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ナマケモノ殿下とワイバーン

 魔力無駄遣い作戦 リンドブルム山の山頂周辺は広範囲に高い魔力を帯びており、その魔力が集まってワイバーンが産まれるとされている。

 そのワイバーンの元となる魔力を自動防御結界を使うことで無駄遣いさせ、魔力の集まりを悪くするのがこの作戦である。


 そしてもう一つ

 シンセイ一行にはもう一つ、黒のワイバーンの討伐という目標があった。


 ドラゴン 竜とも呼ばれるこの「生き物」はワイバーンとよく似た生き物ではあるが、ワイバーンと違い知能があり、人と交流が出来る生き物である。

 ワイバーンと違い色による個体差はないが、黒、そして白のドラゴンは珍しく、よく群れのリーダーとなっている。


 ---


 魔力無駄遣い作戦と黒のワイバーン討伐のため、俺たちは準備を行い、レイ、クリス、アキナの3人と休憩をとっていた。


「ということで、俺たちは黒のワイバーンを倒しに行くつもりだ、クリスは騎士でもないし訓練を受けてるわけでもない、内政の勉強で来ているだけなんだ。だからここで待ってくれないか?」

 そういういうとクリスはプクーっと頬を膨らませてから少し怒ったような口調で話した。


「イジワルなこと言わないでください!私は何が合ってもシン様とレイ様についていくと決めたんですよ!」

「クリス、ここから先は戦場、今までみたいにシンの結界で簡単になんとかなる相手じゃない、私たちじゃ守りきれない。だからここにいて」

 レイは真剣な表情でクリスに訴えかける。恐らく敬愛しているレイにそんな事を言われて涙目で固まってしまった。


「それからアキナ、君は俺のお抱え魔術師だ。この世界にきて言葉がわからなかった頃から知っている。」

「そう、もちろんついていくわよ。今更シンさんに命を預けられないなんて言わないわよ、戦力にもなるし」

 アキナの方をみて話すと胸を叩いて張り切る。


「だから、ここに残ってクリスの護衛をしてくれないか?ここはブルメシア領、いくら領邸とはいえ王国屈指の危険地帯なんだ、クリスはフォーグラム公爵家のご令嬢、ゆくゆくはフォーグラム公爵家をテンセイ派につけてもらうための切り札なんだ、信を置けるものを護衛にしたい。」

 本音と建前が半々である。半分本音としてクリスの護衛はしてもらいたい、アキナであれば街の兵力による援護込みで赤や黒のワイバーンにも対抗出来るだろう。信のおける護衛だ。

 そしてもう半分、黒のワイバーン討伐では俺もレイもクイル様もはっきり言って余裕がない、他の人を守る余裕がなくなってしまう、つまり俺たちを含めて人が死ぬ可能性がある。護衛の人達はそこまで腕がたつわけじゃない、何人かは黒のワイバーン相手に生き残れないだろう。

 戦争や人の生き死にが身近にない平和な世界からきたと言っていたアキナさんそういった部分はなるべく見せたくない。

 真剣な顔でお願いをする。


「わかった、でも必ず帰ってきてよ。クリスと2人でちゃんと待つから。」

 アキナは少し悔しそうな顔で、少し涙目で、それでも飲み込んでくれた。

 

「大丈夫、シンは死なせない、私が守る」

 レイが無表情のまま、少しだけキリッとした口調でカッコいいことを言ってくれる。

 

「ダメ、ちゃんとレイも帰ってきて、お願い。」

「私も、私もお2人をお待ちしています。帰ってくるまでここにいます。」

 2人とも今にも泣きそうな顔で約束してくれた。


「絶対に帰ってくるよ」


 ---


 アキナはいないが、前回と同じ要領で術式魔石を何個か大嵐域にぶっ飛ばした。成功したかどうかはわからないが、これからのワイバーンの出現数でわかるはずだ。


「さてシンセイ、こっからだぞ、どうやって黒のワイバーンを呼び出すつもりだ?」

「これを使います。」

 そういって俺は馬車からビンを取り出す。


「これは俺の相棒、ジークの尿です。つまり黒竜、ブラックドラゴンの尿です。」

「なるほど!」

 ニヤリと笑みを浮かべるクイル様


 ドラゴンの尿はモンスター除けとなるため、商人や一部の冒険者には重宝されている。そこそこの値段で売れるためシンセイはよく商人や冒険者に売り捌いている。あとバレバレだが内緒で町外れの孤児院に寄付したりしている。


 だが、ワイバーンにだけは違う、ワイバーンはドラゴンを完全に目の敵にしており、人間よりも優先して攻撃してくるモンスターである。

 一般的に同じ色のドラゴンに強い敵意をもっているとされているため、ワイバーンの目撃情報があると安価な緑や青のドラゴンの尿の使用が制限される。(赤と黒のワイバーンは個体数がほとんどいない伝説並みの生き物なのでフォーグラム王国北西部以外では相対することはない。


「ジークの尿をリンドブルム山の近くに撒き、黒のワイバーンの飛来を待ちます。」

 そう言って俺はリンドブルム山の麓に瓶を投げ込む

 

 パリン


 瓶が割れ、風魔法で匂いを上空へ飛ばす。


 しばらくすると大きな鳴き声と共にワイバーンの群れと黒いワイバーンが現れた。


 2頭も


「2頭かよ、さすがに想定外だな」

 クイル様が剣を担いでいつもにも増して真剣な顔で、冷や汗をかきながら魔法の準備を行う。


「2頭か、マズイなぁ、護衛の皆さんは周りにいる緑と青のドラゴンをお願いします。黒の2頭はクイル様も私とレイで対処します。死なないでくださいね!」

「1人でも欠けたらクリスとアキナが悲しむ、みんな、生きて」

 護衛の兵に指示をだしてしっかりと構える。

 以前よりも命の危機を感じていた、どちらかというととマズイのほうの危機を感じていた。


「トールブレイカー!!!」

 クイル様の魔法がワイバーンの群れに直撃し、かなりの数を減らす。

 しかし肝心の黒いワイバーンは完全に回避しており、クイルが様は下打ちをしていた。


「シンセイ、俺が一頭やる、お前とレイでもう一頭あいてに時間を稼げ、一頭倒したらすぐに向かうから」

 クイル様は時間を稼げと言ったが、クイル様といえど黒のワイバーンとの一騎討ちは正直未知数。人数差を考えれば俺とレイが先に黒のワイバーンを倒す方がいいのだが、そもそも2人で相手にしても荷が勝る。


「クイルお兄ちゃん、さっさと倒してね」

「久しぶりにお兄ちゃんと呼んでくれたな!少しだけまってろよ!」


 クイル様、俺とレイ、どちらかが負けたら敗北の、敗色の色の濃い戦いが始まった。


「フリーズランス」

 一頭の黒のワイバーン目を向けるため、レイが魔法で攻撃する。十分な威力の中級魔法が直撃するも大したダメージはなく魔法の方が砕けてしまった。

 黒のワイバーンは少しだけめんどくさそうにレイをみて、両手の爪で襲いかかってくる。

 

「包囲結界!」

 俺がレイと黒のワイバーンの間に立ち、正面で打ち合う、その隙をレイが攻撃するという作戦だ。


 包囲結界を発動して黒のワイバーンの前に立つが、黒のワイバーンは結界に気づくと、爪をたて容易く包囲結界を切り裂いた。


「これ、不完全なら上級呪文も弾くんだけど、なぁ」

 包囲結界を左の爪で容易く切り裂いた黒のワイバーンはそのまま右の爪を振り下ろし俺を攻撃してくる。

 その攻撃を剣で受け流すと爪が地面に突き刺さる、ゴォンと音がなり、地面が揺れる。

 

 その揺れに足を取られているとさらに左の爪を横なぎにしてくる、その攻撃を三重結界で上に弾くとワイバーンの左胸があらわになり隙ができる。俺の後ろで構えていたレイはその隙を逃さず攻撃する。

 

 「フリーズレイピア」

 細剣に氷を纏わせた魔法で左胸を突く


 氷がワイバーンの胸を貫きワイバーンが悲鳴を上げる。

 致命傷とはいかなかったが、確実なダメージとなった。


 しかしそれはこれまで俺たちのことを道端の邪魔な石としか認識していなかった黒のワイバーンが、敵と認識してしまった。


 大きな咆哮をあげ空へ上昇する。

 そして口から巨大な火球を俺とレイに向けて吐き出した!


 三重結界で防ぐとそれを確認した黒のワイバーンはさらに咆哮あげ空中から襲いかかってくる。


「本番はこっからか、レイ、頼むよ」

「大丈夫、父さんよりは弱いはず」


 本当はクイル様含めた3人で1頭の予定だったのに、めんどくさいを超えてる。


 死ぬかもなぁ。

戦闘シーンを書ける人は本当に凄い、日々勉強です。

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