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44話 海でやることといえば一つ

「おぉ!」


 オーシャンテイルに来て、何度目になるかわからない感嘆の声がこぼれた。


 目の前に広がる熱い砂浜。

 その奥に、さらに大きく、どこまでも続いている海が見える。


 押して返す波。

 太陽の光が反射して、海がキラキラと輝いていた。

 その中を海鳥が飛んでいて……


 汗が出るくらいに暑いのだけど、でも、それが逆に心地良い。


 周囲には、俺達と同じように海水浴にやってきた観光客達。

 俺は、砂浜の一角に、さきほどレンタルしたシートとビーチパラソルを設置した。


「シオン、まだかな?」


 せっかくだから海水浴を楽しみたいと、海にやってきたのだけど……

 シオンはまだ水着に着替えている途中だ。


 親方が言っていたけど、女の子は準備に時間がかかるものらしい。

 男の俺は、ぱぱっと簡単に着替えることができた。


「おまたせいたしました」

「あ、シオン。待っていた……よ……?」


 振り返ると、水着姿のシオンが。


 やや露出の高い水着に身を包んだシオン。

 ただ、いやさしさなどを感じることはなくて、健康的で……

 そして、すごく綺麗だ。


 それに、可愛い。

 というか、女神?

 ついついそんなことを考えてしまって……

 ぼーっと、シオンに見惚れてしまう。


「どうされましたか、ご主人様?」

「……えっ」

「なにやらぼーっとされていますが……もしかして熱中症に?」

「あ、いや! ううん、そういうわけじゃないから大丈夫! 元鉱夫だし、暑さには慣れているから」


 空気の流れのない鉱山は、夏は蒸し風呂状態。

 軽く50度を超えていたからな。


「ただ、シオンの水着姿がすごく綺麗だな、って見惚れていたんだ」

「……」

「綺麗と可愛いが同時にあって、いつまでも見ていたいな。でも、あまり他の人には見せたくないというか、うーん……なんか妙な独占欲も湧いてきてしまう」

「……」

「本当に綺麗だよ。それに可愛い。すごくよく似合っていて……あれ、シオン?」

「……はぅ……」


 シオンが赤くなっていた。

 熱中症……ではなさそうだけど、どうしたんだろう?


「ご主人様は、とてもずるいです……」

「えっ、どういうこと!?」

「褒めていただけるのはとても嬉しいですが、その言葉がまっすぐ過ぎて……今の私には、なかなか受け止めきれず」


 照れているみたいだった。

 可愛い。

 もじもじするところも、さらに可愛い。


「……」

「……」


 互いに相手を見る。

 じっと。

 じっと。


「……ご主人様……」

「っ」


 シオンは優しく微笑んで。

 静かに身を寄せてきて。


 ふわっと、唇に触れる優しい感触。


 シオンの顔がさらに赤くなる。

 たぶん、俺もさらに赤くなっていると思う。


「申しわけありません、突然」

「べ、別に気にしていないけど……」


 「どうして?」と目で問いかけると、シオンは頬を染めて、照れながら応える。


「そうしたい、と思いました」


 その笑顔は海よりも輝いているように見えた。




――――――――――




「その……お願いしてもいいですか?」

「う、うん……オッケー、任せておいて」


 いざ海水浴!


 ……といきたいのだけど、その前にサンオイルは必須だ。

 俺は日焼けなんて気にしないけど、シオンは女の子だし……

 日焼けが重なると肌にも悪いから必要だろう。


 ということで、俺がシオンにサンオイルを塗ることになった。


「……」


 シオンは恥ずかしそうにしつつ、うつ伏せに寝て……

 そして、水着の一部を解いて背中を見せていた。


 ものすごくドキドキする。

 いけないことをしているような、でも、これはそういうことではなくて……

 そう。

 必要なこと。

 シオンの肌を太陽光から俺が守らないと!


 って、なんか思考がおかしい。

 色々と緊張しすぎだろ、俺。


「そ、それじゃあいくよ?」

「はい……申しわけありませんが、お願いいたします」


 そして俺は、今まで経験したことのない、高難易度ミッションに挑むことになった。

 そのミッションの名前は……


 女の子にサンオイルを塗る!


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