224.ドローンを有効に使って
圧倒的ではないか我が船は!
メインモニターに映し出される光景にそんな言葉が思い浮かんでしまった。
拡大された宙域MAPに点在する赤い光が宙賊、そして真ん中にいるのが囮のノクティルカだが残念ながら彼らがそこにたどり着くよりも早く黄色い光がどこからともなく表れ、特攻するかのように・・・いや、文字通り特攻してそれらを撃墜していく。
「テネス」
「みえてる!X324貰うわよ!」
「ではY22方向の機体は私がもらいましょう」
「あーもう!ちょこちょこ逃げるな!どうせ爆発するだけなんだから一緒に燃えなさい!」
その黄色い光を操っているのはもちろん我らが骨董品と違法AI。
宙賊機をハッキングして相手にぶつけるというなんとも雑な戦法ながら、確実に二機ずつ減らせるというアドバンテージに気づいてからはハッキングで応戦することを止め、ぶつけることに注力するようになった。
宙賊からすれば溜まったもんじゃないだろうなぁ、突然仲間が不審な動きをしたかと思ったら攻撃してくるだけでなく直接ぶつかってくるんだから。
当たり損ねても高速でぶつかる高質量に耐えられるわけもなく、ボディは破壊され空気が漏れてしまいよくて即死、悪くて窒息死という未来が待っている。
「マスター、手が止まっていますよ」
「ういっす」
「X27付近のマーキング物資の回収をお願いします」
「Y114の奴は近くまで持っていくからそれも回収よろしくね!」
「へいへい、がんばりますよっと」
最後にMAPに光るオレンジの光が回収するべき物資、それを大型ドローンで拾ってノクティルカまで届けるのが俺の仕事だ。
それぞれが自分の仕事を着実にこなし、開始30分にして半数の宙賊が撃墜されている。
三割が別宙域に行ったのを確認しての襲撃なので楽と言えば楽だけど、ここまで数が減れば戻ってきても特に問題なく対処できるだろう。
それよりも大変なのは物資の回収、マジでひっきりなしに運ばれてくるので全く手が追い付いていない。
大型ドローンを使いこなせると自慢した手前無様な姿は見せられないのだが、搬入しても搬入しても新しい何かが運ばれてくる。
大抵はコンテナだが、宙賊機から引っこ抜いたであろう何かである場合もある。
まぁ俺の場合は運ばれてきたのをノクティルカに送り込むだけなのだが、今頃イブさんたちはてんてこ舞いなんだろうなぁ。
「こちらソルアレス、そっちの様子はどうだ?」
「こちらノクティルカ、まだまだスペースあるからジャンジャン持ってきても大丈夫やで!」
「結構な速度で送り込んでるがなんともないのか?」
「これぐらいやったら余裕があるぐらいや。なんせお姉様がすごいから、さっきからノクティルカ内をポンポン飛び回っとんねん。なぁ、あの人何者なん?」
「スーパーできる女」
「それはわかっとるけど、あれで義体化してへんなんて信じられへんわ」
流石のミニマさんもイブさんの仕事っぷりに若干引き気味のようだ。
まぁ気持ちはわかる、明らかに人とは違う動きしてるし、新しいことをした時の反応速度っていうか順応速度が規格外だ。
それを何故、と言われても答えに困るがアリス曰くなんらかの強化を施されていると言うことだけはわかっている。
もちろん口外できない秘密ではあるけれども、ほんと謎の多い人だ。
その後も運ばれてくる物資をノクティルカへ運び続けること二時間ほど、メインモニターの宙域MAPに映されている赤い光点はもはや数える程しかなかった。
その代わりに無数のオレンジ色の光点がそこらじゅうに散らばっている。
最初は近くまで運んできてくれた彼女たちも、倒すのに忙しくなるとその場に放置してしまうので回収に行くのが大変になってきた。
やれやれ、キャプテン使いが荒いなぁ全く。
「マスター」
「どうしたアリス」
「敵別動隊があと10分ほどで到着します、念のためドローンを収容してください」
「10分?予定より早くないか?」
「どうやら途中で引き返したようですね。救援要請が入る前に引き返したので何かしらのトラブルがあったのではないでしょうか」
まぁそれに関してはこちらでは関知できない部分なので致し方ないが、今増えられると仕事が更に増えてしまうわけで。
ただでさえアップアップな状態なのにこれ以上となると・・・、いや、弱音を吐いている場合じゃない。
急ぎドローンをソルアレスに収容してヘッドセットを外す。
見るなれたコックピット、いつもならローラさんが操縦席にいるのだが、今回はノクティルカの方に回ってもらっているので、いつものようなポテンシャルを発揮できないのだが、どうするつもりなんだろうか。
「大丈夫なのか?」
「やることは同じですから。ですがローラさんのように繊細な操縦ができるわけではありません、多少の揺れはご了承くさい」
「それぐらいは問題ない。だがかなりの数みたいだぞ?」
「どうやら予定よりも多くの宙賊機が別宙域に向かってたみたいね、通りで戦いやすかったわけよ」
「予定よりって、元の数より多くないか?」
最初は3割と聞いていたのに、どう見ても最初と同じもしくは倍以上の赤い光点が表示されている。
いくら同時ハッキングとはいえこれだけの数を相手に大丈夫なんだろうか。
「こちらソルアレス、ノクティルカ応答願います」
「こちらノクティルカ、どうしたん?」
「想定より多くの宙賊機がこちらへ向かっています。予定を変更、ノクティルカは今すぐ作業を中断して宙域からの移動を開始してください」
「それはかまへんけど大丈夫なん?」
「問題ありません。ローラ様、回収ポイントは追って知らせます、最大速度で離脱をお願いします」
「わかったわ、くれぐれも気をつけてね」
「そっちもな」
シールドのあるソルアレスはまだしもノクティルカはある意味丸裸、今ならまだ奴らの餌食になることもないだろう。
それにこっちも万全の状態じゃない、彼らを守りながらっていうのは間違いなく無理なので離れてもらった方が助かる、と言う判断なんだろう。
夜のクジラの口が閉じ、ゆっくりと後方へと向かっていく。
残されたのは無数の残骸とそれをしでかした張本人だけ。
「接敵まであと3分」
「で、これだけの数を相手にどうするんだ?」
「やることは同じです。ハッキングして相手を同士討ちさせつつ数を減らします。ただ、想定より数が多いので別プランを検討しようかと」
「と言うと?」
「マスターには黙っておりましたが、今回大型ドローンの他に大型戦闘用ドローンも3機ほどレンタルしております。実弾は実費となりますがこれだけの獲物がいれば十分プラスにはなるでしょう。ハッキングと同時に運用して殲滅を図ります」
なるほど大型戦闘用ドローンね。
俺には使わせないと言っていたけど、自分達はしっかり使うわけか。
別にそれは問題ないし、黙っていたこともまぁいつものこと。
問題はどう言う理由で借りたかだよな。
「大型を三機とは保険にしては規模がでかいな」
「使用しないつもりでしたが状況が状況ですので」
「なら仕方ない」
「え、怒らないの?勝手に三機も借りてたんだよ?」
「別に怒る理由もないだろ。俺を守るために準備していただけだし、実際役に立ちそうだしな。もちろんアリスのことだから戦闘用データを取って自分達で作ろうとかそんなことは考えてないだろうし、ましてや借りた試作品三機の戦闘データをメーカーに売ろうとかそんな事も考えてないよな?」
そこまで言い切ってアリスの方を見るといつも通り済ました顔で笑顔を浮かべるだけだった。
「・・・・・・」
「何か言えよ」
「敵機接近、戦闘準備に入ります。マスターは着席して静かにお待ちください」
「後で先方からもらう報酬の明細を出せ。改竄するなよ、したら買ってやらないからな」
「かしこまりました、戦闘が終わり次第早急に提出いたします」
アリスがいつも以上に深々と頭を下げると同時にカーゴ方から何やら騒がしい音がしてくる。
荷物がないのでカーゴはスカスカ、それを勿体無いとか思ったんだろうなぁ。
「アンタも何だかんだ慣れてきたわよね」
「そりゃこいつのマスターだからな」
「ふふ、少しだけ見直したわ。それじゃあ激しく動くからシートベルト忘れないでよ」
「了解」
さぁ、アンティークと違法AIによるドローンショーの始まりだ。
果たしてどんな光景が広がるのやら。




