ナマケモノ殿下と無駄遣い
最近投稿時間バラバラで申し訳ありません。
魔力 生き物の体内から作られるエネルギーの1つ。
モンスターを構成する大きな要素となっており、一般的にモンスターは生殖活動等は行わず、魔力の収束によって自動で産まれるとされている。
空気中にも少しだけ魔力があるが、呪文や結界の構築に使用できるほどではないが、例外としてモンスターが産まれる前は大きな魔力が集まるとされている。
ワイバーンが産まれるとされている大嵐域を、探知結界によって調査を行ったシンセイ一向はブルメシア辺境伯の屋敷に戻っていた。
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「なるほど、魔法で術式魔石を大嵐域まで飛ばしてあらかじめ時間指定していた探知結界を発動ですか。まさかリンドブルム山をそんな方法で調査してしまうとは、シンケイ様は機転がききますね。」
報告を聞いていたリンドブルム侯は驚きと悩みが混ざったような表情をしていた。
「シンセイは英雄語がわかるから、賢者様や聖者様の書記を読んでいます。だから時に変なことをします。」
レイが少し辿々しい敬語で理由を説明してくれる。
「それでシンセイ、調査結果はどうだったんだ?」
トールブレイカーでワイバーンを一掃するという大仕事を終えたクイル様が椅子に座り、背もたれに身体を預けたまま質問をする。
「ええ、だいたいわかりました。やはり大嵐域でワイバーンが産まれているようですね。さすがに全部は探知できていませんが、恐らく霊峰リンドブルムの山頂には特殊な魔力が放たれており、それが収束することでワイバーンが産まれる。それが大嵐域となっているのでしょう。」
「細かい話はしらんが、大嵐域がワイバーンの発生源ってのは予想通りか。まぁ俺は難しい話はわからん、どうにかなるもんなのか?」
クイル様が難しい表情のまま、背もたれから背を離し、座ったまま前かがみの姿勢で真剣にこちらをのぞいてくる。
「一個だけ方法があります。」
俺は顔の前で指を一本たてて話を続ける。
大嵐域は上空の遥か彼方にあり、術式魔石を飛ばすようなやり方でもないと干渉すらできない。
術式魔石を飛ばすにしても大型のものは飛ばせないため、大規模な魔法で討伐したり、大嵐域を消滅したりすることはできない。
恐らく過去にも大嵐域の対処を考えたり、ロバート様のトールハンマーを大嵐域にぶち込んだりしていたが、結局改善には至っていない。
「大嵐域の中にほぼ無制限に動作する自動防御結界を発動する術式魔石を打ち込みます。この防御結界は特に何もしませんが、発動を維持するための魔力として周囲の魔力をかき集めるようにします。」
「なるほど!」
こちらの意図に気づいたのか、クリスが驚きながら声をあげる!あと多分レイも気づいた、少しだけなんかピクってした気がする。
よくわかっていない組のクイル様、ブルメシア侯は疑問を浮かべている。
アキナはもう蚊帳の外だ、ごめんね。
「ん?周囲の魔力?結界を維持するほどの魔力は自然からとれんだろ」
自然にも魔力があるが、微力で何かに使えるものではないというのは当たり前の常識であった。
「ここからはこのクリス先生が説明致します!」
「「キャー、クリス先生」」
クリスがいつものように教師の真似をすると、ノリノリのアキナと棒読み気味のレイの合いの手が入る。
クイル様が少し頭を抱えながらブルメシア侯に少しだけ付き合ってくれと言っていた。
しかしクリスはアキナやレイも会ってから日に日にふざけることが増えてきたように思う、元々こういうことがしたかったが、周りの目などを気にして出来なかったのだろう。
「つまりですね、モンスターが産まれるために使われる魔力を、自動防御結界が代わりに無駄遣いするって事です!」
「えっと、先生、魔力の発生を抑えるのではなく、魔力を無駄遣いすることでワイバーンの発生を防ぐ、ということでしょうか?」
ブルメシア侯が生徒役っぽく照れながら手をあげて発言したのを見て、クリスの顔がパァッとさらに明るくなる。
「そう!そうです!大嵐域に術式魔石を飛ばす。すると飛ばした術式魔石が、本来ワイバーンが産まれるために使われる魔力を勝手に無駄遣いしてくれます!これでワイバーンの発生を抑えることができます!」
言い終わるとクリスが自身の不安が混ざった表情でこちらを見てくる。合ってるかどうかの判定が欲しいようだ。
「クリスの説明で正解なので、とりあえずこれでワイバーンの発生が抑えられるかどうか様子見になりますね。」
「やりました!では正解したので私が作戦名を名付けます!魔力無駄遣い作戦です!」
クリスが正解したことで女性陣は盛り上がってる。
勿体つけて話すシンの話を理解できるとはさすがであったり、私は全然何言ってるかわからなかったからお菓子をずっと食べてたとか、クリスはそもそもどうしてここにいるのか等。
女3人よればなんとやら。
そんな女性陣を他所に男性陣に知らせが届く。
「黒のワイバーンの発見報告がありました。」
黒のワイバーン、幻像するモンスターの中でも最強クラスのモンスター
黒のワイバーンは赤のワイバーンとも実力が離れており他のワイバーンを引き連れて現れるため、地方の討伐軍が敗北したり、連戦連勝中のAランク冒険者チームが他のチームと組んで討伐を行、そのまま消息を絶つというのはよくある話である。
「そうか、なぁシンセイ、俺はここいらで黒のワイバーンあたりを討伐して箔をつけておきたいと思っている。」
クイル様がそう言うのもわかる。今回の遠征はワイバーン問題の解決に加えもう一つ、クイル様や俺をはじめとしたテンセイ派の次世代の実力を北西部だけでなく王都全土に広めたいという目的がある。
恐らくロバート様達がついてこなかったのはそう言うことだろう、決して愛人達と久しぶりにパーティしたかったとかではないはず。
その手っ取り早い手段としては、ワイバーンの討伐、それも強いワイバーンであればなおよしだ。
「そうですね、恐らく今回の旅で北西部の多くはテンセイ様の支援に回るでしょうが、そのままではテンセイ様、シンセイ様を支援というよりは雷神ロバート様にビビってと見られそうですね。」
ブルメシア侯も同様の意見のようだ。
「ということでシンセイ、渡りに船だ、黒のワイバーンを討伐するぞおまえなら出来るだろ。」
「黒のワイバーンを、、、」
クイル様はニヤつきながら、さも当然できるかのように信頼の眼差しを向け、ブルメシア侯は不安そうな顔をしている。
「まぁ、やってみます。」
作戦はある、不安もあるが、もしうまくいけばテンセイ派の武力を国内にしめせる。命を賭ける価値はある。
めんどくさいとな言ってられないな




