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第10話 〜(美咲視点)微かな疑念〜

「やったぁぁぁぁーーーっ!!」


ベッドの上に飛び込んで、私は枕を抱きしめた。


顔が熱い。

頬が緩む。


というか、もうニヤニヤが止まらない。


だって。

だって!


「付き合えたぁぁぁぁ!!」


思わず足をバタバタさせる。


誰も見ていないのに、恥ずかしくて枕に顔を埋めた。


陽人くんと。

私が。

付き合ってる!


恋人同士。

彼氏と彼女。


「きゃああああああ!」


自分で想像して、自分で叫ぶ。


無理。

嬉しすぎる。


告白のことを思い出すだけで心臓がうるさい。


『陽人くんが好きです』


『私と付き合ってください』


言った。

言っちゃった。


人生で一番勇気を出した。

あの時は緊張しすぎて死ぬかと思った。


でも。

陽人くんはちゃんと答えてくれた。


『……うん。付き合ってみようか』


うん。

うんって言ったの!


付き合ってみようかって!


もう何回思い出したか分からない。

思い出すたびに顔が熱くなる。


「陽人くん、かわいすぎるでしょ……。」


枕を抱きしめながら呟く。


本当に好き。

大好き。


優しくて。

真面目で。

ちょっと鈍感で。


笑うとかわいくて。

サッカーしてる時は格好良くて。


全部好き。

本当に全部。


私はベッドの上で転がりながら、小さく笑った。


そして、ふと思い出す。

蒼くんのことを。


「……。」


静かに天井を見る。


私は知っていた。

ずっと前から。


蒼くんが陽人くんを見る目を。


サッカーの練習中。

授業中。

放課後。


蒼くんの視線は、いつも陽人くんを追いかけていた。


あんな目。

見間違えるはずがない。


恋をしている人の目だった。


それも。

とても長い間。


ずっと。


ずっと。


想い続けてきた人の目。


だから私は気づいていた。

蒼くんも陽人くんが好きなんだって。


放課後、二人で夕陽を見ている姿を何度か見たことがある。


その時の蒼くんの横顔は、今でも覚えている。


苦しそうで。

切なそうで。


でも幸せそうだった。


きっと。

陽人くんが好きだったから。


「……でも。」


私は小さく呟く。


負けるつもりなんてなかった。

恋に順番なんて関係ない。


先に好きだった方が勝つわけじゃない。


言葉にした人がいる。

行動した人がいる。

手を伸ばした人がいる。


私はその全部をやった。


だから。

今、陽人くんの隣にいるのは私だ。


「負けないもん。」


誰に言うでもなく呟く。


私は陽人くんが好き。

本気で好き。

誰よりも好き。


だからちゃんと伝える。


好きだって。

何度でも。


毎日でも。


恥ずかしくなるくらい。

まっすぐに。


それが私のやり方だから。


だけど……。


少しだけ。

本当に少しだけ。

気になることもあった。


私が抱きついた時。

陽人くんは一瞬だけ固まる。


本当に一瞬だけ。


すぐに笑ってくれるけど。

どこか戸惑っているようにも見える。


キスだって、まだしていない。


手は繋ぐ。

デートもしてくれる。


優しい。

本当に優しい。


でも。


「……。」


胸の奥が少しだけざわつく。


陽人くんは優しすぎる。


だから時々。

私を好きだから優しいのか。


それとも。

傷つけたくないから優しいのか。


分からなくなる。



「いやいや!」


私は首を振った。


ネガティブ禁止!

そんなの考えても仕方ない。


陽人くんは、ちゃんと私を選んでくれた。

今はそれで十分だ。


私は笑う。


大丈夫。

焦らなくていい。


陽人くんは真面目だから。

きっと時間が必要なんだ。


私は待てる。

いくらでも待てる。


だって。

好きだから。


「絶対に幸せにしてみせるんだから。」


そう呟いて、胸の前で拳を握る。


蒼くん。


あなたがどれだけ陽人くんを想っていたとしても、私は負けない。


私だって本気だから。

私だって命がけで恋をしているから。


だから見ていて。


いつか。

いつか必ず。

陽人くんの心を全部、私の方へ向かせてみせる。


窓の外では、夜空に一番星が輝き始めていた。

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