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ナマケモノ殿下と雷神

 2月後に10歳の誕生日を迎えた俺は、誕生日パーティーに出席するパートナーを選ぶ必要があった。


「ということで、レイチェルお嬢様、私の10歳の誕生日のパーティーで、パートナーになっていただけないでしょうか?」

 大袈裟に膝にをつき、レイの手を取るような形でお願いする。

 

「いいよ、シンセイならちょうどいい弾除けにもなる」

 

 という簡単な問答で決まった。

 後からわかったのだが、どうも10歳の誕生日パーティーで血族以外のパートナーを連れてくるのは、婚約者だったり、そういう意味のパートナーとして見られるという話だった。

 それがわかったのは全てが手遅れになった後だった。


 ---


「今日は特別講師として、エヴァンス侯爵様、雷帝ロバート様にきていただきました。」

 

 「「うおおおおおお!」」


 訓練場に集まった俺たち学生は、人気の雷神ロバートが来たということで大盛り上がりを見せる。


「ねぇねぇ、ロバート様ってレイチェルさんのお父上よね、カッコいい」

「凄い迫力だぜ」

「1人で帝国の一中隊を壊滅させたらしいぜ」

「俺もいつかあんなに強い男になるんだ」


 様々な感想を抱く学生達を他所に、ロバート様は凄みながら自己紹介をした。

 

「雷神ロバート=エヴァンスだ、今日は君達に最強を知っておいて欲しくてきたぞ。」

 仁王立ちして手を前で組む、ガタイが大きく凄みがあるため、それだけで物凄い迫力になる。


「それとどうも、俺の愛娘をパートナーにしたいとほざくガキがおるらしいのでな、どいつだ?」

 学生達を睨みつけるように圧倒的強者のオーラをだす、多くのものは縮こまり、女子は泣き出しそうになっていた。


「お父さん、迷惑」

「おお、レイチェル、申し訳ない、でもお前をちゃんと守れるかどうか確かめないとなんだ」

 冷静にツッコミを入れるレイチェルを甘やかしながら、それでもしっかりと学生達を見定めていた。


「ほう、今のでビビってないのが何人かおるのぅ、シンセイとかいうガキは誰だ、王子とて容赦せんぞ」

 ビビっていないのは俺とテン、レイと武門の名家からの数人だけだった。


「ロバート様、第三王子のテンセイと申します。御息女をパートナーに誘ったという私の弟、シンセイはこいつです。」

「あっ、テンおまえ」

 テンがロバート様にしっかりと礼をしながら答え、そして若干ニヤニヤしながら俺を指さした、なんて奴だ。


「おまえがシンセイか!ガッハッハッハ、どうも守ってばかりで一度も勝ったことがないという話だったのぅ!どれ、俺の魔法から身を守ってみせろ、もし気絶せずに耐えたら認めてやろう」

 凄んで俺の前に近づこうとするロバート様の前に先生が立ち塞がる。

 

「ロバート様、あまり勝手なことは、授業ですし、その、シンセイ君はこれでも王子なので」

 これでもってなんだこれでもって、酷い先生だな。

 先生はロバート様の前に立ちなんとか止めようとする。


「うるさい、ワシに口答えするな、身を守る役はおまえでもいいんだぞ」

 そういってロバート様は先生に近づき、見下ろすように睨みつけた。先生は完全にビビって使い物にならなくなってしまった。


「シンセイ、付き合わなくていい、私が説得する」

 レイチェルが俺の前に立ち止めようとする。

 

「いや、レイチェル、指名されたのは俺だしなんとかやってみるよ」

 止めるレイを振り解き、ロバート様の前に出た。

 防御ばかり鍛えた結果、対戦を拒否されることはあっても、願われることはなかったから、ちょっとだけ好奇心かわいい勝ってしまった。

 

 他ならぬ雷神のお誘い、9歳の俺の防御結界がどこまで通じるのか、この時の俺は命知らずだった。


「ガッハッハッハ、小僧、いいぞいいぞ、ワシが低級呪文を唱えてやる、耐えてみせろ、なーに死にはせん。」

 ロバート様は俺の肩を2度叩いた後、背中を押して訓練場の中央に立たせる。

 無茶苦茶痛かった、骨が折れたかと思った。次からロバート様と接する時は結界術で身を守ろう。


「ロバート様、私が耐えることが出来ればレイチェルをパートナーとしてお誘いしていいんですね?」

「その意気やよし!見事耐えて見せろ、パートナーでも婿にでも嫁にでもくれてやる」

 少し話の流れがおかしい気がするが、胸を借りるとしよう。


「シン、頑張ってー」

「シンセイ、気をつけて、お父さん、もし大怪我させたら口聞かないから」

 俺を応援してくれるのはたったの2人、みんなは雷神の初級魔法に興味津々だった。


「レイチェル、お前のためなんだ、心を鬼にして魔法放とう」

「雷神から鬼なら少しスケールダウンしたし行けそうな気がする、かな」

 ロバート様の発言に多少の強気な発言をして自分を奮い立たせる、一対一でたってみて初めてわかる、そうでもしないと逃げ出したくなるほどのオーラがあった。

 

「では小僧、行くぞ、サンダーボルトおおおお」

 片手を広げ、その魔法陣からおおよそ初級魔法とは思えない量の雷が走る。


「防御結界!」


 渾身の防御結界がサンダーボルトを防ぐ。

 徐々に俺の防御結界が押されて破れそうになる。


「小僧、ほれほれ、もう割れるぞ、大丈夫か?」

 意気揚々と手を突き出しさらに威力を上げる。

 おかしいだろ、本当に初級魔法かよ。


「上手くいってくれ、二重結界!」

 

 ギィィィン!


 初めて上手くいった二重結界、それはほぼ完全にロバート様のサンダーボルトを抑え込んだ!


「ガッハッハッハ、やるな!ならばこれでどうだ、ライトニングボルト!」

 興が乗ってしまったのか、ロバート様は約束を破り中級の魔法を使う。


「いっ、うっそ」

 さらに凄い威力の雷の前に、二重結界すらヒビが入りだす。


「なんだ、眩しくて見えねぇ」

「なんだよこれ、しんだんじゃね」

 学生達のほとんどは何が起きているか理解できていないようだった。


「やっば、シンが死ぬ」

「ちょっとお父さん!!!」


 テンとレイが慌ててロバート様を止めに動く。

 それよりもちょっとだけはやく、俺の結界に限界がきた。


 バリン!


 結界を通じて弱くなったとはいえ、雷神の中級魔法を受けた俺はそのまま気絶しそうだったが、なんとか言葉を捻り出した。


「た、耐えましたよ!」

 と言ってニヤリと笑いながらロバート様を睨みつける。


「ガッハッハッハ、シンセイ君か、いい男だ!俺の負けだ!レイチェルはお前にやろう、国王には俺から言っておく」

 そう言ってロバート様が俺の背中を叩いた。


 俺の記憶はここで途切れている。


 目を覚ましたら確か、レイやテンも含めて大騒ぎで、ロバート様が国王に直訴しにいったとか、婚約者になったとか。

 学校でも、結末は光が強くて見れてなかった人が多いのか、王子相手だからロバート様が手を抜いたとか、結局ダメだったのに国王命令でみたいに、色んな人に絡まれた記憶がある。


えっ!?パートナーにするってそういう意味だったの?なんで誰も教えてくれなかったの?って聞いたら


テンは面白そうで教えなかった。メイドや使用人はむしろそうなって欲しくてあえて教えなかったらしい。

その結果がこれだからみんなにかなり謝られた。


---


 走馬灯かこれ!!!


 俺はとっておきの四重結界でロバート様の超級呪文、トールハンマーを防いでいるところだった。


「今度こそ完全に防ぐ!防御の勇者は俺なんだ」

 まだ不完全な四重結界は少しづつ形を整えながら、光の柱と言っても過言ではないほどの量の雷をしっかり防いでいた。


 そして、俺の体感では何日も経った、実際には数十秒後、四重結界は分散し、光の柱も消えた。


「ガッハッハッハ、シンセイ君、いつかを思い出すのぅ!」

 仁王立ちに腕を前で組むいつものスタイルで、とてもご機嫌なロバート様がいた。

 

「今度はちゃんと防ぎましたよ、気絶もしないでね」

 満身創痍で立ち上がるのも辛いほどではあったが、ハッキリとした意識をもったままその場に座り込んでいた。


「親父のトールハンマーをたった1人で防いだ?どうなってんだシンセイは、これはほんとにエヴァンス家を継ぐのはシンセイの方がいいかも知れんな、、、」

 クイル様が恐ろしいことを言っている、真剣に考えないで、エヴァンス領の領主とか絶対めんどくさい。


「よし、3人で風呂に行くか、親子水入らずだ」

 一瞬で上半身裸になったロバート様はそのまま風呂場に向かった。


「俺まだ親子じゃない気がするんですけど」

「よし、俺たちも行くか!てかどうだった俺の魔法?」

 クイル様も顔をあげ、俺の方を見て話しながら一緒に風呂場に向かう。

 

「あっ、クイル様まだ魔法陣の形成甘いですよね、細かいところまだ理解できてないんじゃないですか?テンに聞いてみるといいですよ。氷魔法ならレイが詳しいん、ですけどね。」

「ったく、おまえら兄弟はどうなってんだよ」


 クイル様と話合いながら俺も風呂場に向かう。


 このあとサウナで耐久自慢があったり、寝るまで軍棋に付き合わされた。


 もはやめんどくさいとかそういう話ではない、休ませてくれ。

 


この設定、本編で今後出てくるかわかりませんが、レイはロバートの正室の子供ではありません。

そもそもロバートは正室、側室の他にめちゃくちゃ愛人が多くいます。英雄色を好むというやつです。

レイの母親は出産時に亡くなっていますが、お母さんは多いため幸せに暮らしています。

これまでロバートは子供を欲しがった愛人には子供を授けていましたがレイの出産時に愛人が亡くなったことで子供を作るのはやめたそうです。

末の子、唯一の女の子、母親にそっくりということで溺愛されています。

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