ナマケモノ殿下と英雄
フォーグラム王国の北西に細く伸びる北西部、決して大きくはない領土ではあるが、その領土一帯をシンセイは味方につけた。
本来はシンセイの婚約者であるレイの実家、エヴァンス領だけであり、形だけの支援の予定だった。しかしクリスの説得やクイル、アキナ、レイによる更生、そして黒のワイバーンの討伐により最大限の協力を得ることに成功した。
そして傷を癒したシンセイ達はレイとクイルの実家であるエヴァンス領へ戻り、報告を行っていた。
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「ガッハッハッハ、よくやったな息子達よ。俺よりも凄いとこをやるとは、生意気な奴らだ。」
報告を聞いたロバート様は非常に上機嫌で何度も俺とクイル様を叩いている。レイを叩こうとしたら睨まれていたから代わりに俺たちが何度も叩かれた。
「しかしそうなると王位継承は難しくなるわね、たしかシンセイ様のとこはあんまり強くなったわよね。今回の件は中立だったり、武闘派の人たちを大きく引き込む功績よ」
ロバート様の奥様であるジェーン奥様が話をする。
ロバート様は全然内事に詳しくないため、ジェーン奥様を筆頭に何人かも正室側室の奥様方、その子供が対応しているため、こういった話になるとロバート様は蚊帳の外だ。
「そうですね、第三王子派、テンセイ派が大きくなるため、正直対応に追われると思います。」
正直いって対応に追われるどころの話ではない、テンセイ派は母親の家の権力がないため、ハッキリいって信頼出来る人物が少なすぎる。
「なるほど、わかりました。クイルと、それからうちの子の内政出来る子を2人連れて行きない。どっちの子も護衛は必要ないぐらいには強いわよ」
願ってもないことだ、内政ができる人間は常に足りず、護衛も極力必要ないとなれば増えるのは出費程度である。
ロバート様のご子息はクイル様が最強で、他は冒険者になったり自由に生きている人や、エヴァンス家を支えるために内政を勉強している人達ばかりだが、全員腕が立つ。
「はい、ありがとうございます!頼りにさせていただきます!」
しっかりと礼をして、感謝を述べる。
「でも一つだけ条件があるわ」
ジェーン奥様は指を立て、真面目な表情で言葉を続ける。
「あなた、今度の16の誕生日でレイと結婚しなさい。」
一般的に成人となるのは15、そして結婚は16からと言われている。
もちろん16からと言っても、誰もが16から結婚するわけではなく、ほとんどの人は20過ぎてからになる。
このままテンセイ派が力をつければ、俺は政略結婚のいい的になるため、今のうちにレイを一番にしておきたいのだろう。
「あなた達、随分と前からお互い慕いあってるのでしょ?ちゃんとシンセイ様から思いを伝えて、ちゃんと私の子を幸せにしなさい。」
レイのお母さんは出産時になくなっているため、ジェーン奥様の子供ではない、しかしエヴァンス家では全員が全員の親として一様に屋敷で育っている。唯一の女の子であるレイは、全員の愛娘であり、妹ということだ。
「はい、しっかりと言葉を伝えて、私の家に連れていきます。」
「うん、よろしくね」
よし、あとはちゃんとレイに話をしないとだな。
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そのままエヴァンス家の屋敷に泊まった夜、四重結界の正確な発動について考えていて行き詰まったため、少しだけ屋敷の庭を歩いていたら。
「あっ、シンさん」
考えにふけていると遠くからアキナに声をかけられた。
遠くから走ってこちらに近づいてきてくれる。
「アキナさん、どうかした?」
「もしよかったら、ちょっと話さない?こっちきてから2人でってなかったし」
黒い艶やかなロングストレートの髪が屋敷の灯りを受けて煌びやかに揺れる。
ニコッと笑うアキナさん、そこには英雄や赤のワイバーンを倒した魔法使いではなく、これまで人の生き死にが身近にない平和な世界で暮らしていた人の笑顔があった。
「シンさんはさ、私と何回もお茶してたけど、どうして婚約者のこととか、クリスさんのことは言わなかったの?」
2人で少し歩きながら、話をする。アキナさんは前を、少しだけ上を見ながら話てくれた。
「女性と話をするときに他の女性の話をしちゃダメってアールに言われてね」
アールは俺とテンセイが共同で使ってる護衛?凄腕の元冒険者。年上好きの結構な遊び人で、女の子の扱いについてよくアドバイスされる。
「なるほどねー、でも、もうちょっと早く教えて欲しかったなー。私さ、シンさんのこと好きになっちゃった。」
少しだけ目に涙を浮かべている気がする、冗談とかではなく、本気の話なんだろう。
でも何も言えない、なんて言ったらいいかわからなかった。
「あのね、私、前の世界で死んで、こっちにきて、凄い怖かったんだ。ユウ爺さんが助けてくれたんだけど、みんな言葉繋がらないし、文化も全然違うし、あっ、みんな優しかったんだけど。」
こっちをみて慌てて訂正する、そしてまた遠くを見ながら話を続ける。
「それで、シンさんがきてくれてさ、凄いカタコトで全然下手くそなんだけど、私の知ってる言葉を話してくれるの、私が言ってることをかなりわかってくれるの。ちょっと恥ずかしいんだけど、私のために王子様がきてくれたって思っちゃったんだ。」
赤い顔で、照れながら話をしてくれる。
「そのあともさ、いっぱいお話ししてくれるし、デートにも連れて行ってくれるし、シンさんとしか話できないけど、言葉はどんどん上手になるし。ほんとに、助かったんだ。」
「でもさ、翻訳の術式魔石が出来てから、これを作るためにお茶に誘ってくれてたの?って、びっくりしちゃった。今でもちょっと怒ってるかも。」
顔をプクッと膨らまして、少ししてからちょっとだけ笑う、その姿に目が奪われそうになる。
「それで、シンさん恩返ししたくて、シンさんとずっと一緒にいたくて、頑張って魔法の練習したんだよ。」
アキナの手から柔らかい風の魔法が吹き出し、俺達の上に登ると温かな炎となる、そしてその炎が青く染まっていき雪になる。
小さい規模だが、高度な魔力の使い方だった。
「それでやっとテンさんとアールさんに認められて、シンさんのお抱えになったの!そしたらなんかすっごい可愛い人連れてくるし、婚約者に会いに行くとか言うし、もう、シンさんの馬鹿って思ったよ。」
ビクッと身構える俺に笑顔で返してくれた。
「ふふっ、でもクリスさんやレイさんはすっごくいい人で、すっごく楽しくて、こっちにきてから初めて出来た同性で年齢の近い友達になったんだ。」
「それでね、色んな話して、クリスさんと2人でシンさんの話もしたんだ。そしたらレイさんは2人ならいいよって、シンにはそれぐらいの器があるって、クリスさんも大丈夫って言うんだ。」
そこまで言うとこっちをまじまじと見つめてくる。
「ねぇシンさん、私クリスの護衛頑張ったよ、赤のワイバーンっていう凄い怖いワイバーンちゃんと倒したんだ。だからさご褒美が欲しいな」
そういうとアキナは若干の上目遣いでこちらにおねだりをしてくる。
「えっと、本当に凄いよ、助かった。俺に出来ることならなんでもするよ」
「なんでするって言った?」
あれ、なんかデジャヴを感じる
なんだろう?
首を傾げていると
「じゃあ、最後になっちゃったけど、私も貰うね。」
顔を両手でガシッと掴まれ
そのまま唇と唇が重なった。
アキナは凄い勢いでダッシュして屋敷に戻って行った。
屋敷の影からクリスがひょこっと顔をだして手を振っている。そこからレイも出てきてこっちへ向かってきた。
これは、2人に見られていたんだな、というか最初からかな。
俺がバツの悪い顔をしているとレイがそのまま近くにくる
「シン、気にしなくていいよ、私がいいと言ったから」
「いいって、何を言って」
「クリスとアキナのこと、好きでしょ?嫌いじゃないでしょ?」
「それは、そら嫌いじゃないしどっちかというと好きだけど、俺はレイが」
レイは俺の発言を止めるように指を口に当てる。
「シン、気持ちはわかった、でも口には出さないで。フォーグラム家に助けてもらうため、英雄を他に流さないため。それでいいから、ちゃんと2人とも、私も含めて3人とも、責任とって」
真剣なレイの迫力に気圧されてしまう。
「はい」
もう尻に敷かれることが確定してしまった気がする。
3人とも美人だし性格もいいし仲もいいなんにも文句ないけど
普通急に2人も増えないでしょ??????
「シンは普通じゃないよ」
ニヤニヤしたテンの顔が浮かんできた。
俺は色々あったけどちゃんとしたぞ、次はテンの番だな
いつもいいねや評価、ブックマークいただきありがとうございます。
小説を書くのは初めてなので拙いですが、少しづつ上達できればと思っています。
エピローグ前に少し外伝を挟んでエピローグにします。
もしかしたら次が最終章になるかもしれません。
それと少し更新が遅くなるかもしれないです。申し訳ありません。




