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ナマケモノ殿下と説得

「ということでテン、婚約おめでとう」

 反乱が起きたその日、テンとエーミィさんは婚約発表を行った。


 とにかく盛大に、みんなに祝ってもらっているかのように。

 もちろんこのことを知っていたのはほんの一握り、多くの人にはテンが近々婚約発表を行うと言っていただけ。

 父上もガイエス兄貴も腰抜かしたかもなぁ。


 絶賛喧嘩してる帝国や武国の行方不明になっている大切な姫君が自国が内乱起こしたその日に息子と婚約発表する。

 あー考えたくもないね。


 さてさて、そんな考えはよそにテンとエーミィさんはとても幸せそうだな。それもそのはず、今まで会う機会があってもどこにも出かけることはできず、お互い違う人物として会っていたんだ。

 例えこの婚約が今回の内乱に合わせて帝国や武国を怒らせるためのものだとはいえ、婚約に変わりはない。


「エーミィ、遅くなった。やっと迎えにこれたよ」

「テン、ずっと待ってたわ、貴方がくるのを」


 幸せそうだな、ほんとによかった。


 ---


 こうしてユリウス様とガイエス兄貴は内乱を起こした途端武国と帝国に再度喧嘩を売ることになった。


 もちろん帝国と武国から物凄い抗議やらなんやらの手紙が飛んできたらしいが、改造した王城の大結界に全て弾かれてしまったようだ。


 帝国には父上の軍が向かっているからなんの問題もないが、恐らくなにかしら武国と話をつけて軍を南東部から中央に向かっていたガイエス兄貴は面目丸潰れだ。


 ガイエス兄貴はせっかく南東部から中央に移そうとしていた軍を再度南東部の武国との最前線に送る必要があった。

 もちろんガイエス兄貴が南東部を捨てて中央にくる予定だったのであれば戻らなくていいだろう、だが南東部にいる貴族はそれを許さない。自分の領土を守るのは最低条件での内乱だろう、恐らく周辺の貴族達から突き上げを喰らっている。

 もう内乱は起こしてしまったのだ、しかも前線に立つ平民や下級貴族、騎士に特に人気の高い第3王子が婚約を発表したという祝いの日に。


 南部の貴族で内乱に加担した者達は領民からの強い反発にあっているだろう、可哀想に。


 南西部の貴族や連邦なんてもっと大変だ

 主導は連邦の姫様と結婚した第一王子の内乱で、南西部の貴族は掌握済み、唯一の懸念である北西部のエヴァンス家はワイバーン討伐でいない。

 そんな状態でウキウキで兵を出しただろうに、蓋を開けてみれば内乱の主導は公爵家のボンボンで、途中まで進んだところでロバート様とクイル様が率いるエヴァンス軍がフル装備でいる。


 これで当面馬鹿でかい戦力を向けられることはなくなった、あとはフォーグラム家を乗っ取って旗を掲げているユリウス様の軍を打ち破るのと、ガイエス兄貴がどうするかだな。


 ---


「ということで俺たちはこれからフォーグラム領に行って反乱軍に奇襲をかけてボコボコにします。反乱はバレてるからはやいとこ武器捨てなさい!って感じ」

 俺はドラゴンのジークにのってフォーグラム領へ向かっていた。

 レイとクリスとアキナと護衛の数名も他の竜ドラゴンにのってついてくる。

 クリスにとっては自領の兵たちに攻撃しに行くんだけど大丈夫だろうか。兄のユリウス様だけじゃなくて他にも顔見知りがいるだろうに


「クリス、フォーグラム領を攻めるけど、大丈夫?」

 レイが気を使ってクリスに話かける。

 以前なら他の人に気を使うレイなんて見られなかっただろうに、最近では珍しくもない光景になっていた。クリスとアキナと過ごすのが本当に楽しいのだろう。


「そうだよ、クリスさんはお城に残っててもよかったのに」

 アキナも合わせて気を使う。

 アキナは元々人の気持ちがわかる子で人間的にもできた人物だった、本当に3人とも仲良くなったな。


「大丈夫です、覚悟はしてきました。それより本当に最初に降伏勧告を行ってよろしいのですか?奇襲だから有無を言わせずに攻撃した方がいいと思うのですが。」

 クリスはこう見えて本当に頭がよくて強い子だ。

 しっかりと覚悟を決めた上で最善策を提案してくれる。


「いや、今回はしっかりと話をすることに意味がある。奇襲なら奇襲の効果しかないけど、降伏勧告を行った上で数人の竜騎兵、それもお姫様であるクリスにやられたとあれば精神的なダメージは大きい。なんだかんだ兵はフォーグラム領の方がうえだからね、ガイエス兄貴と合流する前に兵も士気も減らしておきたい。」

 そう、フォーグラム領の兵は元々隠れて兵力を貯めていたこともあって5000人はいる。これに恐らくガイエス兄貴は武国の攻めに耐えるため人数を割く必要があるとはいえ1000人は連れてくるだろう。

 これに正規兵だけでなく領民を徴兵できると考えれば一気に増える可能性がある。


 これは内乱、そして義がなく自分たちは不利なほう。

 そうわかれば徴兵に応じる民は少ないし流れる兵や寝返る兵も多くなる。

 まず兵たちに伝えるのは今からお前たちは負けるってことだ。


「ということで、申し訳ないけど降伏勧告はクリスに頼むよ。君の声なら聞いてくれる人も多いさ」

「はい、頑張らせていただきます。」

 しっかりと声と胸を張って顔を上げる、大丈夫そうだな!


 ---


 フォーグラム家の屋敷についたのは夜になってからだった。


「うーん、とりあえず目立つために火球いっとく?」

 上空で待機している俺たち、あたりが暗いから周りを照らすために提案してみる。

 

「あっ、私も魔法使いたい!」

「じゃあ私も」

 アキナとレイが悪ノリしてしまう。

 まぁビビって人が出てくればなんでもいいしな。


 ということで屋敷に向かってある術式魔石を放り投げたあと、おもむろに火球を吹いてもらう。


 ボゴォンと大きな音がしてワラワラと兵が出てくる。領民もびっくりして家を出たり窓を覗いたりしてた。


「シンさんだけズルいよ」

「私も打ちたかったのに」

 レイとアキナから恨めしそうな声をかけれる。

 この2人にはしっかりと役目があるんだ。

 

「レイは大きめの氷作って、アキナはそれを照らしてくれない?」

 2人が頷いて氷作って照らしてくれる。

 アキナが作った明かりは氷の中で反射して柔らかい光となって俺たちを照らしてくれる。


 そこで俺とクリスを光が照らす。


「クリス、頼んだよ」

「はい、とりあえず諦めてもらえばいいんですよね。」

クリスは少し緊張した顔で深呼吸をしてしゃべりだす。


「フォーグラム領の皆様、お久しぶりです、クリスティーナ=フォン=フォーグラムです。夜分遅く、そして高いところ失礼致します。」

 俺の作った声を大きくする術式魔石でクリスの声は響き渡る。

 領民や兵がザワザワと騒ぎ立て始める。


「この度、フォーグラム家は私の愛する王国に反乱を行いました。この国の名を関する公爵家としてあるまじき好意です。しかも、反乱を主導しているのは我が父ではなく、兄であるユリウスと!我が兄は父を拘束、軟禁して家を乗っ取ったと聞いています。」

 事情を知らなかった領民や兵達が騒ぎ始め、事情を知っている騎士達も慌て始める。

 

「どういうことだ?フォーグラム候が拘束されている?」

「そういえば最近見ていないぞ」

「なんて大きなドラゴンが」

「反乱は王家の横暴を咎めるためときいたぞ」

「なぜこのことがバレている」

「どこから漏れた、反乱は今日発表したばかりなのになぜもうクリスティーナ様が???」


 反応は様々だったが、突然の出来事に誰も反論出来ない。


「南部一帯の貴族が一緒に反乱を起こしたと言っていますが、南西部はかの英雄ロバート様と、単身で黒のワイバーンという厄災を討ち取ったクイル様が率いる軍が討伐の準備をしているためこちらまでこれません。さらに南東部はテンセイ様が敵国のお姫様とご婚約されたため、嫉妬に狂った武国からの攻撃で動けないでしょう。皆様、今のうちに剣を下ろしていただけませんか?私クリスティーナと、第四皇子テンセイ様が保証いたします。」


 聞いている話と違うという声が湧き始めた。

 元々クリスはフォーグラム領でかなり人気が高く、よく知られていた。その彼女が、ドラゴンに跨り、大きな声で反乱を公然と批判する。

 もう領民や下っ端の兵の心は離れているだろう。

 何をやって出てこないのかわからんが、反論するユリウス様が出てこないため、クリスの独壇場となっている。


 しばらくしてやっと出てきたユリウス様、いや、反乱軍の首魁ユリウスは、大慌てで屋敷を出てきたようだ。

 反乱すると宣言したその日にゆっくり屋敷で寝てたのか?前にあったときはここまでアホじゃなかったと思うんだけどなぁ

 

 

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