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砂漠転生  作者: タマリンド
第1章 砂漠脱出編
22/34

第22話 往時の外套


 第22話です


 城塞遺跡を見つけてから、数日。

 井戸の水は生きている。

 だが、城塞の中は死んだように静かだった。

 タクミは五日間、ただ歩き回っていた。


 

 砂に埋もれた城塞は広かった。


 外城壁。

 兵舎区。

 中央広場。


 崩れた石の通路を、タクミはゆっくり歩く。


 靴底が砂を擦る音だけが響いた。


 倉庫区。

 神殿。

 司令塔。


 見渡す。


 崩れた棚。

 折れた柱。

 空っぽの石箱。


 散乱した錆びた刀身。

 おそらく元は鉄剣。

 どれも原型を留めていない。


「……何もねえな」


「謎金属アダマンタイトの剣とか期待してたんだがな……」


 井戸の縁に腰を下ろす。


 石を拾う。


 ぽい、と投げた。


 数秒。


 ポチャン。


「生きてる井戸か」


 井戸の底は見えない。


 水はある。


 問題は――


「……どうやって汲むんだ」


 桶がない。

 ロープもない。


 城塞を五日探した。


 それでも見つからない。


 タクミは井戸横の建物に目をやった。


 天井はない。


 だから作った。


 城塞の瓦礫から板を拾う。

 壁に渡す。


 簡単な屋根。


 日差しは多少防げる。


「まあ……住めば都だな」


 仰向けになる。


 空は真っ白だった。


 しばらくぼんやり眺める。


「……」


 むくりと起き上がる。


「もう一回見るか」


 城塞の入口へ歩いた。


 崩れた外城壁。


 瓦礫。


 砂。


 立ち止まる。


「……ん?」


 影。


 石の隙間。


 しゃがみ込む。


「入口?」


 半分埋もれている。


 瓦礫で塞がれた穴。


 タクミは袖をまくった。


「よし」


 石を持ち上げる。


 ゴトン。


 また一つ。


 ゴトン。


 また一つ。


 丁寧にどける。


 石は大きくない。


 ただ詰まっているだけだ。


 地味な作業。


 それでも体は軽い。


「営業なめんな」


 石を運ぶ。


 積む。


 また運ぶ。


 汗が落ちる。


 砂に染み込む。


 影が少しずつ伸びていく。


 やがて――


「……よし」


 最後の石をどけた。


 穴が開く。


 ぽっかりと。


 しゃがみ込む。


 中は暗い。


「狭いな」


 法衣を頭から被る。


「サンドヴァイパーいないよな?」


 体を滑り込ませた。


 ザッ。


 砂が鳴る。


 ザッ。


 足音が響く。


 埃が舞う。


「げほっ……!」


 思わず咳き込む。


 目を細める。


 入口の光。


 夜目が慣れてくる。


 部屋は小さい。


 中央に机の残骸。


 脚が一本だけ残っている。


「……」


 視線を巡らせる。


 壁。


 砂。


 瓦礫。


 何もない。


「外れか」


 踵を返そうとした。


 ――右奥。


 壁際。


「ん?」


 しゃがむ。


 砂を払う。


 布。


 厚手の。


 半分埋まっている。


「布?」


(八百年だぞ)


 眉をひそめる。


 それでも掴む。


 持ち上げる。


「重いな」


 外へ出た。


 日差し。


 眩しい。


 布を振る。


 バフッ。


 砂が舞う。


 バフッ。


 埃が舞う。


「げほっ!」


 咳き込みながら広げる。


「……外套か」


 長いマント。


 フード付き。


 外側に紋章。


 おそらくサラトニア王国の紋章だ。


「ワイバーン」


 指でなぞる。


 内側をめくる。


 刺繍。


 円形の魔法陣。


「お」


 見覚えがある。


 劣化防止。


 温度調整。


 さらに文字。


「ゴント工房作」


 銘入り。


「当たりか」


 色はグレー。


 元は白だったのかもしれない。


 くすんでいる。


 だが綺麗だ。


「ヴィンテージってやつだな」


 外套を羽織る。


 フードを被る。


 その瞬間――


 スゥッ。


 空気が変わる。


 焼けるような熱。


 遠ざかる。


「……おお」


 思わず声が漏れた。


 涼しい。


 日陰に入ったみたいだ。


 腕を動かす。


 布は軽い。


「法衣より上だな」


 城塞を見渡す。


 砂の海。


 崩れた塔。


 静かな廃墟。


 タクミは肩をすくめた。


「まあ……」


 小さく笑う。


「当たり前か」


 外套の裾を払った。


「軍用品だ」


(経過日数:108日)



 砂漠転生をお読みいただきありがとうございます


 第22話 「往時の外套」でした。


 城塞遺跡探索、最初の収穫。

 タクミが手に入れる軍用アーティファクト。

 砂漠の旅は、まだ続く。


 次回、第23話「蛙の軍靴」


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