【外伝】イケメン王子とナマケモノ殿下
「やだ、めんどくさい」
めんどくさそうな顔で悪態をつくのはこの国の第四皇子、僕の自慢の弟だ!
「まぁまぁシン、そんなこと言わずに、大したことないからさ、きっと」
僕の弟はめんどくさいと言って授業をサボったり、貴族との約束は断ったり、本当に酷い奴と言われている。
でもその実、困った人はほっとけない、関わってしまったら助けてしまう。真摯にお願いされたら断ることなんて出来ない。
ようするにとてもチョロい。将来が心配になる。
「もう、今回だけだよ、まったく」
「ごめんごめん、ありがと」
ほらね、いっつもこうやってお願いを聞いてくれる。
いっつも僕を助けてくれるんだ。
そのくせ、自分の功績は僕に譲ろうとするし、自分を悪く言う奴は無視する。
とっても損な性格なんだ。
だから昔から、こっそりシンのいいところを色んなところで言ってるんだ。
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学校に入学して半年、校内では同年代を集めた模擬戦が行われていた。
「おいおい、これすげぇぞ、低学年のレベルかよ」
「どっちが勝つんだよ、剣が見えねぇぞ」
模擬戦の会場で僕は低学年の部で全勝同士の決勝を行なっていた。
「はあああ!」
歳の割に長身の剣をもって猛攻を仕掛けるも対戦相手であるレイは私の猛攻をいなしていた。
「アイスランス」
「ファイヤーボール」
猛攻を防ぎながらレイが魔法を使ってくる、凄いセンスだ、でも僕も剣での攻撃を行いながら魔法で返していく。
30分にも及ぶ互角の試合は、僅差で勝利できた。
「テン、お疲れ様、ギリギリだったね」
「うん、本当にギリギリだった、さすがエヴァンス家のお姫様だったね。次はどうなるかわからないや」
シンはタオルをもってきてくれた、でもなんだか僕じゃなくてレイのほうを見ていた。
これはもしかして、ちょっと気になってるのか?
我が自慢の弟、もしかしてこういう子がタイプなのかな?
よし、ここはお兄ちゃんが手伝ってあげよう。
「レイチェルさん、今日はありがとう。もしよかったら僕の弟と対戦してくれないかな?僕でも勝ったことないんだよね。」
そう教えると、少し興味を持ってくれたみたいだ。
それから模擬戦をやって、少しづつ話すようになっていた。
「レイチェルさん、僕の弟どう?いい男でしょ?フォーグラム王国の第四皇子で、変な虫もついてない、とってもオススメの物件ですよ」
「変な虫ならあなたがいる」
言葉も態度も強い、うーん、シンは苦労しそうだなー
でもお兄ちゃんはレイチェルさんとくっつけるって決めたんだ、任せておけ。
「あんまり嫌な感情抱いてないってことでいいかな?もしよかったら今度10歳の誕生日パーティでシンのパートナーしてくれないかな?」
ニコニコしてちゃんとお願いする。だいたいの女の人はこうするとみんなお願いを聞いてくれる。
「やだ」
ごめんねシン、お兄ちゃん失敗しちゃったかも、でもこれくらいじゃ諦めない。
「シン、誕生日パーティにはレイチェルさんとか誘ってみたら?王族の人間がパートナーに親戚とか連れてくると恥ずかしいよ」
「そんなもんなの?聞いてみようかな、最近模擬戦以外でも喋るようになったし。」
そう言ったシンはちゃんとレイを誘ってオッケーをもらってた。バレないように使用人にこっそり見てもらってたから、後から聞いてガッツポーズしたよね。
もちろんメイドや使用人にもパートナーの意味は口止めしたよ。
そのあとロバート様に絡まれて死にかけてたのはほんとにごめんね。
まぁでもそれでエヴァンス家の後ろ盾も貰えたし、婚約者も出来たし、結果オーライじゃダメ?
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これ以外にも色々やったよ、宮廷結界術師にシンの結界術の才能がどれだけ凄いか熱弁したり、僕に負けた騎士の子にシンと比べてどれだけ防御が下手くそか解いたり、僕のファンの女の子にどれだけシンがいい人か話したり。
結界術師の人以外は全然ピンときてなかったみたいだけど。
それでもこっそりだけど少しづつシンのファンが増えてきていた。
やっぱり我が弟の魅力は本人が隠しきれないんだろうね。
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「おいナマケモノ、決闘だ、俺の邪魔をしやがって、おまえの邪魔がなきゃクリスティーナは俺のものだったんだよ」
どこかの貴族がどうやらシンを狙ってるようだ。
「おいおい、俺も混ぜろよ、俺だって邪魔されたんだよ」
「ほらほら、俺も入ってやるよ、3人だから逃げる理由できてよかったですね、ほらほら、早く謝れよナマケモノ」
どんどん人が増えてきた、どいつもこいつも女の子に迫っているところをシンに邪魔されたらしい。前もってシンに教えてたのは僕だけどね。
本当に情けない、シンは多分気にもしてないのに。
なんだが、そのまま決闘が始まることはなく、シンはそいつらの話を完全無視して本を読んでいた。
困った貴族はなんの恥ずかしげもなく教師と生徒を呼び、どうしても決闘が必要な空気をだす。
連れられて近くまで見学にくることになったが、シンはこちらを一目見ると、大丈夫というリアクションをとった。
「テンセイ様はこれは我々とシンセイ様の問題ですので、口出しはご遠慮ください。」
最終的に10人ぐらいになった貴族達は特に手を貸す気のない僕に釘を刺してきた。
「勝手にやったらいいよ、シンが負けても僕が話はつけるなら、全力でやってね」
兄貴にも捨てられてんじゃんとか、散々な言われようだ。
シンも重い腰をあげてついに決闘を了承した。
貴族達が勝ったらシンが全員の家に謝罪、シンが勝ったら今回女性に言い寄っていたことをお互いの家に報告ということになった。
「めんどくさいから1対10でいいよ、10人いっぺんにかかってきて、その代わり、日が暮れるまでに俺が降参か気絶しなかったら俺の勝ちでどう?」
「そういえばお前は攻撃下手くそだったな、いいぜ10人に勝てるならな」
貴族達は爆笑しているか、レイや教師陣の何人かは気づいてしまったようだ、シンの勝ちに。
決闘が開始した瞬間、そのまま10人の貴族達がそれぞれ剣や大剣、斧や槍、魔法で攻撃を仕掛ける。
「包囲結界発動」
シンが指を鳴らすと綺麗な円柱状の結界にシンが包まれる。その結界は貴族達の全ての攻撃を受け止め、平然と輝いていた。
「日暮まで4時間ぐらいかな?本を2冊もってきたから、今日はゆっくり読もう。」
シンは折り畳みの椅子とテーブル、水筒を取り出し、完全にリラックスする体制を作っていた。
貴族達が必死に攻撃するも、包囲結界は破れず、シンは水筒のお茶を飲みながら優雅に本を読んでいる。
最初は騒いでいたギャラリーも2時間経つ頃にはほとんど減っていた。
私もずっとみていたわけじゃないが30分おきぐらいに見るようにしていた。
ずっと見ていたのはレイと、何人かいるシンの隠れファンぐらいだった。
隠れファンにいたってはシンセイさまーと黄色い声をあげるものもいる。一瞥もせずにヒラヒラと手を振って返していた。
一方貴族の方は、無理に上級魔法を使おうとして暴発して死にかけるものもいた。
家宝の剣を折ってしまったものや、魔力の使いすぎで気絶してしまうものも
阿鼻叫喚である。
卑怯者なんて声はシンには届いていない、ただじっくり読書をしていた。
「日も落ちたし、俺の勝ちでいいかな?」
3時間半ぐらいたち、日が落ちたタイミングをみてシンが声をかける。
他の生徒はもうみんな帰ってしまった。
「さて、みんな、10人がかりで負けたんだ、ちゃんとシンに謝ってね」
肩で息をしながまだシンを睨んでいたり、完全に戦意を失っていたり、しているが一様に謝罪する気はないようだ。
「テンセイ殿下もご覧になっていましたよね?こいつは最初から時間稼ぎしか考えていなくて、こんなの決闘じゃありません!無効だ!」
そうだそうだと同意する貴族達、ほんとに君たちにはガッカリだ。でもシンや私を逆恨みされては困るからね、いいところで矛を納めてあげないといけない。
「ふむ、たしかにそうだね、じゃあこの決闘は引き分けでいいかな?結界は僕に預けてくれ」
「テンセイ殿下がおっしゃるのであれば、、、」
急にみんな黙ってしまった、シンに恥をかかせることが出来なかったのはいいとして、こういうのは納得が必要なんだ。
「じゃあシンに謝ったりしなくていいよ、その代わり、貴族のご令嬢達に声をかけるのはやめてくれないかな?これから先テンセイ派として僕についてきてくれるみんなに、変な噂を立てて欲しくないんだ。だって僕が王になったら、みんな要職について貰わなきゃでしょ?」
そう、たとえなんの実権もないお飾り職だとしてもね。
ここまでいうとみんな目の色が変わる。
だってみんな貴族の次男やら三男以下、言ってしまえば何の力もないし出世もできない人達なんだ。それがほら、目の前に餌をぶら下げてしまえばすぐにテンセイ派に変わる。
「テンセイ派ですか?でも私達は次男や三男で家事協力は出来なくて」
「大丈夫、僕が力になって欲しいのは君たちの後ろにある家じゃない、君達に力になって欲しいんだ。」
少し前にでて、大きな声で演説を行う。
「相手が王子であろうと果敢に決闘を挑む勇気、例え敵わないとわかっても剣を振り続ける根気、そして憎き決闘相手の兄の言葉に耳を傾けることができる頭の柔らかさ」
何より扱いやすいその頭
「そんな君たちがテンセイ派に欲しい。大丈夫、家を説得する時はこういえばいい、テンセイが勝っても、支援してる王子が勝っても、我が家は繁栄を掴むことができると。そして僕が勝った時は、みんなは次期当主だ。だって僕を支援して、僕を勝たせたのはみんなでしょ?先見がない人を次期当主とする家はそんなにないよ。」
大きく腕を広げてわざとらしく演説する。
シンとの決闘で精魂つきはて、言い訳しかやる事がない人にはこれがよく効く。
結局10人とも、シンと決闘していたことなんて忘れて僕の陣営に加わってくれることになった。
「よし、シン、お待たせ、帰ろっか」
「あっ、シンセイ様なら決闘が終わってすぐに帰りました。」
さすがに酷くない?そりゃあ、決闘するように誘導したの僕だけどさぁ




