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59話 虎の巣穴へ

 カタカタカタと車輪が回る音。

 ゆっくりと後ろに流れていく窓の外の景色。


「……」


 馬車の車内。

 向かいに座るナナは、緊張した様子で顔を強張らせていた。


 背筋はまっすぐに。

 ただ、そのままピタリと動かず。

 膝の上に揃えた手は、ぎゅっと握りしめられている。


「大丈夫?」

「……」

「ナナ?」

「え? あ、はい!?」


 声もちょっと裏返っていた。


 うーん、ものすごく緊張しているみたいだ。

 でも、それも仕方ないか。

 これから敵であるエルネストの屋敷に向かうのだから。


「わ、私……ちゃんとやれるでしょうか?」

「大丈夫、落ち着いて」

「そ、そうしないといけないんですけど、うぅ……失敗した時のことばかり考えて、悪いことになる未来ばかり考えてしまって……」


 ……先日、皆で話し合い、出した結論。

 それは、あえてエルネストの懐にナナが飛び込む、というものだった。


 ナナは、今までずっとエルネストの誘いを断り続けてきたらしい。

 そんなナナが誘いに応じたとなると、エルネストは歓喜するだろう。

 気が緩み、大きく油断するだろう。


 そこに、ナナが一つの罠を仕掛ける。


 それがうまくいけば、エルネストの罪を公にすることができる。

 確かな証拠を作ることができる。


 ただ、俺達は間接的な手助けをすることしかできない。

 深く関わることができない。

 エルネストが固執するナナだからこそ、できることだから。


 ナナに全てがかかっていて。

 それ故に、大きな緊張を感じているみたいだ。


 一応、俺とシオンも執事とメイドに扮して同行する。

 とはいえ、従者という立場上、いつでもサポートできるわけじゃない。

 もしも俺達がいない時に問題が起きたら……?

 という不安はある。


 緊張して当然だ。


「……やっぱり、やめておく?」

「え?」

「今回のことが成功すれば問題を解決できるかもしれないけど……でも、やっぱり危険が大きいと思うんだ」

「私も、ご主人様と同意見です。ナナさんが無理をする必要はありません」

「……ありがとうございます」


 ナナは緊張した様子で。

 でも、まっすぐ前を見て言う。


「お二人が心配してくれて、とても嬉しいです」

「なら……」

「でも……これは、私の問題ですから。いつまでも皆さんに甘えていられません。私も……逃げるだけじゃなくて、立ち向かわないと」

「……ナナ……」

「うまくいくかどうか、わからないですけど……でも、がんばらないと! ……ですっ」


 ぎゅっと、小さな拳を握る。

 そんなナナの決意を見て、余計なことだった、と反省する。


 ナナは弱くなんてない。

 むしろ、強い。


 そこを見えていなかったというか。

 見誤っていたというか。


「ダメ……でしょうか?」

「いいえ、そんなことはありませんよ」


 シオンが微笑みながら言う。


「とても立派だと思います」

「本当ですか……?」

「はい。むしろ、私達の方がナナさんを過小評価していたことを謝罪しなければいけず……申しわけありません」

「あ、い、いえ!? そんな……」

「ナナさんがそれほどの覚悟を抱いているのなら、私達はもうなにも言いません。全力でお手伝いをさせていただくだけです……ですよね、ご主人様?」

「うん、そのとおりだ」


 言いたいこと、全部、シオンに言われてしまった。


「一緒にがんばろう、ナナ」

「はい!」

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