45話 こそばゆい
「……んっ……」
そっとサンオイルをシオンの背中に塗ると、ぴくりと震えた。
「大丈夫?」
「はい……問題ありません。少しヒヤッとしてて、驚いただけです」
「そ、そっか……うん。なら続けるよ」
「よろしくお願いいたします」
そっとサンオイルを塗り拡げていく。
丁寧に丁寧に。
優しく。
「……ふぅ……はぁ……」
シオンはもぞもぞと動いていた。
くすぐったいみたいだけど……
でも、それだけじゃないみたいで。
なんていうか、こう……
悪いことはしていないのに、でも、とても悪いことをしているような気分だ。
親方、じいちゃん……俺、このミッションをちゃんと達成できるか、とても不安だよ。
――――――――――
……なんてことを思ったものの、どうにかこうにかミッションを完遂。
シオンは、それなりに照れて。
俺も照れて。
でも、これはこれで一つの思い出になるだろうと、そう確信した。
それから、シオンと一緒に海水浴を楽しむ。
「おぉ……これが海!」
海は初めてだ。
足に伝わる波の感触。
ひんやりとした心地いい。
そこに波の動きが加わり、なんともいえない幸せを味わう。
「……すごいですね……」
シオンも海は初めてらしく、感動している様子だ。
よかった。
やっぱり、シオンには笑顔でいてほしいからな。
ちょっと寄り道になるけど、でも、こうして遊んでよかったと思う。
「ご主人様、泳ぎませんか?」
「そうだね。せっかくだから、競争でもする?」
「はい、喜んで」
「あ、手加減とかしたらダメだからね? きちんと、正々堂々といこう」
「そのようなことはいたしませんが、私ではご主人様に敵わないと思いますが……」
「やってみないとわからないさ。泳ぐことに限らないけど、色々なこと全部、やってみないとわからないんじゃないかな?」
「……」
「だから、やってやる! とか、できる! みたいな気持ちが大事だと思う」
「……はい。まさに、その通りですね。私にとても大事なことを教えていただき、ありがとうございます」
シオンは驚いた表情をして。
次いで、嬉しそうな笑顔を見せた。
どうしたんだろう?
ま、いいや。
シオンが笑顔なら、それが一番ということで!
「一つ、賭けをしませんか?」
「どういうこと?」
「勝った方がなんでも一つ、命令をできる」
「え」
「どのような命令でも構いません」
「どのような……」
ついついシオンの体を見てしまう。
先日の夜のことを思い出してしまい……
「っ!?」
「ご主人様?」
なんかもう。
とにかくこの場にはいられない! っていうような気持ちになって。
具体的に言うと恥ずかしくて。
俺は、海の奥の方に移動して、そのまま泳いだ。
「えっと……」
「せ、先手必勝かな!」
「あ……ず、ずるいです!」
慌てた様子でシオンが追いかけてきた。
二人並んで泳ぐ。
競争とか賭けとか、そういうのはもうどうでもよくて……
隣にシオンがいて笑ってくれている。
ただ、そのことだけが大事だと思う。
かけがえのない宝物だ。
うん。
改めて思う。
シオンのためにも、そして、俺のためにも。
必ず彼女を北の故郷に送り届けよう。




