225.宙賊の群れを追い払って
「うーん、えぐい」
「その表現は妥当ではありませんね。美しい、そう賞されるべきです」
「確かに映像は綺麗だが、実際にやってることはそうじゃないだろ。見ろよ、戦闘用ドローンから逃げ回っていたかと思ったらその勢いを利用されて敵機に突っ込んでるんだぞ。絶望の後に絶望を押し付けるとか人間じゃねぇ」
「ヒューマノイドですので」
いや、そんなことはわかってるっての。
遠方に出ていた別動隊が戻ってきて始まった第二次戦闘。
第一次は主にハッキングによる同士討ちが主流だったが、今回はそこに大型戦闘用ドローンが加わりそれはもう相手に同情してしまうような状況が広がっていた。
仲間を撃墜した傭兵に向かって物量で攻撃を仕掛ける宙賊部隊。
相手はたかが一機、そこに戦闘用ドローンが三機いた所でこれだけのバトルシップに襲われれば例え戦艦であっても撃墜することは可能、そう思っていたはずなのに気づけば一機また一機と敵側に寝返っていく。
見たこともない戦闘用ドローンに肉薄され、必死に逃げている途中で急にコントロールを奪われたかとおもったら目の前にいる仲間にぶつかり鮮やかな花を咲かせるというなんとも悲しい最期を迎える彼らに流石の俺も同情するしかなかった。
「でもこのドローン本当に優秀ね、火器もそれなりに積んでるし受信機が大きいから遠隔で送受しても動きがぶれないものおかげで直接エンジン部を狙えるわ」
「普通そういうドローンは遠距離から攻撃するものであって、船の腹にぴったりくっついてゼロ距離でエンジンルームを高振動ブレードでぶち抜くようなことはしないんだよ」
「じゃあなんでこんな装備がついてるのよ」
「それはあれだろ、デブリを除去したりとか戦艦の隔壁を切り裂くとかそういう事だろ」
「じゃあこいつらの船をぶち抜くのも一緒よね?」
いや、だから一緒じゃないっての。
宙賊機からすれば通常火器だけでも危険なのに、そいつが自分の腹にぴったりとくっついたかと思たらゼロ距離で物理攻撃してくるとか恐怖以外の何物でもない。
ハッキングされて振り払う事も出来ず、そのまま装甲を貫かれてエンジンを攻撃されればあとは爆発するかもしくはエンジンが停止して窒息と凍死のどちらかが待っているだけ。
加えてゴーストシップシステムで隠れていたテネブリスが突然現れて攻撃を仕掛けてくるというドローンによる圧倒的な暴力を見せつけられているわけだ。
敵からすれば恐怖以外の何もでもないが・・・まぁ、宙賊なので仕方がない。
アリスとテネスが頑張れば頑張るほど俺の懐は温かくなる、なので同情しながらも倒さないという選択肢はない。
「おや、宙賊が反転しましたね」
「逃げるか、まぁ当然だよな」
「どれだけ頑張ってもドローンとソルアレス一機じゃあれ全部は追いかけられないわよ、どうするの?」
「相手の目的地はわかっています。元々引き受けた依頼内容は宙賊に乗っ取られた中継コロニーの破壊ですから、逃げ込んだところを制圧しましょう。とはいえ内部での戦闘ともなると我々では少々役不足、イブ様にも手伝ってもらいましょうか。残骸からのピックアップはマスターにお任せします、引き続き回収を継続してください」
「・・・これ全部か?」
「ノクティルカにはまだまだ余裕がありますのでご心配なく。ですが、もしコロニー襲撃中に満載になった場合は一度アースフォージに戻り例のハンガーへ全て搬出してから再び戻ってきてもらえばいいでしょう。あれだけの敷地を寝かせておくのはもったいないですからね」
つまり俺はコロニー襲撃の役に立たないからソルアレスからノクティルカへ移動してひたすら回収作業を続けろという事なのだろう。
ヘッドセットさえあればコックピット内でも作業は可能、内部での細かな荷物の仕分けはミニマさんがやってくれるからとりあえず周辺物資の回収を続けろというお達しだった。
キャプテンが船から左遷されるというなんとも面白い状況だが、まぁ致し方あるまい。
しばらくして離れていたノクティルカと合流、イブさんとバトンタッチして船を入れ替わる。
「なぁ、これ全部回収するん?」
「アイツらが派手にぶちまけたからなぁ、そうなる」
「・・・宙賊ってもっと怖いもんかと思ってたわ」
「いや、普通は怖いとおもうぞ。男を見れば容赦なく殺して、女は慰み者にっていうホロムービーでも見ない設定を今でもやってるからな。とはいえあいつらにかかれば赤子も同然、イブさんに関して言えばマジでコロニーを制圧できるからな、しかも一人で」
「つまりお姉様が頑張って残してくれた物をしっかり回収せなあかんってことやね」
「ま、そういうことだな。おそらくコロニーは破壊せずに無力化するだろうからかなりの物資が手に入るはずだ。とりあえず俺達の仕事はぶちまけられてるこの辺の物資を回収してアースフォージへ搬入する事。あのおっちゃんにハンガーを使わせてくれって連絡入れといてくれるか?」
「了解やキャプテン。ほな、きばっていこか!」
戦闘では役に立たない俺達でも出来る事はある。
その後は黙々と散らばった物資を回収し、一度アースフォージへと帰還。
燃料補給を行いながらオッサンのハンガーに回収した物資を全部搬出して中身を空っぽにし、すぐさま元の宙域へと移動。
わずか半日とはいえアレだけの量を搬出するとドローンを複数使っても時間がかかるもんだなぁ。
コンテナに入っているものもあればそうでないものもあるので、それらを分けるのがまた大変。
しかも一回の往復でハンガーのほとんどが物資で埋まったんだが・・・次をどうするつもりだろうか。
「目標宙域に到着、敵影は無し」
「コロニーは?」
「いまだ健在ね。あ、アリスちゃんから通信来たわよ」
「回してくれ」
ノクティルカの簡易シートに着席すると、横に設置した小さなモニターにアリスの顔が映し出された。
疲れを知らないアンティーク、12時間経っても疲れの色は見えない。
「お帰りなさいませ、お腹は空っぽになりましたか?」
「おかげさんで。それで、状況は?」
「現在宙賊コロニーを制圧中、周辺の宙賊機の無力化は完了しております。三機程めぼしい機体をピックアップしておりますのでまずはそちらの搬出をお願いできますでしょうか。コロニーはまだ時間がかかりそうなので」
「三機も!?」
「向こうも民間機を鹵獲したのでしょう。調べましたところ、そのうちの一機に報奨金が出ておりましたのでそちらに関してはそのまま遠隔で曳航して先方へ引き渡します。内部は・・・まぁお察しですが、先方もそれを了承しているようです」
「そして残り二機をノクティルカに格納、ついでに他の物資を運べってことか」
うーむ、一機ぐらい持ち帰ると思ったがまさか三機も回収させられるとは。
でもノクティルカが無かったらそれも叶わなかったわけで、マジで買ってよかったよなぁ。
「あの、お姉様は?」
「イブ様はテネスと共にコロニーに潜入、抵抗勢力の無力化をおこなっております。予想以上の抵抗を受けていますが隔壁を使って増援を防いでいるので大きな問題はないでしょう。遠隔で内部の無力化も進めておりますので、明日には完全無力化が可能です。お喜びください、内部データを確認しましたがやつらかなりため込んでいましたよ。どうやら別動隊はこれらを売るために別宙域に向かっていたようですが、途中で交渉が決裂したので戻ってきたようです。つまり、これは誰の物でもありませんのでありがたく頂戴いたしましょう」
「それ、どう聞いても宙賊のセリフだよな」
「おや?何のことだか」
「まぁいい、とりあえずもう一往復するからくれぐれも気を付けてくれ。お前らはあれだが、イブさんは人間だからな、そこ忘れるなよ」
「それに関してですが・・・いえ、なんでもありません」
何か含みのある感じだったが、とりあえずもう一往復することが確定、その間にコロニーの制圧は終わっている事だろう。
これで頼まれた依頼は無事に終了、さぁ最後の仕上げと行きますか。




