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ナマケモ殿下と転移者

本日より新章となります。

この章まで書き貯めが終わっているので、引き続き当日更新でお付き合いください。


コメントや評価等いただけると励みになります。(マイナスでも嬉しいです)

 王城 大陸の中でも三大国と呼ばれる広大な土地、力を持つフォーグラム王国、その王都の中心にある王城は、主城と4つの塔で構成されている

 そのうち第4塔と呼ばれる場所、ここがテンセイとシンセイ、そしてコウエンジの縁者が集う、言わばシンセイにとっての家であった。


 第4塔の中庭 ここはテンセイとシンセイがよくお茶会や昼食を取る場である、何を打合せするわけでもなく自然とここに集まることになっていた。

 そこまで大きくないものの、綺麗な花と草木、池と川の清流に見立てた水路、そしてそれを越える橋。中央には屋根付きの机と椅子が設置されており、まさに庭園であった。

 この場所にテンセイとシンセイが集まることは暗黙の了解となっており、お互いの使用人やメイドがもっとも力を入れて管理、清掃している場所である。特にようのないものは通ることがなく、2人が話をするときは最低限の護衛のみとなっており、川のせせらぎで音が広がることはないため、意図することなく秘匿性の非常に高い場所となっている。


 ---

 

「ごめんシン、今日このあとすぐにユウ爺のところに行ってくれないかな?早馬で手紙が届いてさ、僕かシンセイ、できればシンセイに直接きて欲しいって、急ぎでって書かれてて」

「ユウ爺から早馬が???」

 ユウ爺、この国最高の術式職人、誰よりも早く正確、そして美しい術式を作る事ができ、性能もさることながら術式自体が芸術と呼ばれるほど技術をもった爺さん。

 全ての職人にありがちな人見知り、頑固、口下手、世捨て人といった特徴が全て当てはまり、国王、親父からの依頼も簡単に断るような男。

 今は亡きおじいちゃんの親友らしく、親父も頭が上がらないとのこと。


「あの人見知りの頑固ユウ爺から手紙なんて概念が?」

「もしかしたら冗談を言ってる場合じゃないのかもしれないよ、あのユウ爺だよ?僕だって弟子のシンの兄だから話してもらえるだけで、基本的に王都で話が出来るのはシンぐらいなんだから」

 そう、このユウ爺は俺の師匠である、よく覚えてないが、俺が3歳の頃にユウ爺の作った術式を改造してしまったらしい。それをいたく気に入り勝手に俺を弟子にしてしまったらしい。

 そのため、俺と俺とよく一緒にいたテンだけはまともに会話が出来る。


「わかった、じゃあこのあとすぐに行くようにするよ、アール、準備しといて」

「あいよ」

 さっきまで誰もいなかったはずの俺の後ろから急に男が出てくる。

 アール、数年前から俺の執事であるこの男は赤の混じった短髪の赤髪に190センチを超える長身、がっしりとした筋肉、イケメンフェイスで常時無礼講の冒険者崩れ30代前半で、大の年上女性好きである。

 数年前にとある侯爵の奥様に手を出してしまい指名手配や何やらでどうにもならなくなってたところを拾った。


「アールさん帰ってきてたんだね」

「俺の専属なのに1ヶ月以上も休んだからね、その分ゆっくり出来たらしいからこき使ってあげよう」

「もう、そんな酷いこといってー」

 そうこう言ってるうちに時間は過ぎていった。


 「あっ、準備出来たみたいだよ、シン、いってらっしゃい」

「ほどほどに頑張るよ、行ってきまーす」


 ---


 ジェイドの工房 王都の外れにある隠れ家的な名店、素朴な外観だが大きい建物で、多くの冒険者や国のお偉いさんが贔屓にしている店である。世捨て人のユウ爺は妻のヤヤさんと一緒に一人息子ジェイドさんの店に暮らしている。

 


「ユウ爺、ジェイドさん、シンセイでーす。」

 戸を開き挨拶をするとカウンターの奥から店主のジェイドさんが出てきた。

 中肉中背であまり短めのボサボサ茶髪でイケメンとはいえずパッとしない顔ではあるが腕は確か。

 

「おう、シン、いらっしゃい、おやじー、シンがきたよー」

 ジェイドさんがユウ爺を呼んでくれる。


「おぅ、入ってこい」

 カウンターの奥の工房からユウ爺の声が聞こえる。


「じゃあ、お邪魔しまーす」

「おう、早かったな、この子の話を聞いてみてくれ。」

 そこには白い髭と白髪でいつも険しい顔をしており、少し身長は低いがマッチョのまさに職人といった出立のユウ爺と、綺麗な長めの金髪に年齢を偽っているかのような綺麗な肌、今でも40代といって通じるような美人のヤヤさんがいた。

 そしてこの場にはおおよそ似つかわしくない女の子がいた。

 真っ黒なロングヘアに黒い目、端も華奢な身体、うっすらとした紫色のシャツに白をベースにした制服の様な服、黒と青が混ざったロングスカート。


「ア、ワタシノコトバ、ワカリマスカ?」

 その子が話した言葉はなかなか何を言ってるかわからなかった。でも特徴的な発音、この大陸のどこにも属さない不思議な文法、今は失われた、御伽噺だけの言語、かつて魔王からこの大陸を救った勇者パーティの中だけで使われた、英雄語であった。


「ゆっ、ユウ爺、これは、なんで、この言葉を話せる人が」

「シン、その子の言葉に答えてやれ、話はそれからじゃ」

 その場にいる誰もが不安そうに、していた、ヤヤさんなんて祈っていた。


「ワタシノナマエワ、シンセイ デス、アマリシャベレナイデス、キクコトワデキマス。」

 俺の拙い英雄語に女の子は涙を浮かべながら答える。


「ワタシノナマエワ、アキナデス、?ゴワカルヒトガイテヨカッタ」

 そういうと女の子、アキナはヤヤさんに抱きついて泣き出してしまった。ヤヤさんも泣きながらアキナを抱きしめている。ジェイドさんも喜んでおり、ユウ爺は納得したように笑う


「そうか、やっぱりシンならわかったか、よかったなアキナ、言葉は伝わらんが、よかったよ」


 ---


 ユウ爺から話を聞いたところ3日ほど前、素材を取りに山へ登っていたところ、急に見たこともない光とともに女の子が落ちてきたそうだ。

 話してみると何も言葉が伝わらなくて困ったと言っていた。元々ユウ爺は喋る方じゃないし、言葉遣いも悪いから多分言葉が伝わっても変わらない気がする、むしろ怖がられたかもって伝えたらゲンコツされた。

 そのまま魔物から守って家に連れてきたらしい、そこからはヤヤさんが身振り手振りでコミュニケーションとって暮らしていたらしい。

 それでこういうよくわからんことはシンセイがだいたい詳しいからといって俺に手紙を送ったらしい。


「で?この子これからどうするの?」

「このまま言葉も伝わらんのは不憫すぎる、ワシとシンもジェイドで翻訳用の術式魔石を作るぞ」

 翻訳用の術式魔石、この大陸では広く流通している術式魔石であり、それぞれの言語のエキスパートが作成したものである。

 ただしそれは言語について非常に深い知識を持っておかねばならず、最初から作成するためには途方もない手間と時間がかかるものであった。


「作る?どうやって?まず英雄語の勉強からいるんじゃないの?」

 この大陸にはもう英雄語を話せる人間はいない、俺が趣味で過去の英雄の書いた本を読むために独自に勉強した程度である。ちなみに勉強してまで読んだ本は日記、恋と冒険に忙しい人だったらしい。

 

「そこはシン、おまえが1週間でなんとかしろ。おまえしかもう英雄語をわかるやつはおらん、その間にわしらが自動で学習する術式魔石の基本を作っておく」

「わかった、まぁ彼女は恐らく転移者、ならば強大な力を持っているはず、恩を売っておこう」

 伝記によると転移者、英雄とも呼ばれる人は基本的に言葉がつながらない状態でこちらの大陸にくるらしい。

 過去に確認されたのは4人、いずれも1000年以上前に同時に転移してきたという。

 

 勇敢なる心を持ち、卓越した剣術で皆を奮い立たせ常に最前線で戦う勇者。

 賢き知恵を持ち、魔法の仕組みを理解し現代魔法の多くの魔法を作った賢者。

 聖なる心を持ち、神からの奇跡をうけ現代の治癒魔法の祖となった聖者。

 王としての覇気を持ち、その高い精神性と内政、軍事手腕で戦いを指揮した王者。


 王者のみが大陸の言語を理解しており、転移当初は大変だったらしいが、賢者が大陸語を勉強して理解し、聖者と遅れて勇者も使えるようになったらしい。


 つまりアキナも何かしら超人的な力があるかもしれない。

 

「いちいち悪態をつくな、困ってる人を見過ごせないお人よしが、ここで照れ隠ししてもみんなわかっとるわい」

 ニヤリとしていると頭を叩かれてしまった。

 耳まで赤くなっている気がする、恥ずかしい。


「よし、アール、急いで帰るぞ、まずは英雄語の書物を持ってくるんだ。」

 どこからともなくアールが出てくる。

 

「了解ぼっちゃん、アキナちゃんが暇つぶせるようにもってくるんすね?優しい主ですなぁ」

 ユウ爺とアールがニヤニヤしながらこっちを見てくる。

 

「あーもう、理由はなんでもいいだろ!さっさと行くぞ」

 

 幼少を知る身内が多いとすぐにいじられてしまう、めんどくさいなぁ。

 

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