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【外伝】イケメン王子とお嬢様

武国 フォーグラム王国の南東に位置する国である。

 この大陸で3番目に大きな国であり、その昔圧倒的な武力で地域一帯を制圧し国を起こした初代王を祭り武国と名乗っている。

 数年前まで武国の北側に位置するこの大陸最大の国である帝国と激しい戦いを繰り広げていたが、現在は同盟関係となっている。


 ---


 一通りの片付けを行い、僕はアーデルハイド嬢と馬車の御者台にいた。気絶してしまった護衛の人は馬車の中にそのまま寝かせている。

 

「それで、どうして武国のお嬢様がこんなところに?」

 ひと段落してから僕は他国のお嬢様がここにいるのか聞いてみる。

 すると彼女は顔を少し落として話し始めた。

 

「えっと、実は私、ある貴族に追われておりまして。それで追われてる最中に護衛の方々とも別れて、命からがらなんとか国境を超えたというところで盗賊に見つかってしまい、それでエイセイ様に助けていただきました。」

 落ち込んだ顔も絵になるなぁ。いや違う。

 ある貴族と濁したということは、聞かない方がいい部分なのだろう。

 それにしても運が悪い、いや、偶然にしては出来すぎている、あらかじめ盗賊に依頼がいっていた?あとでアールに確認する必要があるな。


「なるほど、僕らがもう少しはやく駆けつけていれば、護衛のお方を全て助けられなくて申し訳ありません。」

「いえ、大丈夫です。あの2人はもう助からないほどの傷を負っていましたので、それに、ローズは助かりましたので。」

 そういうと彼女は馬車の中を気にするそぶりを見せる。


「ローズは私が小さい頃からお世話をしてくれていて、今回も命の危険があるのについてきてくれたんです。助けていただき本当にありがとうございます。私は1人ぼっちになるところでした。」

 そういうとポロポロと泣き出した。

 こんな可憐な女性が悲しいんでいるのをみて、まず綺麗だと思ってしまった自分を責める。

 そして一刻も早く笑顔になってほしいと


「そうですか、では安全が確保出来るまで護衛させてください。代金は落ち着いてからで結構ですので。」

 安心させるように、泣き止んでもらえるように、精一杯の笑顔で対応する。

 こんな変な仮面をつけてるやつが何言ってるんだと言われそうだが、それでも出来ることをしたかった。

 

「何から何までありがとうございます。しかし、頼ることのできる貴族もおらず、どうしたものかと。」

「でしたら、でしたら僕に任せてください、必ず悪いようにはしません。いつまででも匿います!」

 胸を叩き、任せろ、というアピールをする。


「いや、私の存在がバレたらでも国際問題になりかねず、一介の冒険者ではたちうち出来ないような問題が」

「大丈夫です。私は実はー」

 そう言いながらマスクを取り外そうとしたその時。

 

「はっ、お嬢様!」

 馬車の中で寝かせていた護衛の人が目を覚ます。


 僕は仮面を取り外そうとした手をゆっくり下ろした。仮面を外すことはなかった。


「えっと、一旦とめますので、どうぞ馬車の中へ、私はこのまま街まで向います。」

「あの、はい、お気遣いありがとうございます。」


 言うタイミングを逃してしまった。

 この国の王子だから大丈夫と言えなかった。


 ---


 道中、馬車の中では私に声が聞こえないように遮音魔法が使われており、何を話しているかはわからなかった。


 アールと合流し、そのまま街の近くについたところで馬車を止めた。


「お2人とも、提案があるのできいていただけないでしょうか?」

 馬車をノックして反応を待つ。


「はい、どうされましたか?」

 中から美しい声が聞こえる。


「恐らく、御二方とも所在を知られたくないと考えます。本当に申し訳ないのですが、であれば、僕のような若輩者がひいた馬車は目立つため、このまま街に寄らず、王都まで行きたいと思います。」

「なるほど、わかりました。しかし、王都へは大丈夫なのでしょうか?」

 馬車から顔は出してくれなかった。完全に壁を感じた。

 

「見張りは僕とアールでやります。王都への入場はアールが入れば間違いなく大丈夫です。あいつはあれでもこの国も元Sランク冒険者です。」

「わかりました。ひとまず野宿ということですね、これまで何回もしてきたので、野宿に問題はありません。見張りはローズも手伝わせてください。」

「わかりました。しかしローズさんは怪我の具合が心配なので明日からでお願い致します。」

 うん、対応に間違いはなかったはずだ、でもアーデルハイド嬢は顔を出すことはなかった。


 --


 次の日。アールと御業台にて話をしていた。


「坊ちゃん、嫌われちゃったんすか?」

 え?


「やっぱりそうなのかな?ズカズカと理由聞いたりして、僕に任せてとかいう臭いセリフ使ったからかな」

「坊ちゃん、何やったんですか?」

「えっと、アールがいなくなってからはーーー」


「何やってんすか、それ、アーデルハイド嬢ちゃんから見たら、盗賊から助けてくれた少年が、いきなり説明し辛いことを聞いてきて、簡単に護衛を申し出てるって話ですよ。身分も明かしてないのにそんなことして、しかも元Sランク冒険者に命令しているという状況、怖いに決まってるでしょ。」

 うっ、耳が痛い。


「まずは情報を、そして安心させようと思って」

「順番が逆ですよ、相手は坊ちゃんと同じ年ぐらいの女の子なんですよ。しかも勝手知らぬ他国で、護衛は死んで、残り1人の身内も倒れている。」

「ごっ、ごめん」

「急にポンコツにならないでくださいよ、惚れたとかでもあるまいし」

 顔が真っ赤になってしまう。どうしてこんなに頭が支配される


「坊ちゃん、マジですか?」

 アール目を大きく見開いて信じられないという表情をする。


「どうりでどこの貴族のお嬢様にもなびかないわけだ。わかりましたよ、1回だけチャンスをあげるので、しっかりお話ししてくださいね。」

 頭をかきながらため息を吐き、それでも協力をしてくれるらしい。


「何言えばいいのかな?」

「普段通り相手の話を聞いてくださいよ、なんでいつもやってる事ができないんですか」

「いつもは基本興味ないから合いの手打ってたら向こうがずっと喋ってくれるから。」

 はぁぁぁとため息を吐き再び頭をかく。


「とりあえずお嬢ちゃんの話を聞いてください。それで大丈夫です。」



 その日の夜、俺が見張りをしていると、馬車の中からエーデルハイドが出てきた。


「あっ、エーデルハイドさん」

「あの、エイセイさん、中々会話できる機会がなくてごめんなさい。ローズと話をしていて、今後どうしたらいいとか考えていて、そのことで頭がいっぱいで中々話せなくて。」

 可愛い顔で、申し訳なさそうに語った。


「嫌われた訳じゃなかったんですね」

「そんな、命を助けてくれて、護衛までしていただいているのに嫌うなんて」

 暗くてあまりわからないが、赤を赤くしながら答えてくれた。


「よかったら少しお話できませんか?」

「はい、私でよかったら」


 ---


「その人がローズに水をかけたのをみて怒ってしまって、気づいたら思いっきり頬を叩いてしまったんです。そしたら惚れたとか言い出して大変だったんですよ」

「ふふっ、その気持ちは少しわかるかも、アーデルハイドさんはとっても可愛いからね」

 僕がそういうとアーデルハイドさんの顔はどんどん赤くなっていく。


「かっ、可愛いですか?あ、ありがとうございます。」

 言われ慣れているであろう褒め言葉にこんなに反応しているのはなんでだろう


「どうしてそんなに照れているのですか?可愛いと言われ慣れてそうですが」

 するとアーデルハイドさんは中々僕の顔を見ようとしないような反応をしめした。

 

「いえ、あの、エイセイ様、仮面はよろしかったのでしょうか?」

 あれ、顔を触ってみると確かに仮面が取れている、この仮面はシンが作った術式魔石で発動していて一回の発動で12時間ほど続きはずだが、アーデルハイドさんと話す時はまだ2時間ほど猶予があったはず。

 まさか、気づかないうちに2時間経っていただと!?


 でもこれって、俺の顔にドキドキしてくれたってことかな?


「えっと、少し早くなってしまいましたが、いずれ正体を明かそうと思っていたので特に問題はないです。」

「正体ですか?」

「ええ、私はテンセイ=コウエンジ=アーヴィン、このフォーグラム王国の第3王子です。」

 予想以上の正体に完全固まってしまうエーデルハイド嬢。


「この国の王子が責任をもってあなた達2人を保護致します。もちろん国に送り返したりはしないので安心してください。」


 しばらくすると、少し考え込んだエーデルハイド嬢が意を決したという表情で話かけてくれた。


「あの、エイセイ、テンセイ様が正体を明かしたのであれば、私も話す必要があります。」

 そういうとエーデルハイド嬢はイヤリングに指をあけ、少し魔力を流す。不思議な黒い髪は美しい真っ白な髪へと変わった。


「まさか」

 驚いて口の塞がらない僕は頭の中で考えが激しく動き回る。


 褐色の肌は武国の王族の特徴、白い髪の毛は帝国の王族の特徴。

 そして武国と帝国はおよそ13年ほど前に王族同士の婚姻により同盟関係となっている。


「私の名前はエーミィ=アッシュバーナー。その、アッシュバーナー帝国の第二王女です。」

 

 なんだ、現在戦争中の帝国の曰くつきのお姫様か

 

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