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エルフのメイドと師匠と介護士に、朝からシゴかれる愚か者

増えちゃった!

 まだ日も昇り切らぬ早朝、戦闘用補助服を着込み、エルフたちの訓練施設で、大山サトシは大変なことになっちゃったなぁと、ため息を吐きそうになるのを堪えた。




 デーモンとの戦闘で失い、再生させてもらった左腕のリハビリは順調だった。

 リハビリを始めて4日目、あと1週間もすれば過不足なく動かせると、リハビリスタッフのアルスが太鼓判を押してくれた。


 そして、リハビリ生活5日目。

 午前中にリハビリが終わり、サトシの入院生活も終わりを迎えた。

 元々、1ヶ月程度の入院と診断を受けていたが、サトシ達の部隊は特別休暇1週間に、通常の休暇と合わせても11日間しか休めないのだ。

 たった8日間で退院出来たのは奇跡だと、医師からは呆れられたが、それは献身的に支えてくれた、病院のスタッフや仲間たちのお陰だと、サトシは感謝していた。


「マリーさん、アルス、、、ありがとうございます。沢山の人にお世話になったけど、2人には特によくしてもらったから」


 病院の出口まで、介護士のマリーとリハビリスタッフのアルスが、見送りに来てくれていた。

 病室の隣にある家族用の部屋に、何故かずっと泊まり込んでいた、自称サトシの師匠で同僚の宇部ジュリアが腕組みをしながら、弟子が世話になったな感を出している。


「サトシ、リハビリのメニューは覚えているな?過不足なく動かせるようになっても、最低1ヶ月は同じメニューを続けるんだ。その方が体に馴染むからな。休暇はまだ3日あるんだよな?温泉にでもゆっくり浸かって、疲れを癒すといい」


 アルスの組んでくれたリハビリメニューにより、腕を動かしても痛みは無い。初日の泣きたくなるような痛みが嘘のようだった。


「うん、少しゆっくりさせてもらうよ。これ、僕の個人デバイスのコード。休みの日にしか使えないし、アルスも忙しいだろうから、なかなか連絡は取れないだろうけど、、、また、ここに来たら一緒にご飯食べよう」


 デバイスのコードを交換し、左腕を突き出すと、拳を突き合わせてくれた。

 ウンウンと、ジュリアは相変わらず弟子が世話になったなモードで、腕を組み頷いていた。


「マリーさん、、、あなたにも本当にお世話になりました。献身的に介護してくださってありがとうございます」


 特に体の清拭は、酷い匂いがしただろうに、毎日2回も丁寧にやってくれた。しかも、食事の時にはアーンまでしてくれた。

 こんな綺麗で柔らかそうで雄大なる宇宙の神秘を2つ備えた人に、優しくお世話されるなんて、夢のような時間だった。

 牛人族の看護師や介護士にお世話になると、すぐに堕とされるという都市伝説は本当だったと、サトシは確信したぐらい幸せだった。


「ええんよ、サトシさんよう頑張ったさかいなぁ。これからは怪我せえへんようにな。ウチがきちんと見といたるさかいに」


 うん?と最後の言葉が引っかかるが、関西弁の独特の言い回しかなと、そのまま笑顔で別れを告げる。

 もちろん、異性にデバイスコードを、無理矢理渡すハラスメント行為はしない。

 非常時以外、病院を出入り禁止にされた、親友のユウキとは違うのだ。


「じゃあ、改めてありがとうございました!またいつか!おふたりともお元気で!」


 もう1度頭を下げて、サトシはジュリアと歩き出した。

 最後までジュリアは、弟子が世話になったなモードでまだ腕を組んでいる。どうやら、気に入ったみたいである可愛い。


 少し歩いて、おかしいなと思う。

 マリーがニコニコしながらついてくる。見送りにしては長いし、何か同じ道中に用事でもあるのだろうか。


「あ、あのぅ、、、マリーさん、お仕事はいいんでしょうか?お昼休み終わってしまいますが、、、」


 それを聞いたマリーは不思議そうな顔をした。


「ウチは仕事に向かっとるんよ?あれ、エリナさんに聞いとらんの?ウチはサトシさん達のドーリーに乗る事になったんよ」


「えっと、、、聞いてないです、、、」


 そもそも、民間志願警備員のドーリーに介護士が乗車できるのだろうか。どんな立場になるのかと、不思議に思う。


「おかしいなぁ、メイド長様から直接のご依頼やったさかい引き受けたんやけど。エリナさんにも歓迎する言われてるで?」


 隣のジュリアを見ると、びっくりしたみたいに星が煌めくような瞳を、大きく見開いている。

 師匠も聞いていなかったみたいだ。





 とりあえず、エリナから教えられていた部隊の宿舎に来たサトシは、そのコテージの大きさに驚く。

 コテージの概念が狂うくらいに大きく、3階建で部屋数がいくつあるか分からないくらいだ。


「ええ、マリーさんにはドーリーに乗車して頂く事になっています。あら?お伝えしておりませんでしたか?サーシャ様のメイド長のミリア様に、伝言をお願いしたはずなんですが」


 全く聞いていない。忘れたとは考えにくい。

 多分、わざと伝えなかったんだと思うあの金髪エルフめ!


「あの、サトシさんはウチが一緒なんイヤなん?」


 しょんぼりした様子のマリーが、上目遣いで尋ねてくる。


「そんな事ないです!マリーさんが一緒で嬉しいです!ずっと一緒にいたいと思っていたし!」


 パァッと笑顔になりニコニコし出すマリー可愛いよマリーと、思っていたら、隣のジュリアがドス黒く濁った目で見つめてきて、目の前のエリナは半眼で睨んでくる。


「サトシ、イケナイと思うボクはそういう言い方イケナイと思うな?師匠として厳しく躾けたくなってきたかな?そう師匠として」


「サトシさん、奥さんを増やすのはご自由ですが、きちんと仲をコントロールしてくださいましね」


 その圧力に体の一部がヒュンとなる。

 そもそも、マリーが同乗すると僕が決めたわけじゃないでしょという反論は、何故かしたらいけないような気がして黙っておいた。


「サトシ?サトシじゃねえか!心の友と書いて、心友と読むサトシ!帰ってきたな!あ、ついでにジュリア、、、なんか背が伸びた?伸びてない?なんかごめん、、、ヒィ!」


 ユウキが嬉しそうに近づいてきて、マリーを見た途端に飛び上がる。


「こんにちは、ユウキさん。今度おいたしたら、分かっとるな?」


 笑顔のマリーに、何故か怯えている。


「はい、マリーお姉様、、、2度と悪いことしませんしませんから、アレだけはアレだけは許して」


 ガクガク震えながら、大量の汗をかいている。

 ユウキは何をしたんだろ、そして何をされたのか。

 アレとは何か、知ってはいけないような気がしたので、触れないでおく。


 サキとセイラは、仲良く温泉を回っているそうだ。

 夕食は久しぶりに皆んなで食べられそうで、嬉しいなと思う。

 サトシも温泉に行ってみようと思い、皆んなに伝えると、ジュリアとマリーが一緒に来てくれるらしい。

 一緒に行くと言っていたユウキは、マリーが来ると知った途端、急用を思い出したらしく、慌てて外に飛び出して行った。本当に何があったのかと思う。



 宿舎から少しのところにある『耳長湯』という大規模浴場にサトシは心惹かれたが、マリーのおすすめの『エルフの休日』という、少し歩いた場所にある小規模浴場に来ていた。


「サトシさんかゆいとこない?」


 まさかの貸切混浴風呂だった。


「はい、だいじょうぶですすごくだいじょうぶ」


 もちろん水着着用だが、混浴風呂なんて初めてのサトシはガッチガチに緊張していた。


「ほな、お湯流すなぁ目ぇ閉じて?」


 目を閉じるって何をするんだいや頭を洗ってもらったから流すだけだろだめだすごいフニュンとすごいなんか触れた!触れた!すごい宇宙の真理は此処にあったんだ!


「はい、ええ子なええ子やで」


 マリーに温かい湯を頭からかけられ、シャンプーの泡が流れていき、心地よさにすっきりする。

 どうぞぉと、タオルが顔に当てられたので、それで顔を拭いて恐る恐る目を開くと、鏡越しに絶景が飛び込んでくる。


 マリーは真っ白なビキニを着ていた。体は細身だが筋肉で引き締まり、腹は縦にうっすらと見惚れるような腹筋が浮いている。胴が短く脚が長いすごく綺麗なスタイルだ。

 そして、絶景である。サトシが扱う朱雀型滑空砲の砲弾の如く、すごくすごいのが斜め上にふたつ突き出ているすごい。


「サトシ、、、見過ぎだよ、、、」


 隣から声がしてビクッとなる。こちらも白いビキニを着たジュリアが体を洗っている。

 金褐色に輝く体は絞り込まれて、見惚れるような細く美しい筋肉が付いていて、腕を上げて腋を洗っている姿に息を飲む。


「サトシ、、、こっち見ちゃだめ、、、恥ずかしい」


 いつも元気いっぱいの姿とは違う、体を縮こまらせながら、頬を染めて恥じらう顔に心臓が跳ね上がる。

 どうしよう師匠可愛いよ師匠。


「はい、サトシさん湯船に浸かっておいで!ウチはジュリアちゃんの髪を洗うさかい」


 ジュリアに見惚れて呆けていたが、マリーにスパンっと背中を叩かれて我に帰り、慌てて湯船に向かう。


 久しぶりに湯に浸かる。最初は熱いが、ゆっくりと体が慣れて、ちょうど良い湯加減だと体から力が抜ける。

 さらりとした無色透明な湯だが、全身にじんわりと染み込むような心地よさにうっとりする。

 温泉なんて何年ぶりだろう。母の体が良くなったら、3ヶ月に一度戻れるという休暇日に、必ず連れて行こうと思う。


 マリーに頭を洗われながら、キャッキャと笑っているジュリア。

 2人の後ろ姿に桃源郷ってエルフの郷にあったんだと確信した。なにせ大きな桃が実っているしすごい。


 サトシは20分ほど湯を楽しみ、なんかお話しがあるという2人より先に上がる。

 体を拭いて服を着込み、コーヒー牛乳があったので購入し、腰に手を当てて喉に流し込む美味い!美味すぎる!


 マッサージ機もあったので、緩めの設定にして座ると、柔らかな揉み心地で背中を解されて、心地よさと眠気が襲ってきて、意識がなくなりそうになる。


「、、、さん!サトシさん!起き!こないなとこで寝たら風邪ひくで!」


 どうやら、眠りかけていたらしく、マリーに揺り起こされる。

 マリーは浴衣そっくりの服を着ていた。はちみつ色の髪と顔がツヤツヤして綺麗だった。

 帯の上に素晴らしきものが乗っていて、ごくりと唾を飲み込むすごい。


「サトシ、、、どう?ボク、、、変じゃない?」


 こちらはふわりとした、ミニスカートみたいなったタイプの浴衣姿のジュリアだった。

 剥き出しの腕と脚は、湯で温められて上気して艶々と輝き、いつもはツインテールの髪は綺麗にまとめられてアップにされている。デコルテの滑らかな肌に息を飲む。

 とんでもなく可愛くて綺麗で、ポカンと口を開けみつめてしまう。

 スパンっと背中を叩かれる。横を見るとマリーが怖い顔で何か言えと無言の圧力をかけてくる。


「ジュリアさん、すごく可愛いくて綺麗です」


 素直に言葉が出てきた。ジュリアは本当に可愛いくて、煌めくように綺麗だった。

 その言葉に、はにかむように笑うジュリアの笑顔が眩しかった。


 お風呂から出た後、仲間たちが用意してくれると言っていた夕食の時間まで、少し間があったので、食後のデザートでも買おうという事になり、3人でブラブラと商店街を回った。


 暮れなずむ町は、地元の買い物客と観光客が楽しげに混じり合い、とても暖かな賑わいだった。


「ウチの故郷がある大樹周辺もそうやけど、この辺も被害すごかったんよ。なんかすごいお人たちが、あのバケモンたちを叩き落としたらしゅうてなぁ。ここ10年くらいでものすご発展してきたんよ。特にこの温泉郷はサーシャ姫様のおかげで、ぎょうさん働く場所増えたし、賑やかになって嬉しいなぁ」


 このエルフの都市は、1200年以上前から温泉郷として有名だったらしい。

 しかし、150年ほど前からエネミー群による襲撃を受け続けて、数十年前には都市が壊滅寸前までボロボロになったそうだ。

 20年ほど前にエネミー群の主力を駆逐し、そこから数年で都市を建て直し、ここ10年は温泉郷として復活したという事だ。


 マリーが言うには、その復興には、サトシの左腕を再生してくれた、サーシャが深く関わっているという。

 彼女は自衛軍に戦力を売り込み、自ら傭兵団を率いてエネミー群との戦いの最前線に赴き、多大な戦果を上げて、その収入を都市に還元。

 さらに、アイドル活動をして、温泉郷をアピールする事により、莫大な数のファンが訪れるようになったという事だ。


 そして、人が集まれば商売人が集まる。凄まじい数の人々が流入し、エルフ以外の人口は8万人まで膨れ上がる。観光客が落とす莫大なお金は、彼らの懐を暖めて、それを投資する事により、さらに都市は発展し続けているそうだ。


「ここは税金も安いんや。けど温泉郷商工組合には、傭兵団を都市に常駐させて、防衛する義務があるんよ。そして、冒険者組合には森の探索と巡回に、非常時の防衛が義務付けられとる。その2つの組合と、エルフ魔道士団に戦士団と義勇軍が、この都市の安全を守っとるから、安全性も高いんよ」


 商店街にはもう何百年も前からあるような、歴史ある建物もあるが、よく見れば新しい建物が多い。

 ここは戦地であり、甚大な被害から復興した都市の痕跡が至る所にあった。


「ウチはこの都市が好きなんよ。ここを守っとるサーシャ姫様たちも大好きなんよ。だから、サーシャ姫様のお付きとして、サトシさん達のドーリーに乗れるんは光栄な事や。よろしゅうにな、サトシさん、ジュリアちゃん」


 都市の歴史をなるほどーなるほどーと感心しながら聞いていたが、最後に爆弾が落とされておん?となる。


「マリー!サーシャも乗るの!?ボク聞いてないよ!」


 サトシの左腕を掴み、楽しげに散策していたジュリアがたまげたように叫ぶ。


「そらそうやろ?サーシャ姫様の慰問ツアーのお供なんやから。ウチとメイド長様にメイドがもう1人。戦士団から2人もくるらしいで」


 どうやら、ドーリーには搭乗者が5人増えるらしいけれど、サトシにはそれより気になる事があった。


「あの、マリーさん、、、サーシャさんの慰問ツアーってなに?」


 不思議そうにマリーは教えてくれた。


「毎年この時期は、サーシャ姫様の慰問ツアーやろ?どこの街もみんな楽しみにしとるんよ。なにせ姫様はスーパーアイドルやさかいなぁ。ライブ間近で見れるなんて嬉しいなぁ。チケットはプレミアやさかい、ウチはいつも映像でしか見たことないし。あ!法被と鉢巻もお洗濯しとかんと!」


 法被と鉢巻?お祭りみたいなものだろうか。よく分からないが、次の任務はもう決まっているみたいだった。



 宿泊場所のコテージに戻ってくると、中庭には焼肉が用意がされていた。

 ジュリアがエリナを問い詰めている。


「エリナ!どういう事!?サーシャやミリアが来るって!ボク聞いてないよ!」


 もちろんサトシも聞いていなかった。


「あら、おかしいですわね?司令部からの命令だったから、ご挨拶に伺った際に、ミリア様がおふたりに伝えておくとおっしゃっていたので、おまかせしたんですが、、、不備があったようですね。ごめんなさいね、ジュリアさん、サトシさん」


 あの金髪エルフ、絶対にわざと伝えなかったなと思う。

 ちょっと背が高くてスタイルが良くて、髪が綺麗で美人で優しくて、仕事が出来るメイドさんで、さらにその長だってだけのくせに!よく考えたら、あの人欠点ないなとも思う。


「うむ、5人も増やすとは、、、サトシは恐るべき男よ。やはり、わたしとセイラの前に立ちはだかるラスボスはハーレムキングだな」


「やだ〜怖いよ〜わたしはサキだけなんですけど〜」


 サキとセイラがイチャイチャしている。

 サトシをネタに使ってイチャイチャしている。


「うむ、セイラはわたしが護る!絶対にハーレムキングには渡さん!」


「やだ〜サキ素敵すぎる〜しゅき〜だいしゅき〜」


 なんかイライラするなぁと思うが、焼肉の買い出しは朝から2人がやってくれたらしいから、何とも反論しにくい。

 コテージの玄関のチャイムが鳴った。どうやら、誰か来たみたいだった。



「それでは、サトシさんとついでにユウキさんの、退院祝いと、新しく部隊に入って下さる皆様の歓迎会を開催いたします。皆さんご存知のサーシャ様、ミリア様、マリー様に加えてメイド隊のナージャ様。それと戦士団から派遣されたミア様とシア様です。サーシャ様の慰問ツアーのお手伝いをする間、ご一緒いたしますので、仲良くしてくださいね。では、皆様の健康とご多幸をお祈りして、乾杯!」


 エリナの乾杯の音頭と共に、肉を焼く音が始まった。

 サトシの右隣ではジュリアが憤然とやけ食いをしていて、左隣ではサーシャがニコニコと清楚で可憐な笑みを浮かべている。


「旦那様、よろしくお願いしますね。でも、勘違いなさらないでくださいね?確かにわたくしはアイドルとして、ファンの皆さんを大切にしております。ですが、わたくしの心は旦那様だけのものですからね?」


 近い距離が近い。触れそうで触れないくらい近い。


「サトシよろしくな」

「サトシよろしく頼みます」


 戦士団から来たのは、訓練後にシャワー室でお世話をしてくれた、双子のミアとシアだった。

 それを知ったマリーが、なぜか2人に飲み勝負を挑んでいて、いい度胸だエルフ魂を見せてやると、双子が応じている。

 何故かユウキはお酌係にされて、一生懸命お酒をサーブしている。


 初めて見たナージャという銀髪のメイドは、エリナと気が合ったようで、仲良く話をしている。


「ダンナ様、嬉しいですわ。しばらくご一緒できますね。よろしくお願いします」


 口元を皮肉気に持ち上げて、親し気に話してくるメイド長。


「わざとですよね?どうして伝えてくれなかったんですかミリアさん」


「サプライズでございます、ダンナ様。嬉しいでしょう?美女に囲まれての旅は」


 ニヤニヤ笑うミリアを、サーシャが嗜めた。


「もう!ミリア、おやめなさい!あなたも楽しみにしていたではありませんか!メイド服を新調していたでしょう!」


 その言葉に、耳先を赤くしてそっぽを向くメイド長。


「そのような事はありません。姫さまの晴れ舞台なのですから、身嗜みをただすのは当然ですので」


 何だか大変な事になりそうだと思いながらも、久しぶりに食べる焼肉に香りに誘われて箸を伸ばす。


「あ!旦那様、アーンしてあげましょうね。アーンですよ?アーンして?」


 サーシャのその動きに、雷速の反応で食ってかかるジュリア。


「あざといエロフめ!サトシはボクが護るからね!師匠としてそう師匠なんだから絶対に護る!」


 また、賑やかになりそうだと、ため息をつきそうになるが、何だか楽しくなりそうだとも思う。

 久しぶりに食べた焼肉は、頭が沸騰するくらい美味しくて食べすぎてしまい、少しだけ胃もたれしてしまった。




 そして、翌朝である。エルフの訓練施設に、日が昇る前からサトシはいた。


「ダンナ様、お体も良くなったみたいだし、本格的にシゴいてやるよ。嬉しいだろ?嬉しいよな?」


「ウチもお手伝いするなぁ。けっこう自信あるんよ?介護士になる前は地元で戦士団の教導やっとたし」


「サトシ!ボクは心を鬼にするよ!弟子がけしからん駄肉に惑わされないよう、心を鬼にして鍛えるからね!師匠としてそう師匠なんだから!」


 部屋で寝ていたら叩き起こされ、何が何だか分からない内に着替えさせられ、ミリアとマリーとジュリアにシゴかれるらしい。

 サトシが早めに寝た後に、何があったかはわからない。分からないが、何があったようで、3人から凄まじいオーラを感じる。


 やっぱり、大変なことになったなぁと思いながら、気合い入れなきゃと、昇りつつある朝日を背に、愚か者は腹に力を込めた。

 死なないように頑張らないとと、サトシは決意したが、3人の可愛がりに失神して、自室で目が覚めたのは半日後だった。


 部屋から出ようとしたら、正座をしているミリアとマリーとジュリアが、サーシャとエリナにお説教されていたので、そっと戻った。

 また、騒がしい日々が始まるんだなと、深く深くため息を吐いた。

 

「やはりツラミ。酒のアテにはこいつが最強」

「うん、流石はシア。焼肉マスター」


「何をゆうとるんや、、、お酒にはミノ脂やろ。特にビールにはミノ脂や。素人は黙っとれェ」


「おやおや、皆さんはハートの美味しさをご存知ない?ハッ!お子ちゃま揃いですね」


「ハラミだよ!結局ハラミ最強だよ!ボクはハラミが好き!あとカルビとロースとヒレも好き!」


「みなさん、たくさんありますから、仲良く召し上がってくださいね。ミリア様は飲み過ぎでは?大丈夫ですか?あ!サトシさんの頭にもどさないで!?だめです!マリーさん!サトシさんはお酒のアテではありません!サーシャ様止めてください!」


「さーしゃもうのめにゃい、、、」

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