第9話 どエロタイガーの咆哮と、泥沼のスキャンダル・パレード
「おいおい、ババア。マジでうぜぇんだけど。……やっちゃうか、こいつ」
不良の一人が、ひよりの肩を突き飛ばそうと手を伸ばした、その時。
「……俺のマネージャーに、気安く触らないでくれる〜?」
夜の静寂を切り裂くような、低く、冷ややかな声。
そこには、フードを深く被り、狂気を孕んだ瞳でこちらを射抜く――『レオン』が立っていた。
「た、レオンさん……!?」
「……ひより、下がって。……さぁ、夜の遊び方を教えてほしいんだろ? 相手になってやるよ、野良犬ども」
健人は一瞬で『どエロタイガー』を召喚した。……いや、中身はジーク様の戦闘モードだ。
無駄のない動きで不良の腕を捻り上げ、壁に叩きつける。その圧倒的なオーラと「本物の色気」に、半グレ予備軍たちは悲鳴を上げて逃げ出していった。
「レオン……すげー……」
呆然とするヒナに、健人はレオンの顔のまま、静かに、けれど厳しく告げた。
「ヒナ。……お前の本当の姿は、これなのか?」
コンビニの裏、街灯の下で、ヒナは震える声で告白し始めた。
彼は『日向財閥』の末っ子。完璧で男前な兄に憧れていたが、家族からも事務所からも求められたのは、末っ子としての「可愛いキャラ」だけだった。
「……かっこよくなりたかった。でも、誰も『ヒナくん可愛い』しか言ってくれない。だから、こういう連中と……。でも、本当は縁を切りたいんだ。あいつら、実は半グレと繋がってて……脅されてるんだよ」
「半グレ……!?」
ひよりと健人は顔を見合わせた。そんなのがバレたら、スカイさんの「家族の未来」どころか、事務所ごと爆発する特大スキャンダルだ。
「……分かった。なんとかしよう。とりあえず、今日は俺たちの家に――」
「えっ!? 健人くん、今『俺たち』って言った?」
健人は、ひよりを守る一心で口走ってしまった。
「ああ。……今、ひよりとは同居してるんだ。安全のために」
「…………は?(ドン引き)」
ヒナの目が点になる。
「いや……。俺の半グレ繋がりも特大スキャンダルだけどさ……。現役トップアイドルがマネージャーと一つ屋根の下って、それ、アイドルとして『詰み』じゃねーの!? 俺より終わってるだろ!!」
「……あ」
健人は顔を真っ赤にしてフリーズし、ひよりは夜空を見上げて遠い目をした。
こうして、秘密を共有する「共犯者」がまた一人、しかも最高に面倒な御曹司の末っ子が加わることになったのだ。




