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35歳バツイチオッサン、アーティファクト(美少女)と共に宇宙(ソラ)を放浪する   作者: エルリア


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143/259

143.先方の提案をお断りして

メタリア・ダイナミクス。


知る人ぞ知る超有名ヒューマノイドメーカーの一つで、日常用から軍事用まで様々な用途で用いられている。


高品質低価格、デザインもさることながら実用性も兼ね備えていて今やこのメーカーのヒューマノイドを見ない日はないというぐらいに普及しているのは間違いない。


ここに就職すれば一生安泰、そういわれるぐらいの超有名企業、そんな大企業の社長がまさかこんな幼いなんて誰が想像できただろうか。


しかもその人がなんの恥ずかしげもなく35になったオッサンの腹に抱きついてくるんだから・・・俺、捕まらないよな?


「社長、その方はキャプテンです」


「あれ?」


「お話しした通りアンティーク本人は来社できなかったようですので、代わりに別のボディでご来社いただけたようです。ひとまず中までご案内しませんか?」


「仕方ないからそうしてあげる。あーあ、本物見たかったなぁ」


「では皆様奥へどうぞ」


何事もなかったかのように俺達を中へ誘導する白衣の男性。


いや、いきなり社長が抱き着いてきたのはスルーかよ。


あっけにとられるローラさん達と顔を見合わせ、しずかにうなずきあってから部屋の中へ。


ビルのワンフロア全てが社長室になっているんだろう、部屋の奥はガラス張りになっており眼下にはさっき歩いてきた大通りが小さく見える。


そして真正面の巨大な社長机的なところに面白くなさそうな顔をした先程の少女が座っている。


「そんな怖い顔しなくても大丈夫だよ、別に何もしないから。本当は本物に来てほしかったんだけどなぁ。だから私が行くって言ったのに」


「それをするとキャプテンも含め皆様にご迷惑が掛かります。迎えを出すという手もありましたが、他人の目もありますのでこのような手段を取らせていただきました。私は声帯付きのボディを手配いたしますので少し席を外しますが・・・くれぐれも粗相のないようにお願いしますね、社長」


「言われなくてもわかってるもん。ってことだから、みんな気楽にしていいよ」


いや、気楽にしていいよと言われてもこんなデカい部屋で一体どうしろっていうんだよ。


戸惑っている俺とは対照的にアリスが俺の頬を引っ張り机の前に行くように促される。


仕方なく彼女の前に移動すると、アリスがぴょんと机の上に飛び降りて少女の前で優雅に一礼した。


「貴女がアンティークちゃんね。主人の命令なく自分の意志で動くなんて・・・昔の技術って本当にすごいなぁ。私達がどれだけ手を加えても自我までは与えられないもん」


「彼女はアリスだ。俺はトウマ、そして後ろにいるのがイブさんとローラさん。今日はお招きいただき感謝する」


「別にそんなかしこまらなくてもいいよ。見た通り私の方が年下だし、別に社長だからって偉いわけでもないから」


「こんなに小さいのに、すごいと思います」


「みんなそう言うけど私は自分に出来ることをしてるだけだし」


褒められているのに素直に喜ばないのはこの子が擦れているのか、それとも本当にそう思っているのか。


なんにせよ見た目はこんなでもこれだけの会社の社長なのだとしたら、それはすごいことだ。


「貴女は本当にヒューマノイドが好きなんですね?」


「え?」


「いや、アリスが・・・そのヒューマノイドがそう言えって」


「この子が、アリスさんがそういったの?」


「あぁ。なんでも色々と調べてみたけど販売されているどの種類も愛情が籠っていることがわかるんだってさ。ほかのメーカーは狙って作ってる感があるけど、ここのボディはどれもそういうのを感じさせない裏通りの職人と一緒だってさ」


「・・・うれしい」


そういったかと思ったら突然ぼろぼろと涙を流し始める少女。


いや、なんでそれで泣くんだ!?


助けを求めるように後ろを振り返ると、そこには別のヒューマノイドを抱えた白衣の男性の姿があった。


違う、俺じゃないと弁解する間もなくまっすぐに向かってくると、少女の頭をやさしく撫でた。


「そうですか、やっとほかの人にも認めてもらえたんですね」


「うん、やっぱりわかる人にはわかるんだね」


「だからそういったじゃありませんか。我々アンティークには分かるものなんです」


「ん?」


今この人なんて言った?


我々アンティーク?


そんな俺達の動揺に気づいたのか彼はこちらを向くと静かに頭を下げる。


「ご挨拶が遅れました。私はオズ、主人であるドロシーに仕えています。世間で言うアンティークヒューマノイドというやつですね」


「は?」


「やはりそうでしたか。なにやら近しい雰囲気がありましたが、同類に会うのはかなり久々です」


「アリス?」


「せっかく持ってきていただいたのでこちらのボディを使わせてもらいます。これは・・・わるくありませんね、メタリア・ダイナミクスの最新式ですか?」


「そうです。あぁ、アンティークが私のボディを褒めてくれてる・・・こんな夢みたいなことあっていいの?」


声は違うが話し方は間違いなくアリス、その反応だけで再び涙を流す少女。


だめだ、何が何やらさっぱりわからん。


誰か俺に説明してくれとイブさん達の方を見るも二人もまた同じ反応のようだ。


メタリア・ダイナミクスの社長室に案内されてからわずか数分、この間に衝撃の事実が出まくって情報の処理が全く追いつかない。


それからしばらく泣き続けた少女だったが、少し落ち着いたのか白衣の男性にハンカチを貰って大胆に顔を拭き涙をぬぐった。


「はぁ、すっきりした」


「そろそろ本題に入りましょう、頂戴したメッセージによれば新作のヒューマノイドを見せていただけるという事でしたがこれがそうなんですか?」


「そうよ、まだ発表前の最新作なんだから。自分で言うのもなんだけど今までで一番の出来だと思うんだよね。聞けば工房街にも行っていたってことだから新しいボディを探しているんでしょ?もしよかったら使ってみない?」


「確かに素晴らしいボディではあります。内部チップも最新、スペックも非常によくボディの稼働も非常になめらか。それでいて従来品よりも出力が上がっていますから少々重い物でも運べそうです。価格は・・・2000万ぐらいでしょうか」


「それぐらいで販売できればと思っていますが、実際はもう少し高くなるかと。最近はチップの高騰が激しくて思うように値段を下げられないんです」


最新式のヒューマノイドが2000万。


昨日の職人通りで見たのがそれぐらいだったから決して高いというわけじゃないんだろう。


実際に手を動かし、体を動かし、色々と稼働を試しながらの答えなのでアリス的にも満足のいくボディのようだ。


それを軽く使ってみない?っていうあたり考え方が庶民と違い過ぎる。


だが普通に考えてタダってことはないだろう。


彼女たちは一体何を考えているんだろうか。


「そんな高価な物を提供していただけるというのは非常にありがたい申し出ですが、その見返りに私達は何をすればいいんですか?」


「理解が早くて助かります。私たちの希望は貴女の調査、オーバーホールも兼ねて一度内部を確認させていただけないでしょうか。おそらく初期オリジナルモデルですよね、後期に作られた私とどのぐらい違うのかぜひ調べさせてもらえませんか?」


「その見返りとしてそのボディは好きに使っていいよ。決まりとして標準AIは入ってるけど、貴女なら問題なく操作できるでしょ?私達は貴女の調査をもとにより良い商品を提供し、貴方達は最新式のヒューマノイドボディを手に入れることができるんだから悪くない話だよね?」


アリスを調査する代わりに2000万のボディをただでくれるとはなんとも太っ腹じゃないか。


しかも世に出ていない最新式、それならテネスを入れても全く問題はないだろう。


やはり基本AIが入っているので常にハッキングする形にはなるようだけど、初期作品なら特に問題ないというのが向こうの見解らしい。


確かにいい話だ。


2000万を支払わなくてもいいってのもあるし、なにより向こうのやる気が違う。


俺達と一緒にいい物を作りたいそういう気持ちがひしひしと伝わってくる。


伝わっては来るけれども・・・。


「そういう事ならお断りだ」


期待に満ち溢れた目を向ける彼女たちに向かってそう言い切った。

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