ナマケモノ殿下と謝罪
すみません、間違って次の話をあげていました!
王都学校 希望する貴族と一部平民は8歳から14歳まで、1年のうち4分の3の期間、王都にある学校へ通い、ある程度の一般常識や剣術、内政学を学ぶことができる。
もちろん皇子たるシンセイやテンセイも例外ではなく、王都学校へ在籍しており、3か月通い1か月休みといったスパンで生活を行う。
共通の授業として魔法や剣術といった国力につながる授業があり、貴族や平民関係なく受講する。
平民や騎士の子、一部貴族の子などは使用人、執事、メイド、騎士としての授業があり、フォーグラム王国の下地を支えるものとなっている。
そして、貴族や王族へは内政や特殊魔法、貴族としての立ち振る舞いに関しての授業がある。
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「うーん、めんどくさいとは言えないなぁ」
学校を卒業してそろそろ1年とちょっと経とうとしている俺はフォーグラム王国の第四王子。学生時代、俺に恥をかかされた人からナマケモノ殿下と呼ばれ、特に否定しなかったらそのまま広まってしまった、貴族の子供に舐められている王子ランキング独走中のシンセイ=コウエンジ=アーヴィンだ。
剣術では勝ち星らしい勝ち星がなく、魔法は防御ばかり、授業の点数はしっかり50点、つまらない授業はサボったり居眠りは当たり前。
そんなめんどくさがりの俺にも、めんどくさいとは言ってられないことがいくつかある。そして今回はそのうちの1つだった。
「氷笑姫からのお誘いは、さすがにシンでも断れないね」
目の前でキラキラとしたオーラを出しながらいつも以上にニコニコするのは俺の双子の兄。学生時代、俺が言った一言のせいでイケメン王子と呼ばれてしまい、本人は必死に否定したのにそのまま広まってしまった、貴族のこんな言葉欲しいランキング独走中のテンセイ=コウエンジ=アーヴィンだ。
剣術では同年代相手に負けなし、魔法もほぼすべての属性が扱え、火と聖魔法に関しては上級を超える。授業の点数もほぼ満点、無遅刻無欠席は当たり前。
そんな彼が持ってくるお願いにいつも振り回されるのだが、今回ばかりは関係なかった。
いつものお茶会での一幕、今回の議題は俺とテン宛てに届いた1つの手紙だった。
「いいかテン、手紙の内容を要約すると「そろそろ王位継承戦が始まる、私の家は貴方達2人を応援する。でも他の地方の貴族達に猛反対されたの、だからシン、貴方がきて解決して。」ってことなんだよね。これ絶対他の貴族や親族に反対されてるよね。」
「ふふっ、そっか僕が受け取ったレイからの熱い恋文も、シンが要約するとそうなるんだね。」
イタズラな笑顔で懐から同じ内容の手紙を取り出してくる。
俺達のことをよく知っているレイが俺とテンに同じ手紙を送ったということは、もし嫌がるならテンが説得しろということ。俺達のことをよく知っている人はしばしば同じ手を使ってくる。
「恋文なわけないでしょ、他の兄や姉がレイに対して酷すぎるだけだよ。」
「今はそういうことでもいいかな、でもエヴァンス侯爵家の助力があるのは大きいなぁ、うちの最大派閥になるんじゃないの?」
そういってテンはフォーグラム王国の地図とメモを取り出す。その瞬間、側に控えていたアールは姿を消し、使用人達も最大限の警戒体制となる。
そこには力を貸してくれそうな貴族の名前や領土、ライバルになる兄上や姉上の支援者情報が記載されている。
「まぁ俺たちに手を貸してくれる人って大半はテンのファンだしね」
テンのファン、つまりまぁ、騎士だったり男爵や子爵みたいな、そこまで偉くもないし領土もない人がほとんどだ。
「とりあえず作戦会議はあとにして、シンはレイのことよろしくね。」
「わかった、テンはどうするの?」
「んー、アールは今回こっちでいいかな?僕がエイセイになって冒険者ギルドにいくよ。なんとか冒険者ギルドはこっち側にしてもらうつもり。」
エイセイ、それは俺とテンが共同で使っている冒険者ギルドに登録している冒険者の名前だ。
他の貴族の調査や難事件の解決、まぁ恩を売ったりしている。
「よし、じゃあ僕は一足先に行くね。そうだシン、1人
魔術師を雇ったから、君が面倒みてね」
唐突な爆弾発言と満面の笑みを残してテンはアールを連れて冒険者ギルドへと向かった
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そんなこんなで俺は相棒の竜であるジークに乗ってこの国の北西に位置するエヴァンス領へ向かっていた。
「シンさん、これ凄いですね!ちょー楽しい」
ジークの左後ろにつけた緑色の竜に乗ってはしゃいでいるのは昨日雇われたばかりの魔術師、アキナだ。
転移者としてこの世界に迷い込んだ彼女は物凄い魔力と魔法を扱う才能もっており、わずか2月ほどで多くの魔法使いこなせるようになった。そして現在は俺の専属の魔術師ということになっているらしい。
「シン様、ドラゴンって凄い揺れるんですね〜」
ジークの右後ろにつけた緑色の竜に乗ってなんとか揺れないように頑張っているのは、フォーグラム公爵家のご令嬢、クリスティーナ=フォーグラムだ。
以前フォーグラム領で起きた魔物退治とパウル元侯爵の争乱で仲良くなり、あれからもちょくちょく 王都に立ち寄った際は遊びに来てくれていた。
現在は王都学校を卒業し社会勉強ということで俺とテンの元に放り込まれている。
ちなみにさらに後ろにはテンの親衛隊の2人が護衛として竜に乗ってきている、要らないとは言ったのだが、いないものとしてついてこさせてくれということだった。
「シン様、アキナ様、そろそろ到着ですね。」
クリスが指を刺した先には大きな城壁に囲まれた街、エヴァンス家のある街が見える。
「すごーい、壁に囲まれてるー」
「そうなんですよ、エヴァンス領は昔北西の諸国との国境に位置する街だったので、格街が拠点だった頃の名残があるんです!」
「私常識に疎いので説明助かります!」
女の子2人が大声でキャッキャしてるのを尻目にジークと一緒に降下し手続きを行う。
話はすでに通っているため、ドラゴンとクリス、アキナを連れて街へ入る
すると目の前には、青色の綺麗なドレス姿の氷笑姫がいた。
白いに近い青い髪、白くて綺麗な目、俺とほとんど変わらない身長に華奢と言ってもいいほど細い身体。そして無表情と言われてもおかしくないほど変化が掴みにくいと言われている表情。
「シン、久しぶり。122日振りね。」
無表情な顔にほとんど変化はないものの、学校時代からの付き合いである俺にはわかる、明らかに怒っていらっしゃる。
「ひっ、久しぶり、、、」
「今回が初めて会ってから再会までが一番長かった、遊びにくるって言ってたのに。」
顔は変わってないのに、とんでもなく怒ってらっしゃる。
彼女が俺に向かってゆっくりと歩を進めるのをみて、俺はすぐに謝罪をする。
「本当にごめん、言い訳は全くない、英雄語だったり、魔物誘引の術式の研究とかやってて、その、忘れてました。いかようにも罰を申しつけくださいお姫様」
片膝をつき、頭を下げて使用人や騎士が貴族に対して進言するときのようなスタイルで、しっかり、誠心誠意謝罪をする。
パキパキパキ
地面につけている俺の足と膝が凍ってしまう。
冷たすぎはしないが、動けなくなってしまった。
「あの、レイ?レイチェル様?これは」
「しばらくその姿勢で反省してて、あとから屋敷にきて。」
レイはそう告げるとニコッと笑う。
「あの、クリスさん、レイチェル様はなんでこんなに怒っているの?」
「そっか、アキナさんはご存知ないですよね、レイチェル様はシン様の婚約者です。」
「えっ!?シンさんに婚約者?そっか、王子様だしそういうのあるか」
「あっ、大丈夫ですよ。シン様は王子様なので。」
小声で2人が会話して、アキナが驚いている。何が大丈夫なんだろう?
「クリスティーナさん28日振りです。アキナさんですね、初めてまして、レイチェル=エヴァンスと申します。お2人とも、シンセイのことをシンと呼んでいますよね、私のことも是非レイとお呼びください。」
少しだけ柔らかい笑顔と言葉で2人に礼をする。
「あの、レイチェ、、レイ様も、是非私のことをクリスと呼んでください!」
クリスは顔と耳を真っ赤にしながら少し慌ててレイにそう告げると照れていた。そういえばレイは高身長で一見するとクール、テン以外には負けたことがない実力で、女性人気が高かったな。
いつの間に知り合っていたんだろうと不思議な顔をむけた俺にクリスが教えてくれた。
「シン様、何事も根回しが大事なんですよ。」
なんの根回しかわからないが、少なくとも俺もしっかり会ってれば凍らされたりしてないだろう。
「凄い美人さん、■■の男役みたい、私のこと知ってるんですね、アキナと申します、レイさん、よろしくお願いします!」
アキナも興奮している、一部翻訳出来ていなかったがまぁ問題ないだろう。
「2人とも、ようこそエヴァンス領へ、屋敷へ案内させてください。」
ニコッ笑って2人を歓迎するレイ、そして2人を連れてそのまま屋敷に行ってしまった。
護衛にきてくれたテンの親衛隊の2人は1人俺についてくれている。
「あっ、シンセイ様が久しぶりにきてる」
「クスクス、シンセイ様が凍っているわ、レイチェル様を怒らせたのね」
「シンセイ様、エヴァンス侯爵様も帰りが遅くなるとたまにああやって凍らされていましたよ。愛情表現みたいなものです。」
「シンセイ様、採れたてのリンゴですよ、どうぞ」
何度かお邪魔している街のため俺の顔は知れている。
そのまま街の人に弄られながら、俺は1時間ほど、レイの屋敷に向かって謝っている形になっていた。
うっっ、ごめんよレイ、だって研究するのが楽しくてつい。林檎おいし




