58話 確かな証拠
ナナを狙う、エルネスト・ルア。
彼の問題を解決するには、確かな証拠が必要だ。
理不尽に。
暴力的に。
悪意的に。
ナナを狙い、悪辣な方法で自分のものにしようとしていること。
それを誰もが理解して納得できるように、証拠を手に入れなければいけない。
どうするべきか?
俺とシオンはあれこれと話し合い。
ナナの両親と話し合い。
そして、ナナ本人にも話し合いに参加してもらい……
一つの答えに辿り着いた。
それは……
――――――――――
「……それは本当か?」
エルネストの屋敷。
私室でとある報告を執事から受けたエルネストは、喜びの笑みを浮かべる。
それもそのはず。
最愛の想い人。
運命で結ばれることが決まっている。
その全てが自分のものになることが世界の理である。
ナナ・イングリッド。
エルネストの運命の相手であり……
しかし、その想いは一方通行で勝手なおしつけ。
歪んだ愛。
それが今、ようやく叶おうとしていた。
「はい、確認をしたので間違いありません」
「……ナナ嬢の方から私との会食を望んできたのだな?」
「はい」
「間違いないな?」
「ございません。数度、確認いたしましたので」
「……そうか」
エルネストは再び笑みを浮かべた。
これまで、何度もナナに想いを伝えてきた。
すぐに一緒になろう、と。
それが運命だから、と。
しかし、ナナはなかなか素直になれず、シャイな性格をしているらしい。
エルネストの想いにはっきりとした返事をすることはなかった。
ただ、ここに来て流れが変わった。
ようやくエルネストの想いに応えてくれるようになった。
単に、前々から何度も求めていた会食に応じただけ、ではあるのだけど……
エルネストは、そんな単純なことではないと捉えていた。
ナナは、会食だけが目的ではないはず。
エルネストの想いに応えることが本来の目的。
おそらくは……
食事をして。
歓談をして。
それから、最後にその可憐な身を捧げてくれるのだろう。
……と。
エルネストはとても気持ち悪く、自己中心的で、身勝手な妄想を繰り広げていた。
そんなことを本気で考えて。
なにかの間違いではなくて、絶対的に正しくて。
そうしてしまうのが、エルネスト・ルアという男だ。
「……ふぅ」
満面の笑みを浮かべる主を見て、執事はバレないように吐息をこぼした。
正直、執事もドン引きであった。
エルネストは、未だ跡継ぎがいない。
故に、相手を求めることは必要なことであり、そこは積極的に行ってもらいたいところではあるが……
自分の半分も生きていない相手に求婚するのは、さすがに予想外だ。
世の中、政略結婚というものがある。
家と家の思惑が最優先されて、当人達の意思は関係ない。
そういったものであれば、歳の離れた結婚もありえないことではないが……
単純な恋愛としてまだ幼い女の子に求婚するというのは、ちょっと……という話になる。
とはいえ、エルネストは我が主。
執事が口を出せるような問題ではなくて、ただただ静かに見守るしかない。
できるのなら。
この話がうまくまとまりますように……
そして、主が落ち着いて、執務に前向きになるように。
執事はそう願うのだけど……
しかし、その願いが叶うことはないのだった。




