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ナマケモノ殿下と最強の剣

「ヤバいヤバい、これは結構ヤバい」

 脳筋兄の軍の背後を突くことに成功した俺はとんでもないほど焦っていた。

 向かってくる敵全員が捨て身で時間を稼いでくる、俺や他の兵を討ち取る動きではなく、少しでも時間を稼ごうとする動き。

 狙いは恐らくテンの首

 この作戦、脳筋兄じゃない、リュートさんかな?

 脳筋兄なら、王を目指すならこんなことはしない、いたずらに自国の兵を消費したり、何の罪もない自国の王子を殺そうとしたりはしない。

 結局リュートさんも大義とか将来とか言って他の人に犠牲を強いる人だったか。

 ならまぁ、テンの首を取らせるわけにはいかないな。


 おっと、ガァンっという音が響き、死兵となった敵がまた俺の防御結界に引っかかっている。

 そして防御結界で勢い殺された敵をレイが殺さないように攻撃する。


「シン、突破できない、このままだと、危ない?」

 レイが無表情のまま声をかけてくる。

 確信はないものの、何かまずいことが起きていることは感じているのだろう。


「そうだね、このままだとテンが死ぬかな、だからなんとかして合流したいんだけど、ちょっと難しいなぁ」

 片手間に防御結界を貼りながら、いくら頭を捻ってもいい案が浮かばない、これはいよいよ危ないか?


「ふふっ、私にいい考えがある」

 いつもの無表情ではなく、イタズラを考える時のクリスやアキナのような顔をするレイは、自信満々にこういった


「風の魔法でシンを上空にぶっ飛ばす、あとはシンが風魔法で着地を微調整する」

「えっ!?それって俺は風魔法を普通に見に受けるってこと?」

「違う、遠くにぶっ飛ぶように受けてね」

 そこまでいうとレイは俺の返事は全く待たず、魔法の準備してを始める。

 完全に顔が引き攣ってる俺をみてニコッと珍しい笑顔を見せる。

 かわいい

 かわいいけど今はそういうこと言ってる場合じゃないわけで


「ちょ、レイ、心の準備とかは」

「ぶっ飛んでる間にすませて」

 そういえばレイは伝説の冒険者で雷神と呼ばれたロバート様の娘だったなぁって


「ウインドブロウ」

 レイの手から放たれた風の魔法が俺の腹に突き刺さる

 

「ぶへら」


 俺は情けない声をあげながら、そのまま空の旅へ向かった。

 空を飛ぶって気持ちいいな


 そのまま途切れそうな意識をギリギリで耐え、大橋の出口へと目を向けると、スケートとカクトという脳筋兄率いる二代ゴリラがテンをいじめていた。

 さらには脳筋兄もテンの方へ向かっていた、あれ、のんびりしてたけどもしかして一刻の猶予もないの???


 さすがに脳筋兄とリュートさん、俺の想定より全然早い


 つまり


 覚悟を決める必要がある。

 そういって俺は自分自身に風魔法をぶつけることで落下地点を調整する。

 ちょうど、テンと脳筋兄達との間に落ちるように。


 弱くしてるとはいえ防御に自信のある身としてはノーガードで魔法を受けるのは非常に痛い、とても痛い。

 そんな痛みを画面しながら俺はテンと、テンに迫る脳筋兄の間に落下する。

 なんとか間に合いそうだけど、着地を考えていなかったなー


 あっ


 そこには剣を振り上げ今にもテンを斬ろうとする脳筋兄がいた、いろいろ思うところがあるのか、まったくをもって隙だらけなので、あそこに着地しよう。

 いや、テンもヤバいな、三重結界でテンへの攻撃を防いで、俺は脳筋兄の背中に華麗に着地っと


「脳筋兄、剣を振るときは目を瞑っちゃダメだよ」


 と、格好をつけてみたものの、脳筋兄の背中に背中から着地したのでとても痛い、本当に痛い。

 とりあえずカッコよくこの場に出てきたけど、背中が痛すぎて動けない、一旦休憩時間をください。

 よく見たら脳筋兄も固まっている、多分背中が痛いんだろう、驚いてるのもあるかもしれない。

 

「おまえがきても3対2だぞシンセイ、俺とスケートとカクト相手に、おまえら2人で勝てないだろ、投降しろ」

 顔を上げた脳筋兄は自信満々にそう言って、さらに剣をいらに突き出して続けた。


「テンセイは最後まで粘るだろう、だがシンセイ、おまえは合理主義者だ、あまり問題ない負けであればすぐに認めるだろう?別に殺しもしないし、ちゃんとおまえらの婚約者や関係者も影響はない。ここで諦めて俺と一緒に国を作ろう」

「やっぱり脳筋だな兄貴、俺とテンが2人揃ったんだよ?ゴリラ三兄弟が俺たちに敵うはずないじゃん」

 俺の挑発をうけてついに脳筋兄貴ことガイエスはブチギレてしまった。


「シンセイ、おまえ、俺はおまえらを殺したくないからこう言ってるんだろ!」

 殺したくないと言いながら殺意増し増しの剣を思いっきり振り下ろしてくる。

 

「腹違いとはいえ兄貴のくせに何弟を殺そうとしてんだよ。」

 持っていた剣を手放し、脳筋兄の振り下ろした剣を止めるため、両手で三重結界を起動し、脳筋兄の剣を弾きながら言い返す。


「そもそもガイエス兄はなんで相談しなかったんだよ!」

 俺が脳筋兄の剣を弾いたのを確認するまでもなくテンが脳筋兄の胴に向かって斬り込む。


「ガイエス様はあなた方を巻き込まないようにしようとお思いになって」

 脳筋兄に斬り込んだテンの剣を止めながらスケートが叫ぶ


「2vs1は卑怯でしょう!」

 カクトは剣を止められた隙を晒したテンに向かって両手で握った剣に渾身の力を込めた振り下ろす。


「さっき2vs1でテンをいじめてたのは2人だろ!」

 カクトがテンに向かって振り下ろした剣を右手の三重結界で防ぐ


「シンセイ、左がガラ空きだ、3対2は無理があったな」

 冷静に、しかし一切手を抜くことなく脳筋兄が俺の左腕を斬りにかかる。


「はぁ、そもそも、脳筋兄が反乱起こす時点で俺たち2人を巻き込むでしょうに」

 左手で三重結界を起動して脳筋兄の剣を弾く


「なっ、三重結界を2つも」

 黒のワイバーン戦での反省を踏まえて、片手でそれぞれ別に三重結界を発動できるように練習した。その成果をみて、斬りかかってきたカクトと脳筋兄、テンの剣を止めていたスケートは酷く驚き、猛攻をやめ一歩引いてしまう。


 その隙を逃すほど、よくできた俺の双子の兄は甘くない、テンは自身の持つ剣に全力で魔法を流し魔法剣を完成させようとする。


 その様子をみてゴリラ3人組は急いで斬りかかってくる。

 その3人の剣を、両手の三重結界で防いでいく。

 スケートの左からの袈裟斬りを右手の三重結界で弾き、カクトの足元への攻撃をジャンプでかわす、そこを狙った脳筋兄の剣を左手で弾く。

 3人の連携はよくできているがそこまで、この短時間で俺の防御を崩せるほどじゃない。

 

「はいダメダメ、テンのとっておきがあるから、ここは少しの間侵入禁止でーす」

 突破しようとするゴリラ3人組を結界で雑に弾きながら挑発を続ける。


「ダメだよ、力押しじゃ三重結界は突破出来ないよ、そして時間切れ、殺したくないから、身の危険を感じたらさっさと降参してね」

 そう言って身体を屈ませると、俺の背で身体を隠していたテンが急にゴリラ3人組の前に出て剣を振い始める。


「無尽刀、いくよ!」

 カッコよく決めたテンが持つ剣は、かつて伝説の王者と呼ばれる者が持っていたとされる伝説の武器、刀によく似た形状となっていた。

 テンが剣を振るったあとには、しばらくの間、数本の魔力の剣が軌跡のように残っていた。

 テンはこういう時に少しカッコつける癖があるのは変わらないなー


 最初こそ急に現れたように見えたテンに驚いていたが、メインで剣を撃ち合っている脳筋兄以外のスケートとカクトはすぐに対応してゴリラ3人組は斬り返す。

 しかしスケートとカクトの剣は、テンが剣を振るったあとに残っていた魔力の剣に弾かれていた。


「剣の軌跡が、実体を持っている?」

 驚くスケートに若干ドヤ顔気味のテンが説明を行う


「無尽刀に魔力を込めると剣の軌跡を刃に出来るんだ、これが軌跡の剣、そして今から使うのが無尽一刀流、僕の切り札で、最強の剣だよ」

 そういってテンは、軌跡に出来た剣、軌跡の剣を無尽刀で弾くことで軌跡の剣をゴリラ3人組に飛ばし遠距離攻撃を行う。

 軌跡の剣を飛ばす時に振るった剣の軌跡が、次の軌跡の剣となる。そしてその軌跡の剣をまた弾く。

 止まることのない斬撃の嵐に、ゴリラ3人組は苦悶の表情を浮かべるばかりだった。


「ふふふ、どうだい脳筋兄、スケート、カクト!これがテンの無尽一刀流、鳳仙花だ!」

 

「ちょっとシン、僕の台詞なんだけど!!!」

 

 

あと数話、よろしくお願いします

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