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ナマケモノ殿下の活動記-いくら防御に自信があっても、王都はやっぱりめんどくさい-  作者: 狭間 三日
第1章 ナマケモノ殿下とフォーグラム公爵家
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ナマケモノ殿下とパウル侯爵

 空獣 グリフォンと呼ばれる空を飛ぶ獣、ドラゴンほどではないが巨躯と高い機動力を誇る、ドラゴンと並んで空軍の主力となっている。

 ドラゴンと同じく数が少ないため一般には浸透していないが、王都、王国軍では主力として使われており、緊急の連絡や輸送でも使われる。


 決闘、そして兵での集団リンチ、本来ならとっくに負けている、死んでいるはずのシンセイ。

 兵士に囲まれた、炎に包まれた状態にも関わらず、自ら開発した包囲結界の中で、優雅に本を読んでいた。

 そこへグリフォンに乗った少数のフォーグラム軍とフォーグラム公、クリスティーナが到着した。


 ------------


「シン様!大丈夫ですか!?私も早くおろしてください!」

 クリスティーナ嬢の乗るグリフォンだけはまだ空中に残されており、空中から声を張っている。


「クリスティーナ、おまえは人質にされる心配がある、そこにいなさい」

「それはそうですが、シン様は大丈夫なのですか?だってあれほどの兵に囲まれて、シン様はその中で、えっと本を読んでいますね」

「フォーグラム公、オススメしていただいたこの本、興味深いことが書いていますね、関連本を今度お借りしてよろしいでしょうか?」

 王都の図書館にはなかった本、フォーグラム公が面白かったからと紹介してくれた本を読んでいた。

 

「ほぅ、ご興味がおありですか、お目が高いですね。承知致しました、お帰りの際にお譲り致します。」

「シンさまーーー、そんな優雅に本を読まれては、武器をお持ちのお相手に失礼ですよー」

 クリスティーナ嬢を残して、フォーグラム軍全体が苦笑する。


「貴様らぁ!もう勝ったつもりか!おいおまえら、シンセイはほおっておけ、フォーグラム軍を叩くぞ、所詮少数だ」

 怒号をあげるパウル公、しかしやる気があるのは1人だけであった。

 

「パウル兵の皆さん、人質は全て解放致しました、ここにおられない方もしっかりと保護しております。どうぞ武器をおろしてください。」

 フォーグラム公がそういうとグリフォンの背から人質が数人おりてくる。

 その人質の姿をみて、パウル兵は次々と武器をおろした。


「何故だ、何故武器をおろす!どうしてこうなった、どういうことだこれは、我はまだ負けてないぞ?こんな奴に、ナマケモノ殿下に!負けるはずはない、おい、クリスティーナ!我のところへこい、おまえに相応しいのは我だ!!!」

 こんな状況でクリスティーナへの愛を叫ぶ。


「ごめんなさーーーい、わたくし、パウル侯爵様は苦手でーす、生理的にだめでーーーす、何度言われてもいやでーーーーす」

 屋敷だけでなく、パウル侯爵家のある街全体に聞こえるほど、透き通った美しい声が響く、内容はあれだが。


「ふっ、見事にフラれたな、パウル侯爵」

「あっ、あっ、ああああああ、シンセイ、おまえがあああああ」

 バキィン

 技も何もない、ただ感情に任せた剣は、俺の包囲結界に当たり、折れた。

 いつから木剣から剣に変えたのかわからない、長々とどれだけ素晴らしい剣なのか叫んでいたが覚えていない、ただ、パウル侯爵自慢の剣は折れた。

 俺は椅子に座って本を読んだまま、少しだけパウル侯爵に目をやり、呪文を放つようにわざとらしく手を突き出した。


「あっ、あああ、やめろ、殺すな、俺は侯爵だぞ、そんなナマケモノが」

「俺はこの王国の第四王子だが?第四王子に向かってナマケモノと?これは不敬罪だな」

「あっ、あっ、あっ、ちが、おまえはナマケモノ殿下で、王子で、今まではナマケモノでも怒らなくて」

 尻餅をつき、情けなく股間を濡らしている男がいた。

 

「なんでいまは、違う、あっ、俺は侯爵で、だから王子にも文句を言ってよくて、ちが、よくなくて、あああ、ああああああ」

 敗北と罪を理解して、パウル侯爵は心が折れてしまった。


「これは父上、国王に相談するしかあるまいな、まさかナマケモノと呼ばれようとは」

 心が折れた男は、徐々に言葉を発しなくなった。

 

「終わりのようですね。」

 フォーグラム公が落ち着いた声で話しながら前にでる。


「パウル兵の皆さん、皆さんは人質があったとはいえ、この国も殿下に刃を向けました。到底許されることではありません。」

 フォーグラム公が宣言すると、パウル兵は絶望した顔で、膝から崩れ落ちる。


「しかしこれは、パウル侯爵の罪を密告し、逃走や責任逃れを防ぐために、フォーグラム公爵家と一芝居うっただけです。」

「なるほど、つまりパウル侯爵家の皆さんはフォーグラム公とグルで、王子である私の前でパウル侯爵の悪行を裁いてもらうための行動、とういうことですね?」

「はい、シンセイ様、パウル兵の皆さんは剣を向けたもののシンセイ様には傷1つついておらず、シンセイ様はゆっくりと本を読んでおられる、これを芝居と呼ばずなんと呼ぶのでしょうか?」

「確かに、パウル侯爵家の兵に一芝居うたれましたね!」

 俺はわざとらしく感嘆の声を上げ、拍手を行い、席を立った。


「つまり悪いのはパウル侯爵だけ、わかりました!フォーグラム王国が第四王子たるこのシンセイが見届けました。」

 少し格好をつけてみた、こういうのは説得力が必要なんだ、これで終わったと思ってもらうんだ。

 そこにはまだ完全にとは言わないが、安堵するパウル兵と変わっていないが心なしかホクホク顔に見えるフォーグラム公がいた。

 

「シンさまーーー、おとうさまーーー、何をしゃべっているのですかーーー?仲間はずれはいやですよーーー」

 柄にもなく格好をつけてみたのに、蚊帳の外から少し抜けた綺麗な声が響く。


「よしジーク、フォーグラム家の屋敷に戻ろうか、みんなもね」

 ドラゴンのジークを撫でながら、他のドラゴンにも声をかける。


「ちょっとシン様、屋敷に戻るのであれば私も連れて行ってください!これ以上仲間はずれはあんまりですよ。」

「鞍をつけているのはジークだけですよ」

「2人乗りでも私は構いません、行きましょう!」

 はぁ、フォーグラム公をチラ見すると「任せましたよ」みたいな顔を向けてくる。


 俺はそのままジークにクリスティーナ嬢を乗せて屋敷に戻った。

 後片付けはめんどくさいからな、先に帰ろう。

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