第7話 〜(蒼視点)ロスト・メロウ〜
放課後。
教室には夕陽が差し込み、机や椅子の影を長く伸ばしていた。
僕は廊下の窓際に寄りかかりながら、ぼんやりと校庭を眺めていた。
その少し先。
誰もいない教室で、陽人と美咲が向かい合っている。
見ようと思ったわけじゃない。
でも目が離せなかった。
美咲は真っ直ぐ陽人を見つめていた。
迷いなんて一切ない顔で。
そして……
「陽人くんが好きです。」
はっきりとした声が聞こえた。
「私と付き合ってください。」
胸の奥が小さく軋む。
……やっぱりか。
そう思った。
美咲がサッカー部のマネージャーになった時から、なんとなく分かっていた。
あの子の視線はいつも陽人を追っていたから。
明るくて。
積極的で。
誰からも好かれて。
かわいくて。
人気者で。
勉強もできて。
教室にいるだけで自然と視線を集めてしまう。
そんな存在だった。
眩しかった。
僕には。
あまりにも。
勝てる要素なんて一つもない。
最初から勝負にすらなっていなかった。
完全敗北。
そんな言葉が頭に浮かぶ。
教室の中で陽人が少し困ったように笑った。
頭を掻いて。
少しだけ考えて。
そして答える。
「……うん。」
美咲の表情がぱっと明るくなる。
陽人は続けた。
「付き合ってみようか。」
その瞬間。
僕はゆっくり目を閉じた。
……当たり前だ。
陽人だって美咲が好きだった。
何度も相談されていた。
何度も背中を押した。
断る理由なんてない。
最初から分かっていた結末だ。
分かっていたはずなのに。
どうしてこんなに苦しいんだろう。




