ナマケモノ殿下と魔法
魔法 この世界で魔法というのは大きく2つに分かれる。
攻撃魔法 初級、中級、上級、そして超級 超級を使える魔術師はほとんどいないため、基本的には初級から上級までの話になる。
攻撃魔法はある程度定型化されており、火属性であれば初級はファイヤー、中級はフレイム、上級はイフリートとなる。
そこに射程距離が長いアロー、扱いやすくどんな相手にも有効打になりやすいボール、射程距離が短い代わりに威力の高いランスなどを組み合わせることで魔法となる。
ファイヤーアロー、フレイムランス、イフリートボールのように。
防御魔法 防御に使う魔法は結界を使って攻撃をふさぐものとなる。騎士になるものとして基本となる防御結界、そして防御に特化した魔術師が使う高度な結界である二重結界。
複数人での起動や、大国にも数人しか扱うことのできない三重結界、そして、賢者と呼ばれた英雄のみが使えたとされる四重結界。
防御魔法自体は斜陽の魔法であり、基本的には防御結界まで、目指すとしても二重結界までとなる。
攻撃魔法や防御魔法は基本的には先の説明の通りだが、優秀な魔術師はオリジナルの魔法を扱うものが多く、同じ呪文でも練度や込めた魔力によって威力が異なるため、あくまでも参考にしかならない。
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「おっ、坊ちゃん起きましたね。ということで、坊ちゃんのような被害者を出さないように、アキナちゃんには魔力のコントロールを学んでもらいます」
アキナさんの術式魔石を徹夜で作り、仮眠から目が覚めた俺の目の前に、なぜか七三分けで伊達メガネ、パリッとしたスーツのできる教師スタイルのアールがいた。
というかおまえいつきた。
「はい先生、よろしくお願いします」
そしてアキナさんはやる気満々で敬礼をしている。
「とりあえず色々突っ込みたいところはあるけど、まぁ教師役としてアールは問題ないと思うから、アキナさんもちゃんと聞くといいよ。こいつこれでも元S級冒険者だから」
「S級?それはどれくらい凄いのですか?」
アキナさんの疑問にこたえるべくベッドから降りながら説明を始める。
「この世界には冒険者という制度があって、まぁ貴族でも平民でも誰でもなれて、そしてみんな実績、実力だけで評価される世界なんだ。用心棒や魔物討伐、薬草の採取や庭の手入れもやったりする、何でも屋だね。冒険者ってのは基本的に下がF上がAまでのランクがあって、実績を積み上げたり、実力を示すことでランクが上がっていくんだ。」
「あれ、でも先ほどアールさんはSランクとおっしゃっていましたよね」
「そう、基本的にはAランクまでなんだけど、一部の規格外の実力や功績を残した人間に対して、こいつは危険人物ですよ、あなたの力はとんでもないですよ。という首輪をつける意味も込めて、S級というランクがあるんだ。まぁもう辞めちゃったけどね。」
「なら何かしらの事情があって冒険者を辞めて、シンさんに雇われたってことですか。」
手をポンッとたたいて納得するアキナさん。
「そう、俺とテンっていう、前も話した双子の兄の二人で雇ってる。」
「お二人には返せないほどの恩がありますからねぇ、給料分は働きますよ。」
少し困った顔をしながらアールも説明に加わる。まぁ冒険者を辞めた理由については教えないほうがいいかな、少し情けないし。
「ということで、アールは元S級冒険者で魔法も上手だから、教えてもらうといいよ」
「はい、では先生、2回目ですけど、よろしくお願いします!」
とりあえず2人で勝手にやってるだろうから飯でも食べてゆっくりしておこう。
「坊ちゃんもとっと飯食べて、授業に参加してくださいよー」
えー、めんどくさい。
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「じゃあ基本はさっき言った通りだし、アキナちゃんも攻撃魔法使ってみましょう。この工房の中は坊ちゃんやジェイドさんが練習で張った大量の防御結界が今の残ってるから、失敗しても大丈夫だよ」
俺がご飯を食べ終わったあと合流すると、魔法の使い方を説明したあとだったようだ。
「はーい、魔力を込めて、頭の中でさっきの術式を組んで、手の前に出して」
アキナさんが目をつぶりながら手を前にだすと、すでに赤い魔法陣が手の前に出ている。
「アキナさん、目を開いて、もう魔法陣出てますよ、あとは魔力を吐き出すだけです。」
「はっ、えっと、ファイヤーボール」
慌てて呪文を発動したアキナさんの手から、直径1メートルぐらいのとんでもない大きさのファイヤーボールがアール目掛けて放たれる。
「おっと」
ドォォン
アール目掛けて炸裂したファイヤーボールは、大きな煙となっていた。
何が起きたかわからずアキナさんはポカーンと口を開けていた。
「ふぃー、死ぬかと思った。」
煙から出てきたアールは急いで防御結界は張ったのか特に怪我はしていなかった。
髪型は何故かアフロになっていたけど。
「ええええ、アールさん髪の毛が」
「あー、これね、びっくりしてくれました?ちょっとした冗談です。」
と言ってアールは風魔法を唱えて髪型をすぐに戻す。
「最初は坊ちゃんもよく心配してくれたんですけどね、最近は冷たくて」
ホロリと泣きまねをするアールに対して、あきれた顔をする。
「最初はびっくりしたけど、毎回リアクションが大げさだからなぁ、でもテンはほら、まだ驚いてくれるじゃん」
「テン坊ちゃんは毎回騙されるから心配になるんすよねー」
「テンさん面白い方なんですね、私もいずれお会いしたいなぁ」
「そのうち会わせるよ、それよりアキナさんはやっぱりとんでもない魔力と、綺麗な魔力操作だね、初めてで無詠唱、しかもファイヤーボールであの威力。」
「ほんとほんと、普通に呪文を唱えられるようになるまで二月はかかるのに、それに単純な魔力量なら大陸一までありますよ。」
2人してほめちぎっているとアキナさんはどんどん恥ずかしそうにしていく。
「もうやめてください、恥ずかしいです。」
顔を真っ赤にしたアキナさんが怒ってしまった。
「おーおー、また坊ちゃんが殴られてします、この辺でやめときましょうか」
「そうだね、とりあえず、前俺を殴ったときみたく魔力を体にまとえば力は出るし、相手の攻撃も痛くなくなるから覚えておくといいよ。普通は防御結界使ったりするけど、アキナさんの魔力量なら纏うだけでも十分だよ」
魔力操作が上手くなるまでは、とりあえず魔力を纏うだけでも困らないはず、その辺の騎士でもワンパンで勝てそうだ。
「よし、じゃあアールさん、続きをしましょう」
「そうですね、次は水の呪文に行ってみましょう」
アキナさんは頑張って初級呪文の練習をしてみるらしい、攻撃魔法にはあんまり興味ないが、とりあえず授業に付き合わないといけないらしいので、お茶でもしながら見学するとしよう。
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アキナさんが魔法の練習をしだしてから3日、そろそろ王位継承戦が始まるし、さすがにいつまでも俺とアールが付き合うわけにもいかないので、アール先生の授業は今日で終わりだ。
「よし、アキナちゃんよく頑張ったね、これで授業も終わり」
引き続き先生スタイルのアールが授業の終わりを宣言する。
授業の経過はというと、初級呪文はすべて覚えてしまったらしい。だいたいの人は得意な属性があり、1つか2つの属性しか使えないのだが、全部の属性が使えるようだ。
「はい、先生、シンさん、ありがとうございました。」
「これでアキナさんの自衛も大丈夫だね、このままジェイドの工房にお世話になるってことだったけど、当面の目標とかどうするの?」
「そうなの、元の世界ではどうやら死んでしまっているので、当面の目標は魔法の腕を磨いて!」
やる気に満ち溢れた表情でこちらを見つめてくる。
「磨いて?」
「シンさんのお抱え魔術師になるの、そしたら私も王城でシンさんやアールさん、話にきくテンさんとも入れるのよね!」
アールは爆笑し、俺は凄い困った顔になってしまった。
「前に、転移者ってことがバレたら英雄として祀り上げられたり、王国に管理されて自由がなくなるって言ったよね?お抱えになるってことは、結構危ないと思うんだけどなぁ」
「その辺は大丈夫よシンちゃん、私たちの養子にするわ。」
ヤヤさんが話に入ってきて続ける。
「孤児を拾って育ててたの、でも申請を忘れていたの、お金は払うからなんとかしてちょうだい」
「わしからも頼む、もうアキナは娘みたいなもんじゃ、なんとか誤魔化せ」
アキナさんとの英雄語騒動や魔法騒動が今日で終わりってときに、とんでもない爆弾が転がり込んできた。
アールは坊ちゃん大変ですねーと笑いながら人任せにしてるし。
えー、もうめんどくさいなぁ。
ユウ爺とヤヤさん、ジェイドは小さいころからシンセイを知っています。
シンセイが昔、ユウ爺とに合わせてヤヤ婆と言ったところ半殺しにされたので誰も言いません。




