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3章エピローグ

「シン、いよいよ明日だね」

 満面の笑みでお茶を飲んでいるのは俺の兄、イケメン王子と名高く、いずれくる王位継承戦でも有力な人間の1人とされるテンセイ=コウエンジ=アーヴィンだ。


「うぅ、今から気が重いよ」

 兄にイジられて落ち込む俺はシンセイ=コウエンジ=アーヴィン。ナマケモノ殿下と呼ばれ王位継承戦でもだれも眼中にない穀潰しだ。


「明日の16歳の誕生日に婚約発表を控えてるハッピーな男の発言とは思えないね」

 レイとの婚約発表を明日に控えており、俺の緊張は限界に達していた。


「美談だよねー、8才のころからお互いを高め合って、雷神ロバート様の攻撃を受け止めて認められたって。しかもみんなに婚約を認めてもらうためにたった2人で黒のワイバーンを愛の力で倒すっていう。」

「そんなことになってるの?誰がそんなことを」

「レイから話をきいたクリスさんが言いふらしてたよ。公爵家のネットワークを使って話を回してたみたい。」

 そんな、どうしてそんなことになってしまったんだ。クリスは若干色恋に関する話が好きなところがあるけど、そんな言いふらすような人じゃなかったのに。


「ふふっシンも、好きな人のことになるとポンコツになるね。」

 凄い笑顔で、いつかの話をやり返すように笑っていた。


「シンはハッキリいって評判がよくないでしょ?少しは僕のせいもあるけどさ。だからクリスは少しでも評判をよくしようとしてるんだよ。少なくともこの話は貴族の女性層には人気がでる、すると貴族女性からはナマケモノ王子じゃなくて、あの物語のシンセイ王子になるんだよ。」

 うーん、言われてみればたしかに、でと半分ぐらいはクリスの趣味が入ってそうな気がするなぁ。


「確かに最近、ずっと応援してましたとか、陰ながら見守っていました、みたいな手紙が届くなぁ。」

「学園では結構有名だったからね、男はシンとしか喋らないとか、レイに言われたらちゃんと出席するシンとかね。それに、黒のワイバーンを単独討伐するような家の1人娘を輿にいれるなんて、シンしかできないよ」

「褒められてるのかどうかわかんないな」


 2人でいつものお茶をしていると、周りがあわただしくなっていく。


「みんな忙しそうだね、そろそろ俺たちも解散する?」

「そうだね、そろそろ終わろうか、ここの護衛にも結構な人数を割くし。そういえば、三人娘はどうしてる?」

 三人娘、アールが命名した俺の婚約者候補というか婚約候補のレイ、クリス、アキナの3人のことだ。

 あれからこの塔に3人とも住んでおり、よく3人で行動しているためこう言われている。


「レイはともかくクリスとアキナは明日参加しないつもりだから、今頃レイを着せ替え人形にして遊んでるんじゃないかな?」

「あの氷笑姫と言われたレイが着せ替え人形になってるのは面白いね。じゃあシン、また明日」

「また明日」

 お互い笑顔で手を振って別れる。

 いつものお茶会だった。


 ---


「テンセイ、そしてシンセイ、誕生日おめでとう!そして出席してくれた我が宝である貴族たちよ、世の愚息のために集まっていただき誠に感謝いたす。さぁテンセイ、シンセイ、そしてレイチェル=エヴァンスよ、壇上へ」

 パーティ会場に圧倒的なオーラを放ちながら父上、すなわち、この国の王様、ニコラス=ケンリス=アーヴィンが登場し、言葉を放つ。

 いつも以上にしっかりと整えたテンと、今日ばかりはナマケモノではなく、テンと同じ顔の俺がレイをつれて壇上に上がると参加した貴族が騒ぎ出す。


「16になられたテンセイ様のなんたる覇気か、長兄のガイウス様に劣らぬ眼光、これは我が家も考えねば」

「わが目は節穴であったか?シンセイ様がこれほどの者とは」

「なんてお綺麗、そしてお似合いなのかしら、あれが氷のお姫様ね」

「シンセイ様とレイチェル様の物語は学校では有名でしたよ。レイチェル様は魔法を使うとき以外、シンセイ様の前でしか笑わず、シンセイ様はレイチェル様の言葉しか聞かないと」


「皆様、私共のために集まっていただきありがとうございます。もうご存じの方も多いと思いますが、この場を借りて弟シンセイより発表させていただきます。」

 テンが透き通る大きな声で注目を集める。これからは俺の番だ。

 深い礼を行い、いつもと違った真剣な顔ではっきりと声をだす。


「この度、このような場をいただきありがとうございます。私シンセイはエヴァンス家の長女、レイチェル=エヴァンスと婚約させていただく運びとなりました。これからもアーヴィン家、エヴァンス家両家、そしてフォーグラム王国をお引き立てのほどお願い申し上げます」

 そしてレイを方を見て、二人でしっかりと口づけを交わす。

 歓声が上がり、盛り上がりを見せる会場、そこに父上が割って入り、会場の空気を一変させた。


「せっかく皆様がお集まりなのだ、この場でもう1つ発表させていただこう!」

 父上のその発言を聞いた瞬間、会場が沈黙に包まれる、みな何が起こるかわかるように。


「これより王位継承戦を始める。ルールは簡単、各王子の勢力が何人の民の命を救ったか、1人換算で1ポイント、このポイントを参考に王位を継ぐ皇太子を決めるものとする」

 王子王女には前もって伝えられていたが、初めてルールを発表された貴族たちは当然の盛り上がりを見せる。


「期間はこれより2年、まぁ細かいことは決めぬし、いろいろと世の一存で決める。」

 会場は大歓声に包まれ、俺たちのお披露目は終わった。



「テンセイ、シンセイ、レイチェルよ、すまんかったな、おぬしたちの晴れ舞台をつぶしてしまって」

「いえいえ父上、これぐらいがちょうどいいですよ、シンセイはあと2人婚約者連れてくる予定ですからね。」

「なんと!さすが世の息子だ、となると、ユーグラムの養子と、フォーグラムの子かのぅ、手が早い。」

 発表から少し経った後、テンとレイと3人で談笑していると父上がやってきた。

 言いたいことはいっぱいあるが何も間違っていないためどうしようもない。

 そう考えているとレイが衝撃の発言を行った。


「お義父様、クリスとアキナとの婚約は私が決めたの、ちゃんと挨拶に来させますので、よろしくお願いいたします。」

「ガッハッハッハ、いい妻をもらったのシンセイ、大切にせい」

「はい、ありがとうございます。俺はもうなにが起きているのかですよ。」

 

 一先ず、婚約の発表は終わって、これで名実ともにエヴァンス家はテンセイ派に、そして黒のワイバーン討伐でポイントも増える。

 あとはエーミィさんとテンのことをなんとかしたいなぁ、俺だけ幸せになってテンはいつまでも隠れて会うなんて御免だ。


 ---


 その日の晩、俺はレイと寝室にいた。

 2人ともお風呂を済ませ、少し薄い寝巻き姿でベッドに二人で座っていた、つまりはそういうことだ。

 俺だって16歳の男の子盛り、婚約こそ俺のほうが早かったけど、男の盛りという点ではテンに置いて行かれていた。


「シン、結婚式はいつにするの?」

「時間さえ合えばすぐに結婚式をしたいと思っている」

 レイの白い肌に見とれていると、何を思ったのが唐突にレイが話す。

 まだ結婚式を挙げていないとはいえ、あれほどの者の前での婚約発表、年齢も問題なく、すでに結婚しているようなものだったから、あまり結婚式の日付を気にする必要はなかった、特に今、この場では。

 少し緊張しているのかな?


「わかった、でもその時は2人も一緒にね。だから出てきていいよ」

 レイが寝室の隅に目を向ける。するとその場からクリスとアキナがノコノコでてきた。

 いや、気づいてたよ?探知結界とか張ってあるし、ドキドキして築かなかったなんでそんなことないよ。


「「ごめんなさい」」

 クリスとアキナがすごい勢いで謝る。

 

「シン、怒らないで、私が連れてきたの」

 なるほど、だから俺がすぐに気づけなかったのか、レイが探知妨害してたのかな?

 いやなるほどじゃない、なんで連れてきたんだ、もしかしてそういうことをやるのが嫌だったのかな?


「後々2人とも結婚するんだし、これからも一緒にいたい。」

 レイのなぞの発言に4人とも顔が真っ赤になってしまって固まってしまった。

 そんなことある?初夜なんだけど?


「俺は、ちょっとだけ期待してたんだけど」

 そういうとレイは口づけをしてくれた。今日はこれで我慢ってことかな。


 そしてそのままクリスが勝手に新調していたベッドに普通に4人で寝た。

 

 ---


「さてシン、こっからが本番だぞ、ポイントも入ったし、フォーグラム家の陣営参加もあとはユリウス殿を説得するだけだ」

「でもまぁ、相変わらず脳筋兄の勢力が強いな、正直ちょっときついね」

 婚約発表を終えて1週間後のお茶会、話題はもっぱら王位継承戦だ。


 当初と比べればかなり調子がいい、アキナが王国の魔法部隊の訓練で無双したおかげか子爵家が合流してくれたり、クリスの根回しでフォーグラム家やその他の家もついてくれそうになっている。

 しかしそれでも旧体制派と軍関係者が支援者に多いユリウス兄の勢力が強く、まだまだという状態だ。


「やれるだけやってみよう、それに他にも姉上だって強力な相手だ、そもそも姉上にもまだ負けてる。」

「ほんとだね、とりあえずやれるところからだね、ほかにパイプがある家は―」

「坊ちゃんら、大変ですぜ」

 俺とテンが王位継承戦について話をしていると、血相を変えたアールが会話に入ってきた。

 俺とテンのお茶会は基本的に王子クラスでなければ邪魔するもののいない大切なものとなっている。

 そのルールをよく知るアールが急いで報告をしたということはそれ相応のことなのだろう。


「「どうした!」」

 逼迫した状況であることを察し俺とテンの声が一致する。

 

「まだ内緒の話なんですが、南部の貴族が連合を組んで謀反を起こすそうです。」


「「はぁ?????」」


 

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