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砂漠転生  作者: タマリンド
第1章 砂漠脱出編
26/34

第26話 灼熱行軍

 第27話です。


 死砂の大平原。

 昼は灼熱、夜は静寂。

 タクミは砂漠の歩き方を変えていく。


 

 昼の砂は狂っていた。


 タクミはブーツの先で砂を軽く蹴る。


 白い粒が崩れ、下の砂が現れる。


 じり、と熱が伝わった。


「……うわ」


 反射的に足を引く。


 焼けた鉄みたいだった。


 空を見上げる。


 太陽が真上に張り付いている。


 風はない。

 外套の裾も動かない。


 タクミは外套のフードを深く被った。


 だが、それでも暑い。


 背中の汗がじわりと広がる。


「……やっぱり昼は無理だな」


 ぽつりと呟く。


 歩けないわけじゃない。

 だが、体力が削られる。

 歩く意味がない。


 タクミは周囲を見回す。


 白い砂。

 白い地面。


 遠くに小さな岩が見える。


「久しぶりに見たな……岩」


 そこへ向かって歩いた。


 ザッ。

 ザッ。


 ブーツが砂を踏む音。

 それだけが響く。


 岩の影に入る。


 小さい影だったが、直射日光は避けられる。


「……ここしかない」


 バックパックを下ろす。


 サンドワーム皮のバックパックが砂に沈む。


 タクミは岩にもたれた。


「昼は休む」

「夜に歩く」


 それだけ言った。


 白い砂の地平線を見る。


 何もない。


 砂。

 空。

 地平線。


 ずっと同じ景色だった。


「……長いな」


 小さく息を吐く。


 タクミはバックパックを開いた。


 干し肉を取り出す。


 ロドスの干し肉。


 一口齧る。


 硬い。

 獣臭が口に広がる。


 だが慣れた味だ。


 噛みながらバックパックの中を覗く。


「……減ったな」


 干し肉の数が少しずつ減っている。


 当たり前だ。

 食べているのだから。


 だが。


「……心もとないな」


 小さく呟く。


 白い砂漠を見渡す。


 何もいない。

 魔物の気配もない。


「ワームすらいない……」


 苦笑する。


「あいつ、今なら歓迎するぞ」


 砂を見つめる。


 だが動きはない。

 静まり返っている。


「……ヤバいな」


 ぽつりと漏れる。


 干し肉をもう一口齧る。

 飲み込む。


「詰んだか?」


 誰もいない砂漠に呟く。


 しばらく沈黙。


 タクミは頬を軽く叩いた。


 パン、と乾いた音。


「いや」


 首を振る。


「諦めるな」


 もう一度叩く。


 パン。


「諦めたら終わりだろ」


 立ち上がる。


 その時だった。


 外套が視界に入る。


 タクミは自分の外套を見た。


「……ん?」


 外套を引っ張る。


「これさ」


 少し首を傾げる。


「法衣と重ね着したらどうなるんだろ?」


 バックパックを開く。


 中から折り畳まれた布を取り出す。


 大樹司祭の法衣。


 タクミは外套を脱いだ。


 そして法衣を広げる。


「……よし」


 腕を通す。


 その上から外套を着る。


 フードを被る。


 その瞬間。


「くっ……」


 顔をしかめた。


「臭え」


 思わず口に出る。


 法衣の臭いが立ちのぼる。


「くっさ……」


 顔をしかめる。


 だが。


 次の瞬間。


「……ん?」


 タクミは瞬きをした。


 風がない。

 だが。

 体が涼しい。


「……お?」


 腕を動かす。


 熱がこもらない。


「なんだこれ」


 もう一度腕を動かす。


 汗の感覚が違う。

 熱が抜けていく。


「……めちゃくちゃ涼しいぞ?」


 外套を触る。

 法衣を触る。


「重ね着効果ありなのかよ」


 思わず笑った。


 タクミは外へ出る。


 白い砂の上に立つ。


 太陽は相変わらず凶悪だった。


 だが。


「……いけるな」


 小さく呟く。


 完全に快適ではない。

 それでも、さっきより遥かに楽だった。


 タクミは地平線を見る。


 白い砂。

 終わらない世界。


「……よし」


 バックパックを背負う。


 ブーツで砂を踏む。


 ザッ。

 ザッ。


 タクミは歩き出した。


 孤独な行軍。

 それでも足は止まらない。


(経過日数:194日)


 砂漠転生をお読みいただきありがとうございます。


 第26話「灼熱行軍」でした。


 砂漠での小さな発見。

 生き延びるための工夫は続きます。

 タクミの旅はまだ終わりません。


 次回、第27話「砂下の捕食者」


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