46話 どこにでもいるような困ったもの
シオンと一緒に泳いで。
砂遊びをして。
大きな浮き輪をレンタルして、のんびりして。
いっぱいに海を満喫する。
まだまだ旅の途中だけど……
たまには、こうして息抜きをしないと。
シオンも笑顔で、とてもいい経験になっていると思う。
「そろそろ昼にしようか?」
「はい、かしこまりました。本当なら、私がお弁当を作ってこれればよかったのですが……」
「街についたばかりだし、気にしないでいいよ。それに……」
空を見上げると、燦々と輝く太陽。
「今日は暑いからね。しっかりと対策をしないと、弁当が傷んでいたかも。どこかの店で食べるのが、まずは一番かな」
「はい、そうですね」
俺とシオンは、海水浴場には必ずと言っていいほど作られている、海水浴場専用の食堂に足を運んだ。
要するに海の家だ。
凝った料理はない。
見慣れたものばかりで、しかも、わりと手抜きが多い。
でも、場の雰囲気がプラスされるせいか、けっこう美味しいんだよな。
――――――――――
「……やばいね」
「……はい、やばいです」
海の家で昼を食べた俺とシオンは、ちょっとぼーっとしていた。
というのも、ごはんが思っていた以上に本格的で、すごく美味しかったからだ。
海の家は初めて来る……というか、海そのものが初めてだ。
全部、親方達から聞いた話だけど、ぜんぜん違うじゃないか。
それとも、この数年でアップグレードされたのだろうか?
どちらにしても、大満足のごはんを食べることができた。
「少し休んで、それからまた遊ぼうか」
「はい!」
俺とシオンはレジャーシートを敷いたところに戻って……
「ん?」
ふと、視界の端に映る人達が気になった。
男が二人と、女の子が一人。
それぞれ水着姿ということを考えると、どちらも観光客なのだろう。
男二人があれこれと女の子に話しかけている。
ただ、女の子はあたふたと困った様子で、その場から離れようとしていた。
しかし、その度に男二人が行く手を塞いで、なんてことのないように話を続けている。
「あー……」
「ご主人様?」
「……ごめん、シオン。ちょっとだけ寄り道をしてもいいかな?」
「はい、もちろんです」
シオンも状況を察したらしく、少し真面目な顔で頷いた。
ここで賛成してくれるところが彼女らしく、嬉しい。
「すみません」
俺は三人のところに歩み寄り、男達に声をかけた。
「あ? なんだお前?」
「彼女の友達です。彼女がどうかしたんですか?」
「ガキには関係ねえよ、引っ込んでいろ」
「そうですね。あなたのようなお子様には関係のないことですよ」
対照的な性格の二人だった。
「あ、あの……」
「大丈夫」
女の子がすがるような目を向けてきて。
俺は、しっかりと頷いてみせた。
「友達だから関係ありますよ。特に大事な用がないなら、行かせてもらいますよ」
「勝手に決めるんじゃねえよ……ってか、よく見たらガキのくせにいい女を連れてるじゃねえか」
「ほう、これはなかなか……実に僕好みですね」
「よし。ガキ、褒めてやるぞ。その女を置いて、とっとと失せろ。そうすりゃ、この場は見逃してやるよ」
「僕達の寛大な対応に感謝することですね」
「……」
どうしよう。
この二人、ものすごく殴りたい。
俺のことはどうでもいいけど、シオンまでナンパをしようとして……
たぶん、それだけでは済まない。
そんなことを考えているこの二人、許せるものではない。
とはいえ、まだなにも起きていないのに、いきなり殴りかかるわけにもいかないし……
どうしよう?
「おいっ、そこ! なにをしている!?」
ふと、そんな鋭い声が乱入してきた。
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