チョコっと追加なお話。バレンタインは手作りだよねっ
開いて頂きありがとうございます!
久しぶりに見てみると、ブックマークが100件を超えていてびっくりしました。
アクセス数72000。ユニークアクセスが14000人くらいになっていました。
完結後も読んで下さる方がいて、嬉しいです!
「まあ、あれはアーバンツ家のミランダ様よ」
「可愛いわね!」
コンビの令嬢二人からチョコレートを貰った。
そうか、今日はバレンタインだったんだ。チョコを持っていれば良かったんだが、持ってなかったので令嬢二人にポケットにあった飴を渡す。
お返し、と二人の手に飴を載せていく。
「まあ、お返しは飴よ!」
「可愛いわね!」
そことなく馬鹿にされた気がしないでもない。
部屋に戻ると、部屋に甘ったるい匂いが立ち込めていた。
どうやらカミカとヨークがバレンタインのチョコレートを作っているらしい。
「あげる人もいないのに大変ね」
そういうと、カミカとヨークは不思議そうな顔をした。
「ミランダにあげるんだよっ」
「ミランダにはいつもお世話になっているしね」
日頃のお礼に、とチョコレートを作っていた。
美少女二人にそんな事を言われると、悪い気はしなかったが、お礼って何だろう。
カミカが先週風邪をひいて寝てる時に、そっと毛布を剥いで悪化させたお礼だろうか。
ヨーク、と名前を書いていたプリンを食べて、名前を書いているケース部分は残したと言い張った事だろうか。
お礼と言う名の仕返ししか思いつかない。
「……何か変な物でも入れた?」
「「変な物は入ってないよっ」」
ゴミ箱を開けようとすると、二人から焦ったような声が上がった。ブツはここか?
「ゴミ箱を開けるなんて、汚いよ?」とヨーク。
「そういえばさっき大きなゴキブリが居たから、死なない程度に包んで入れたよっ」とカミカ。
潰して入れろよ……。
ブラフだろう。だが、ブラフだろうと考えていても、やはりゴミ箱を開けるのは躊躇ってしまう。
仕方が無いから、キッチンの物から推理してみる。
え、なんですり鉢……。
何かしら使った跡がある。何を混ぜ込んだんだ……?
「刻んで溶かすだけなのに、なんですり鉢いるの?」
「「えっ?」」
「刻んで湯煎するんじゃなかったっけか。擦っても粉状にはならないだろ」
どう考えても、変な物をチョコに混ぜ込んだとしか思えない、と言うと驚く二人。
何を驚いているんだ。そんな変な事を言ったつもりはないんだけど。
「「カカオ豆からカカオマスを作るのに使うよ……?」」
溶かして固めるだけじゃなかったんだ。
「……ごめん。何か混ぜたかもと疑ってた」
しかし、そこまで詳しいのに、なぜ二人の服はチョコまみれなんだろう。
カミカとヨークは器用に塗ったとしか思えないように、口元と頬にチョコを付けていた。
不器用なんだな、と壁ドンから、頬と口元のチョコを舐めとるような展開を期待してるのだろうか。
じっと二人の顔を見ていると、渡す人に見られると恥ずかしいから、と追い出されてしまった。
まあ、変な物は入らないだろう。テレビを見ようと部屋のリビングに移動する。
そこに置かれてある一冊の本を見つけた。
『もっと好きになって貰うための悩殺チョコレシピ集』
ページを何となくパラパラめくっていく。タイトルに悩殺とあったが、中身はいたってまともな物だった。裸にチョコを塗りたくるとか、唾液を入れるとかありそうだったんだけど。
そして付箋が張られているページにたどりつく。
『まず、彼のタイプを判別しよう』
タイプ別か。色んな本が出てるんだな、と次のページをめくると頬が引き攣った。
チャート式で進んだ所にマーカーが引かれてあったのだが、それによると
性格→凄く悪い
人の気持ちに→鈍感
どっちかっていうと→S
二人がコメントを入れながら楽しんでチャートを引いたんだろう。
ところどころ吹き出しがあった。
『プリン取られた!』
『機械のように人の気持ちが解らない』
『風邪ひいてる人の毛布を剥ぐ鬼畜』
そのチャートは、俺の心をえぐるラインを辿っていた。
「……そんなに性格悪い?」
もし、自分が風邪をひいてる時に、朝毛布を剥ぎ取られて悪化してたら……?と想像してみる。
「まずい、許せそうにないわ……」
少しばかり客観的に自分を見て落ち込んだ。
結論のページは、カカオ豆から作るトリュフチョコ、カカオ豆から作るチョコレートケーキだった。
「できたーー!」
やがてキッチンから声があがり、楽しそうな顔で手渡してくる二人。
「トリュフチョコとチョコレートケーキ、か?」
二人はどうして解ったの?と驚いた顔をしていた。
「こっちがトリュフチョコだよ。がんばったよー」とヨーク。
「ボクがチョコレートケーキ、お返しは三倍だよっ」とカミカ。
「……三倍かどうかは別として、ありがとう」
そう言って二人からのチョコを受け取った。
性格悪い鈍感系なSだと思われている事にショックを受けつつも。
俺は本の表紙をちらりと見て、顔をほころばせた。
『もっと好きになって貰うための悩殺チョコレシピ集』
性格悪い鈍感系なSだと思われているとしても
もっと好きになって欲しいという程度には好かれているんだろう。
二人への扱いを少し改善しようかな、と考えながら俺はチョコを口に放り込む。
「「ねえ、美味しい?」」
気持ちが詰まったチョコは、ちょっぴりほろ苦く、甘い味がした。
読んで頂きありがとうございました。
チョコ代わりに気持ちを込めて、投稿しました!
バレンタインと縁が無い星馴染より、読んで頂いた皆様に愛を込めて!




