エピローグ
ことの顛末
フォーグラム領内で発生していたモンスターの襲撃事件の黒幕はパウル侯爵であった。
パウル侯爵に身内を人質として脅されていた兵が中心となって、隠れてフォーグラム公と連絡をとっていた。
第四王子シンセイにパウル侯爵の悪行を報告したところ、身内を人質にとられた一部の兵が刃を向けることがあったが、フォーグラム公により人質が解放されるまでの時間稼ぎであった。
パウル侯爵の罪が認められ、パウル侯爵の兵は全員無実放免、悪行を止めたとして褒美が与えられた。
パウル侯爵の貴族としての立場はなくなり、一旦はフォーグラム公が領地をそのまま管理することになった。
あくまで一時的なものではあるが、パウル侯爵はなくなることとなった。
フォーグラム公爵家は領内の術式魔石を全て破壊し、モンスター襲撃の問題が解決した、解決後の街道整備費として褒美が与えられ、更なる発展を約束した。
シンセイはその場で本を読んでいただけではあるが、本騒動の証人の立場であり、問題解決のための重要な部分を担ったとして、ペットであるドラゴン6頭の正式な飼い主として認められ。餌代もある程度は出ることになった。
シンセイがフォーグラム領へ向かってから一月後、シンセイは訓練から戻ったテンセイと4塔のいつもの庭園でお茶をしていた。
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「ってことなんだけど、テン、聞いてる?」
ことの顛末を目の前にいる双子の兄、第三王子、イケメン王子、完璧殿下のテンセイ=コウエンジ=アーヴィンに報告する。
「そっちはシンに任せたから大丈夫なんでしょ?それより聞いてよこっちはもう大変だったんだよー、僕が訓練にきてるからってガイエス兄も途中で参戦するしさぁ」
「脳筋のガイエス兄かぁ、あの人あんまり人の話聞かないから苦手なんだよなぁ」
話題にあがったのはフォーグラム王国の長兄、ガイエス=ブルームハルト=アーヴィン、今年21歳になる後継者争い筆頭の大男である。
母方に武名で有名なブルームハルト家をもち、軍に強いパイプを持っている。
母親は武闘姫と呼ばれ、一目惚れした国王との一騎討ちに数度勝ち、その後ついに敗北したから結婚するほど生粋の武人。ガイエスもその血を濃く受け継いでいる。
「婚約も決まったらしいよ、連邦のお姫様だって」
「えっ、脳筋兄は連邦のお姫様と一騎討ちでもしたの?」
何かあればすぐに一騎討ちする脳筋兄だ、婚約者も一騎討ちで手に入れておかしくない。
もちろん冗談なのでわざとらしく驚いてみせる。
「そんなわけないよ、ちゃんとした政略結婚だよ」
「なんだよちゃんとした政略結婚って、たしかエリザベート様だっけ?脳筋兄が一目惚れして頑張ったっていう」
「そうそう、昔連邦とは戦争してたのにガイエス兄が一目惚れしたっていって無茶苦茶強引に迫ったんだよね。」
「連邦も大変だね、しかし強引に結婚するのは脳筋兄らしいね」
そうやってテンと一緒に笑っていると急に頭を掴まれた。
「な〜にが脳筋兄らしいって?シンセイおまえ俺のこと陰でそう言ってたのか?」
頭を掴まれた方向を振り向くと短く赤い髪の毛をもった2メートルを超える大男、脳筋兄ことガイエス=ブルームハルト=アーヴィンがいた
「脳筋兄!失礼な、陰だけじゃなくてちゃんと表でも脳筋兄と言って、痛ぁい!」
脳筋兄が俺の頭を掴んでいる手に力を入れると、俺の頭は悲鳴をあげる。
「ふふふ、ガイエス兄、その辺で勘弁してあげてよ、うちの弟の顔が瓢箪型になっちゃうよ」
「大丈夫だ、王族も1人ぐらい瓢箪型がいたほうがバリエーション豊かになる」
「痛い痛い、ごめんて、ごめんなさい!聡明でモテモテで博識なガイエスお兄様!!!」
やっと解放された俺は頭の形が変わってないか確かめる。
「もう、痛いよガイエス兄」
「まだ瓢箪にはなってないな、俺も筋肉が足りん」
「これ以上筋肉つけたらエリザベート王女に嫌われますよ」
「むう、そう言われたら弱いな、エリザの好みはテンのような少し線が細いイケメンらしい」
「ふふふ、ガイエス兄は私とは正反対で線が太い偉丈夫ですもんね、あっ」
ガイエス兄がテンの頭を掴む。
「こっちが瓢箪でもいいかな」
「もちろん嘘ですよ、ガイエス兄は王都一の甘いマスクをお持ちのイケメンです」
満足したのか手を離して立ち去ろうとするガイエス兄。
「シンセイ、今度はテンセイだけじゃなくておまえもこい、防御の技術は一級だからな、兵に教えてやってくれ」
「いやだよめんどくさい」
パキッ、パキッとガイウス兄が指を鳴らしている。
「ヒィ、次は行きます!」
「おう、じゃあ俺は行く、テンセイ、シンセイ、ちゃんと結婚式にはこいよ」
「それまでに嫌われないようにね」
「婚約破棄されたらテンセイと一緒に慰めてあげるよ」
「この仲良し兄弟め、体に気をつけてな」
そういってガイエス兄は庭園をあとにした。
4塔までは遠いのに、わざわざ婚約の報告にでもきてくれたのかな。
「ガイエス兄、幸せそうだったね」
「俺はまだ婚約とか結婚はまだよくわかんないけどね、そういやテンセイには意中の人がいるんだっけ」
「その話はいいだろ、次いつ会えるかもわからないんだし。それよりさ、シンはどうだったの?クリスティーナ嬢、可愛くなってたんでしょ?」
顔を真っ赤にして話題を変えてくるテン、こんなにモテるのにここまでウブなのは才能なのだろう。
「まぁ、一般的にかわいいと呼ばれる理想のような容姿だろう、テンセイの結婚相手にもオススメだよ。あっ、クリスティーナ嬢に術式魔石作れることがバレたよ」
「え、そうなの?秘密を話すほど仲良くなったってこと?」
するとテンセイはいつも以上のニヤニヤ顔で聞いてくる。
「いや、結界解除されてさ、気づいたら横にいた」
「シンの結界解除できるの?それは凄いね」
不思議そうな顔でテンが疑問をもつ、結界解除は一部の結界術師しかできない技術だ、難しい結界は結局解除できないし、力押しするほうがはやいからっていうのが主な理由だ。
「俺も簡単な結界だったから悪いんだけど、まさかクリスが出来るとはね」
「ふむ、クリス?シンがそんな呼び方するのは珍しいね、もしかしてシンって呼ばせてるの?」
とってもニヤニヤしながらきいてくる、悪魔のような笑顔だ、悪魔なのに後ろには光がさしてるから問題だ。
「だって内緒にするから砕けた口調にしろって言うんだもん」
「いつも思うけどシンって、好意に弱いよね、甘いというか、おかげで僕はいつも助かってるけどね」
確信犯か、思えばなんだかんだ頼まれたら断れない気がする、それこそテンみたいになんの裏もない善人からはね。
「まぁ仕方ない、悪意ばかり向けられて育ったからね、善意にアレルギーがあるかもしれない」
そうして今日もめんどくさい1日が終わった。
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ある屋敷にて
???「やはりこの方が当家にもっとも合うお方かと」
???「そうか、やはりシンセイ殿下がよいというか」
???「いえ、あのお方は自分が狙われるよりも身内が狙われるほうが強くなるタイプかと」
???「おまえにそれほど言わせるとは、ならば当家が狙うのはテンセイ殿下か」
???「ええ、当家はテンセイ殿下でいきましょう。私は準備を進めますね。」




