宇部ジュリアは異世界温泉郷にて恋に目醒める
ここで20万字超えるとは、、、ジュリアちゃんマジ書いても書いても終わらない恐ろしい子!
油断したつもりは一切なかった。
護国護民の宇部家の直系に生まれた者として、宇部ジュリアは物心付く前から、心と体を極限まで鍛え抜いてきたつもりだった。
そして、異世界に来てさらに強くなった事で、その力を試してみたくなっていた。
ジュリアが属する部隊が遭遇した、あの怪獣みたいな巨大なデーモンは恐ろしい強さだった。家の者でも対抗出来るのは、母と祖父と父くらいだろうと思うくらい強かった。
異世界に来る前のジュリアなら相打ちになっていたかもしれないが、今のジュリアには仲間や周囲に被害を与えないよう、戦場をコントロール出来るくらいの力が備わっていた。
そして、傷ひとつすら負わず、相手に力を使わせずに倒しきり、深い満足感の中、落ちてきた巨大な魔石を抱えて、仲間たちの元へ戻ろうとした。
その瞬間、自分が倒した巨大なデーモンより危険な存在がいる事に、ジュリアはようやく気が付いた。
全身に怖気が走った。
何故、あんなのに気が付かなかったのかと思い、あの巨大なデーモンは自分に対する釣り餌だと理解して、雷光の速さで仲間の元へ戻ったジュリアは見た。
見惚れるような美しい型から繰り出された拳を放ち、信じ難い程の強大な力を持つデーモンを、木っ端微塵に消し飛ばすサトシの姿を。
油断なく残心をとり、全身の氣を使い果たして、倒れ込もうとしている弟子の体を抱き止める。
抱き止めた感触に、これは駄目だと思い、涙が溢れそうになる。
サトシの呼吸と心臓の鼓動が弱々しくなり、今にも止まる止まってしまう。
チャクラを回転させて、氣を流し込もうとするが、空っぽになったサトシの体は受け付けてくれない。
駄目だこれは駄目だ助からないどうしようどうしたら
「ジュリア様!サトシ様の体を寝かせて!諦めてはなりません!」
すぐ近くにエルフのサーシャがいた。
左腕のない大きな体を横たえると、サーシャは手に持った杖をサトシ心臓の上辺りにつき、何度か衝撃を与え始めた。
すぐに、鼓動が力強くなって、体にエネルギーが回り始める。柔らかな風に包まれ、少しづつ呼吸が安定してくる。
「ジュリア様!先程の生命エネルギーを与える業を継続してください!わたくしは左腕をどうにかします!」
サーシャは懐から小さな木の棒を取り出した。
とてつもないエネルギーを内包しているそれを、寸分の躊躇もなくサトシの左腕に近づけた。
ジュリアは息を呑んだ。それはおそらく、このエルフの切り札とも言える程の存在だったはずだ。
サーシャは迷う事すらせず、サトシの左腕を治すためにそれを使った。
その献身に、ジュリアは生まれて初めての感情と衝撃を覚えた。
「ジュリア様!呆けていてはなりません!わたくしたち以外、サトシ様を救えるものはいないのです!しっかりなさい!」
サーシャから叱咤されて、サトシが助かる可能性が出てきた事に、ジュリアはようやく落ち着けた。
ゆっくりとサトシの丹田から、練り上げた氣を注ぎ込んでいく。さっきと違いきちんと反応がある。
「サーシャ様!サトシさんは!?」
エリナからの切迫した問いに、サーシャは近くにある第6陣ではなく、目的地であるエルフの友好都市へ向かうよう懇願していた。
その理由にジュリアも同意だった。あの佐伯というえらいお姉さんは、優しそうな言葉と表情で親身な態度だったが、目は酷く冷めていた。助けてくれるとは思えない。
簡易医務室にサトシを運び込み寝かせると、ドーリーがすごいスピードで動き出した。
殆ど揺れないのに、時速200キロ以上出ているのがジュリアには分かる。
ユウキはほんとにすごい奴だと思う。
「サーシャ、、、サトシ助かる?あんな釣り餌に引っかかって、、、ボク、、、もし助からなかったら」
戦いの中で、全力を尽くし果てるのは、武人として仕方のない事だと思う。
だけど、まだ成長途中の未熟なサトシがいなくなってしまうと想像するだけで、ジュリアはあまりにも深い喪失感を覚える。
「ジュリア様、あの変異種の巨大なアークデーモンはあなた以外、誰も倒せませんでした。あなたはすべき事をされたのです。サトシ様は必ずお救いします。郷にはわたくしより優れた治癒魔術の使い手が23名おります。左腕も再生いたします。お任せください」
サトシの左腕を見ると、無くなっていたはずなのに、しっかりとした肉が既に肘あたりまで伸びている。
そのあまりにも異様な光景にサーシャを見つめてしまう。
これだけの再生能力がある至宝を、出会って数日の他種族の者に使って良かったのかと思う。
ジュリアの疑問を察したのか、柔らかい表情で答えてくれる。
「古びた伝統なのですよ。わたくしたちの郷の王族は、とても子どもが生まれにくいのです。生まれた時は盛大に祝うために、世界樹の枝というものを取り寄せて、守り杖とし、受け継いでいくのです。わたくしは戦いの中で果てる事になるでしょうし、子どもは望めないでしょう。ですが、この方の体の一部になって残り、その魂と繋がり、子孫に継いで行くなら、こんなに幸せな事はありません」
にこりと可憐に笑い、愛おしそうにサトシを見つめるサーシャは、とても綺麗で女神様みたいだった。
「どうして、、、サーシャはサトシのどこが好きなの?」
まだ、出会って数日のはずだ。
「分かりませんわ。だって、わたくし恋をしたのが生まれて初めてですのもの。最初は取り込むつもりでしたが、こんなに不器用で懸命な魂に触れた事ありませんもの。守ってさしあげたいと思ったのです」
だから、必ず助けますと、力強い笑顔で約束してくれた。
ユウキがドーリーを飛ばしてくれたお陰で、短時間でサーシャの郷だという、森の中の都市にたどり着く事が出来た。
その代償として、ユウキも重症になったそうだが背の高いエルフが大丈夫だと保障してくれ、ジュリアは少し安堵した。
サトシを案内された処置室に運び込んで、ベッドに寝かせた。サーシャは居ていいと言ってくれたが、医療の知識のない者は邪魔になると判断して、お部屋の外で待っていた。
時刻が夜半を回った辺りで、サーシャと白衣を着たエルフ達が処置室から出てきた。
「ジュリア様、ご安心ください。サトシ様は助かりました。深い眠りに入っていますが、朝には意識を取り戻すでしょう。左腕は感覚が戻るのに3日、それ以外はリハビリと修練次第です。ジュリア様もお疲れでしょう。隣にご家族用の、、、ジュリア様?」
緊張に強張っていた体から、ようやく力が抜ける。
泣いた事なんて記憶にある限りなかったのに、涙が出そうになり、必死に堪える。
「サーシャ、ありがとう、、、サトシを助けてくれて、ほんとうにありがとう」
涙は堪えたが、声は湿っていたと思う。
「何でもございませんよ、ジュリア様、、、これでサトシ様はわたくしの旦那様で、間違いないでしょうけれど!目が覚めた後が楽しみですね!」
にっこりと優しく微笑んだ後、冗談めかしてサーシャが腰に手を当て胸を張る。
冗談で言っているのは分かった。泣きそうになっているジュリアを、元気づけようとしてくれているのも分かった。
「うん、そうだね。サトシにはサーシャが必要なんだよ。助けてくれて、ほんとうにありがとう」
近くで控えていた、白衣のエルフ達にもお礼を言って、サーシャに背を向けてジュリアは歩き出した。
「え?、、、ジュリア様?サトシ様のお顔を見ていかれないのですか?」
足を止めて、振り返らずに答える。
「、、、サーシャがいれば平気だよ。その方がサトシもきっと喜ぶし」
そうだ、サトシもきっとサーシャの方がいいと思っている。優しくて綺麗で可愛くて、お胸が大きいサーシャの方がいいに決まっている。
「よろしいのですか!?サトシ様は、わたくしが貰ってしまいますよ!ジュリア様はそれでよろしいのですか!」
焦れたようなサーシャの大声には答えられなかった。
サーシャが近づいて来ようとしていたが、気づかないフリをして、姫さま!と周囲の人が困惑して制止する声を聞きながら、ジュリアは肩を落とし背を丸めて、負け犬のようにトボトボと病院を後にした。
夜中だというのに、病院の外の道は明るかった。
5メートルほどの間隔で街灯が設置されており、至る所に治安部隊と思しき詰所があり、犬を連れた6人組の警邏が何組も巡回していた。
屋台が沢山並ぶ広場の端を歩いていたら、むにゅんとした何かとぶつかった。
ごめんなさいと呟きながら、顔を上げると部隊長のエリナが呆れたような表情で立っていた。
「ジュリアさん、何をしていらっしゃるの?」
ふわりと肩から上着を被せてくれる。その温かさに体が冷えていた事に気づく。
手を引かれて、屋台が密集している場所から、少し離れた位置にあるベンチに腰を下ろす。
「はい、手を出して。しっかり拭きましたわね。さ、これを飲んでから召し上がってくださいな。サキさんやサトシさんと違い、わたしは食事は作れませんので出来合いですけれど」
除菌シートで手を拭き、水筒に入っていた飲み物を言われるまま飲む。少しだけ甘くレモンの酸味が効いた、冷ました紅茶だった。ひとくち飲むと、喉が酷く乾いていた事を思い出し、水筒の半分ほどを飲み干す。
冷えて乾いていた体に水分が行き渡り、少しだけ気分が良くなる。
渡されたのは、ジュリアの大好物の焼きおにぎりだった。中に鮭がたっぶりと入った、大ぶりの焼きおにぎりを齧る。
香ばしい醤油の焦げた香りと、噛み締めると甘味が出てくるお米に、塩の効いた鮭が口内で渾然一体となり、旨みが広がる。
食欲なんかないと思っていたけど、胃に食べ物が入ると、猛烈に空腹だったと自覚した。
大きなおにぎりを3つ食べ尽くし、紅茶を飲み干して、ようやく一息つく。
「それで、どうしましたの?おふたりが助かったのは聞いています」
お見通しだぞと、小さな子を見るような顔のエリナに、俯いてしまう。
「あのね、、、サーシャがね、すごかったんだ。サトシの命を助けてね、、、無くなった左腕まで元に戻してた。すごいよねサーシャ、、、綺麗で可愛くてお胸もおっきくて、優しくてお姫さまで強くて、、、あんなの勝てるわけないのに、、、きっとサトシもサーシャの事が、、、ボクは沢山お邪魔したからきっと嫌われてる、、、」
はぁと深くため息をつく声に、体が硬くなる。
さらりと優しく頭を撫でられて、恐る恐る顔をあげると、優しく笑っているエリナの顔があった。
「サトシさんがそうおっしゃいましたの?ジュリアさんに邪魔だっておっしゃいましたか?」
「サトシはそんな事言わないもん!」
いつも、優しい目で見てくれた。ジュリアがわがまま言った時も、修行の時も、ご飯の時も、目が合えばいつもいつも優しく笑いかけてくれた。
「それでは、どうして?ジュリアさんは、どうしてそんな事を思うの?」
「それは!それは、、、サーシャが綺麗だし優しいしお胸大きいしボクなんかよりきっと、、、」
そうだ。サトシは大きなお胸が好きだし、男の人はみんなサーシャみたいなお姫さまが大好きなんだ。
きっとサトシもサーシャが大好きで、お邪魔していたジュリアの事なんか嫌いに決まっ
「ジュリアさん、サーシャ様は関係ありません。ジュリアさんは、サトシさんの事をどう思っているのですか?」
どう思っているのだろうかと想う。
「サトシは、、、おじさんで少しずつ強くなって、一生懸命頑張って、いつも優しくて美味しいご飯を作ってくれて、目が合うと優しく笑ってくれて、、、氣の使い方を教えてあげて、それと力を交換してあげて仕方ないから弟子にしてあげて、、、すごく強くなってきていて怪我したら心配で、目が覚めないと、、、泣いた事なんてないのに涙が出そうになって、それでそれで」
どうしようと、また泣きそうになる。
「それで?ジュリアさんは、サトシさんの事をどう想っていらっしゃるの?」
優しいエリナの、優しい問いかけにやっと分かった。
「どうしよう、、、ボク、サトシの事が好きみたい、、、」
涙が溢れてくる。
やっとわかったのに、きっともう遅い。
サトシにはもうサーシャがいるんだから。
「本当にジュリアさんはお子ちゃまですね。恋心すら分からないなんて」
ハンカチで涙を優しく拭われて、大声で泣きたくなる。
ずっとずっと、サトシと居たいのに、もう無理なんだと思う。サトシはサーシャと、この郷に残ってしまうかもしれない。
「はい、これ。お持ちになって。いいですか?この許可証を病院の受付に見せるんですよ。サトシさんの病室は7階の7号室です。病室の左隣のお部屋に、マリーさんという専属介護士さんがいらっしゃいますから、もう一度これを見せて、ご挨拶するんですよ。病院にいつでも入れますし、右隣のお部屋に泊まれます。分かりましたか?」
どうして、こんなのがあるんだろうと思う。
「サーシャ様のメイドさんが、宿舎に届けてくださいましたのよ。それと、サーシャ様からの伝言です」
どうしてサーシャがと、不思議に思う。
「意気地なしのへたれ!お子様はお子様らしく、お家に逃げ帰って、お母様のお胸に泣きついてらっしゃい!だそうですよ」
いつものサーシャの顔が思い浮かぶ。
あの優しいお姫さまは、ジュリアに機会をくれたのだと分かった。
「ボク、、、ボクへたれじゃないもん!すごく強いしお母ちゃまの胸で泣いた事なんかないもん!」
心と体が燃えるようだった。さっきまでの生まれて初めての辛い気持ちは、欠片も残っていなかった。
「エリナ!ありがとう!ボク、サトシのとこ行くね!ボクはサトシの師匠だからね!ずっとずっと側にいるよ!」
はい、いってらっしゃいましと、優しくエリナは見送ってくれるが、これだけは言っておかないとと思い、振り返り叫ぶ。
「エリナ!ボクはエリナと一緒でもいいよ!エリナとふたりなら嫌じゃないからね!」
ブワッと雪のように白い肌を、耳の先まで真っ赤にする部隊長を可愛いと思う。
「なっ!?ち、違いますからね!わ、わたしはそんなそんな、、、もう!早くお行きなさい!本当にちがいますからね!」
慌てるエリナはほんとに可愛いなと思い、夜道を駆け出す。
大好きな弟子の元に向かって、ジュリアは背筋を伸ばして駆け出した。
ジュリアは病院に着いて、介護士のマリーにご挨拶をした。マリーは牛人族の綺麗なおねえさんで、笑顔が素敵ですごく強いのが分かった。
こんな人が付いてくれているなら、深く眠っているサトシの身の安全は大丈夫だと安心する。
病室の隣のお部屋は8畳くらいで、小さなキッチンとベッドに、シャワールームがあった。
歯磨きをしてシャワーを浴びた後、エリナが許可証と一緒に渡してくれたバッグから着替えを取り出す。
バッグの底に、第6陣で買った下着が入っていた。気合いを入れるのに最適だと、セイラが熱く主張していたので、恥ずかしかったけど購入したものだ。
毎日するようにと、怖い顔のエリナとセイラから渡された、スキンケアの道具でお手入れをした後に、まるで紐にしか見えないものを身につける。
鏡越しに着替えた姿を見ると、なんだか恥ずかしくなる。
薄いナイトガウンを羽織り、そっと繋がっている隣のお部屋に入る。窓際の大きなベッドにサトシが眠っていた。
すぐ近くで覗き込むと、深い寝息で穏やかな表情をしていた。全身に氣が満ち溢れれていて、緩やかに体を巡っているのが分かり安心する。
左腕からはサーシャの力が溢れるように、サトシに取り込まれていた。
起こさないように、ゆっくりとベッドに潜り込み、右腕にしがみつくように抱きつく。
温かな体温と力強く太い腕の感触に、安心感に満たされて蕩けそうな気持ちになる。
ゆっくりとヘソの下に氣を溜めて、サトシの丹田から流し込む。
ジュリアの力が、サトシの脚のつま先から頭のてっぺんまで巡り、交じり合ってまたジュリアに戻ってくる。
この力は、母から継いだ『房中』と呼ばれるギフテッドらしい。よく分からないけど、すごく力が強くなるし、幸せな気持ちになるし、体がふわふわ蕩けそうになる。
サトシの事が好きと自覚して、初めての『房中』はあまりにも気持ちが良くて幸せで、ジュリアの意識はゆっくりゆっくり蕩けて無くなった。
窓から差し込む朝日と何かの視線を感じて、ジュリアは目を覚ました。
全身に力が満ち溢れている。サトシの力と交じり合った氣が体を巡り、噴き出すようなエネルギーに満たされていて、すごく幸せな気分である。
視線はサトシの体越しに、半眼でジュリアを見ていたサーシャのものだった。
なんだそのけしからん服はと思う。お胸がほぼ丸出しであり、その深い谷間に、サトシの左腕を挟んでいる。
「ジュリア様、なんですかそのはしたない格好は!ここは病室ですよ!」
囁くような声で、サーシャがそう言ってくる。
「サーシャこそ!またそんなけしからん服をきて!このエロフめ!サーシャみたいなのエロフっていうんだよ!」
サトシを起こさないように、けしからんエロフを睨みつける。
ぐぬぬと睨み合っていると、サトシが目を覚ました。サーシャのけしからんお胸に気を取られて、ジュリアに気づかなかったので、少しつねってやると、いつもの優しい顔で笑いかけてくれた。
「おはよう、ジュリアさん。体にジュリアさんの力が入ってるの分かるよ。サーシャさんと一緒に助けてくれたんだね。ありがとう」
その表情と言葉に、幸せな気持ちになる。
「サトシ!次はこんな事にならないように、ボクがしっかりと鍛えてあげるからね!師匠として!なにせボクは師匠だからね!」
それから、毎日サトシのお体を拭いたり、お洗濯を手伝ってあげた。
介護士のマリーはよく気がつく人で、サトシをすごく甘やかしていたし、サトシが鼻の下を伸ばしてデレデレしていたのは気に入らなかったけど、優しい人だからすぐにお友達になれた。
サーシャも毎日けしからんお洋服を着てお見舞いに来るから、師匠として弟子を守ろうとしたら、すごく怖い看護師さんに正座をさせられて叱られた。
それ以来、病院の屋上でサーシャをギャフンと言わせてやる!と思ったけど、なんでか2人きりになると、サトシがいる時みたく苛々しないので、仲良く沢山おしゃべりしてしまったのが不思議だった。
サトシのお世話をしたり、買い物をしたり、温泉に入ったりする毎日が楽しかった。
マリーが何故かすごく応援してくれて、お体の手入れや男の人が喜ぶアレコレを沢山教えてくれて、頭がクラクラしてのぼせそうになった。
そして、サトシが退院した日、サーシャやマリーやサトシの大好きなタイプの金髪メイドエルフ。そして双子エルフが、一緒のドーリーに乗ると知ってびっくりしてしまった。
あと3日もすれば、この温泉郷から自衛軍の要塞に戻れる。そうなれば、距離的に大勝利を確信していただけに、ジュリアはショックだった。
サトシの退院祝いにサキとセイラが買い出しをしてくれた焼肉パーティで、ジュリアはやけ食いをしていた。
サトシはご飯を食べたらすぐに眠くなったようで、お部屋に戻って行った。
「ジュリア様は、邪竜狩りの巫女様の姫さまですよね?そのような尊い血筋の方が、ダンナ様のような庶民に構うのは如何かと思います」
お酒を飲んで、しっとり輝くような肌をピンクに染めた金髪メイドが、ジュリアを据わった目で見つめて、そう言ってきた。
サーシャはサトシが居なくなった後、ビールを一口飲んだだけで、けらけら笑いながら、ずっとリビングにあった謎のぬいぐるみに話しかけていた。
「あのようなパンピーは、わたしのようなメイドがお世話して差し上げるのが妥当かと思います」
金髪エロフメイドのミリアが、サトシを狙っているのは知っていた。
手厳しくサトシに接しているけど、隙あらば大きなお胸を押し付けたり、スンスンと匂いを嗅いでうっとりしていたのを、ジュリアはしっかり見ていた。
「サーシャといいミリアといい、けしからん格好でサトシを誘惑して!ボク知ってるよ!ミリアみたいなの匂いフェチっていうんだ!サトシはボクとエリナがお世話するんだから!エロフには渡さないからね!」
ジュリアは高らかに宣言してやった。
「はぁ!?な、なにをおっしゃっているんですか!わたしは関係ないでしょ!ジュリアさん!?聞いていますかジュリアさん!」
サトシが大好きなくせに、関係ありませんよと、銀髪のメイドと話していたむっつりエリナが叫んでいるが、それはどうでもいい。
「そんでも、ミリア様も高貴なお家の方やないですか。やっぱりそういう身分差は暮らしとると、苦痛になるみたいやし、、、ウチくらいがちょうどええと思うなぁ」
やっぱりマリーも狙っていた。マリーはサトシにすごく優しいから、エリナと3人でお世話してあげる仲間に入れるべきかと思う。
だが、エロフ主従は駄目だ。あざとすぎるし、けしからんから許さないと思う。
「では、こうしましょう。それぞれがダンナ様を鍛えて、ダンナ様がいちばん師事したいと仰ったものが優先される勝負を致しましょう。怖ければ逃げ出しても結構ですよ」
ミリアの提案に、ジュリアは勝った!とほくそ笑む。なにせ、ジュリアはずっとサトシを鍛えてきたのだ。ブヨブヨのおじさんだった頃からずっとだ。
「それ、面白そうやなぁ。ウチも地元で戦士団に教導しとったし。がんばるで」
マリーも参戦してきて、よしよしとジュリアはドヤ顔になる。
マリーを引き込めば、2対1の勝負である。
「ふん!明日の朝には、泣きっ面エロフにしてあげるからね!覚悟するんだよ!」
ジュリアは高らかに宣言して、やる気に満ち溢れて眠りについた。
そして、翌朝に3人がかりでサトシを鍛えて、すこしばかりやりすぎてしまい、3人揃ってエリナとサーシャに叱られてしまい、泣きっ面を晒してしまった。
絶対にサトシは渡さないと誓いながら、エロフ主従もなんだか嫌いじゃない不思議な感覚に、ジュリアは戸惑いながら、今朝もサトシの部屋に突撃する。
「サトシ!おはよう!お稽古の時間だよ!」
優しい笑顔でおはようと言ってくれるサトシに、お顔が真っ赤になるくらい嬉しい。
家族に紹介する時、お爺ちゃまとお母ちゃまに、きちんと認められるくらい強くしないと、サトシがどうなるか分からないしと、今朝も厳しくお稽古をつける事にした。
ジュリアは異世界温泉郷にて、今朝も元気に大好きな人とお稽古を積んでいる。
「エリナってやっぱサトシラヴなんだね〜」
「うむ、むっつりエリナは分かりやすい」
「な、なにを馬鹿な!馬鹿な事を!違います!違いますからね!」
「エリナちゃんが、サトシのハーレムに、、、仕方ねぇ!俺も漢だ!祝福するぜ!」
「ユウキは立花ミユキさんがいるもんね〜」
「うむ、おめでとうユウキ」
「やめてやめてくれ、、、胃が痛くなるからやめて」




