらっしゃいませ。キャプテントウマですね、お待ちしておりました」
「四名ですが大丈夫ですか?」
「六名分の席を確保しております、どうぞ奥へ」
「ん?そういえばイブさんは?」
「それについては後程」
ふむ、この人がいるところでは言えないというわけか。
案内されたのは劇場を利用したオークション会場のテラス席、舞台には出品された品物が置かれておりその上に設置されたモニターに入札金額が表示される仕様のようだ。
席の横には軽食と飲み物が設置されていて、好きなように飲んでもいいとのこと。
諸々の説明を終えて黒服は部屋を後にした。
「で?」
「せっかちなのは嫌われますよマスター」
「いや、そういうの良いから」
「イブさんには宙賊コロニーで回収した非合法な品を売りに行ってもらってるわ。まぁ、ここの地下が取引会場だからすぐそばにいるけど、向こうは専用のチケットがないと入れないから任せるしかないわよ」
説明をしながらテネスが用意されていた飲み物をグラスに注ぎ、手渡してくる。
非合法な品に関してはそのまま放棄するという選択肢もあったけれど、下手な連中に持っていかれるとよろしくないのでそれならば素性の分かっている悪人に手放そうという話になった。
そこで選ばれたのが非合法取引所、でもまさか一人で行くなんて聞いてないんだが?
「一人で?大丈夫なのか?」
「カイロス様のメダルを持っていますので大丈夫です。それに、何かあってもあの方なら一人でどうにでもなるかと」
「お姉様はあの宙賊コロニーを一人で壊滅させるような人やで?何かあっても大丈夫やろ」
そう、結局例のコロニーはほぼほぼイブさん一人で壊滅させたようなもの。
もちろんアリスとテネスも手伝ったけれど、実力で排除したのは間違いなくあの人だ。
まるで先が見えているかのような突入、そして制圧。
鬼気迫るものがあったと珍しくテネスが怯えながら言ったのを覚えている。
明らかに普通じゃないあの人の正体は一体何なんだろうなぁ。
「まぁ無事に戻ってくるのならそれでいい。因みに全部売れればいくらになる計算だ?」
「ざっと4000万ぐらいでしょうか」
「非合法の品って儲かるんだなぁ」
「非合法ですから。でも扱わないんですよね?」
「今回は処遇に困って致し方なく取引するが、そうでないならしない。そこまでして金を稼げば結局アイツと同じになるだろ」
「そういう所がマスターらしいですね」
因みにこの前の賠償金総額が約1.5億、アリスの想定通りになったところに加えて討伐報酬を加えた5000万ヴェイルが入ってくる。
ノクティルカの代金を引くと貯金は晴れて二億越え。
もちろん今回の稼ぎは全員で折半するけれど賠償金はすべて俺の物になる。
辺境惑星の購入資金が最低2億と言われているだけにやっとそのスタートラインに立てたという感じだろうか。
もちろんそこにテラフォーミング代とかもっと要求された時の上乗せも考えると倍ぐらいは必要に何だろうけど、目標の半分と考えれば達成感もそれなりにある。
まぁこの先何が起こるかわからないので金はいくらあっても困らないだけに、今後もしっかりと稼がせてもらおう。
と、その前に。
「あ、次の出品はあの茶葉みたいよ?」
「買います!」
「入札はこちら、ローラ様頑張ってくださいね」
「はい!」
まぁ折角のオークションだし多少貯金が減るのは致し方がないだろう。
欲しい物は欲しいときに手に入れる、それが一番だ。
「ミニマさんも欲しい物があれば言えよ」
「え!?私もええのん?」
「今回の功労者だからな、それに仲間なんだから当然だろ」
「仲間・・・」
「近日中に雇用契約書をお渡ししますのでご検討よろしくお願いいたします」
色々問題はあるだろうけど、ノクティルカを動かすにはなくてはならない人物。
イブさん的にも問題ないという話だったので晴れてクルーとして正式契約する運びとなった。




